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毎日新聞 2022/12/22 東京朝刊 609文字
「ユールログ」は英国でクリスマスの時期に暖炉で燃やすまきを指す。ユールは元々、ゲルマン民族の冬至の祭りでキリスト教の普及でクリスマスと一体化した。まきは古代のたき火の名残らしい。フランスの伝統菓子「ブッシュ・ド・ノエル(クリスマスの丸太)」も同じ由来という▲きょうは冬至。中国古代の「易経」は「一陽来復」と呼び、陰気が極まり、陽気が初めて生じる日と位置づけた。夜の長さが一年で最も長くなり、太陽が春に向けて復活する起点である。古代の人々も神秘を感じたのだろう▲ウクライナで歌われる伝統的なクリスマスキャロル「コリャドカ」も冬至の祭りの名に由来する。米映画「ホーム・アローン」で使われ、人気の高い「キャロル・オブ・ザ・ベル」はウクライナ生まれの歌だ▲カトリックの25日と正教徒の1月7日の2度のクリスマスが近づく。だが、ロシアは一時停戦を否定し、発電所などへのミサイル攻撃を続けている。「冬の寒さを武器にする」狙いとみられている▲冬至は本格的な冬の始まりでもある。北大西洋条約機構(NATO)は冬物衣料や毛布、暖房器具などの物資を送っているが、停電が日常化すれば、冬を乗り切るのは容易ではない。クリスマスどころではあるまい▲ウクライナのゼレンスキー大統領はロシアの侵攻後初の外国訪問でワシントンを訪れ、バイデン米大統領と会談する。「一陽来復」には苦しい時期が過ぎて運気が好転する意味もある。そんな転機につながらないか。