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毎日新聞2024/7/2 05:00(最終更新 7/2 05:25)有料記事930文字
食事の一例=小島正美撮影
筋肉など体を作る重要な栄養素の一つ、たんぱく質。「しっかり摂取すべきだ」とよく聞くが、どんなタイミングで取るのがベストなのか。
「当初は各食事で均等に取るのが良いのではと予測したんです」。そう話すのは愛国学園短大の柴田重信特任教授。食事を「いつ」取るかに着目した「時間栄養学」が専門だ。
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効果の高い食事を実験で裏付け
柴田さんによると米国の先行研究では、1日の総量は一定にして朝昼夜の3食で均等にたんぱく質を取ると、夕食に極端に多く食べた時と比べ、筋肉のたんぱく質の合成率が高かった。
そこで柴田さんらは逆に、朝に多く摂取する場合も調べた。マウスに1日2食を与え、朝が多い▽朝夕で均等▽夕が多い――場合で実験。すると、朝の餌で多くのたんぱく質を取ったマウスは、夕に多く取ったマウスや、朝夕均等に取ったマウスに比べ、筋肉量の増加率が高かった。
つまり、1日のたんぱく質摂取量が同じ場合、朝に重点的に取った方が筋量を増やす効果があると分かったという。
実際、高齢者を対象に、朝昼夜の各食事で摂取しているたんぱく質量と筋肉量の相関を調べたところ、昼や夜より、朝に十分なたんぱく質を摂取している人たちの方が筋肉量が多かった。
柴田重信・愛国学園短大特任教授=本人提供
朝食にあと1品プラス
では、なぜ朝がいいのか。筋肉に一定以上の負荷がかかると筋線維が太くなって筋肉がつくが、大抵の人は昼間に体を動かしている。柴田さんは「朝からしっかりその『材料』となるたんぱく質を取ることで筋肉が作られる」と話す。
老化などによる筋量低下を防止するには、1日のたんぱく質総摂取量は体重1キロ当たり1・2グラム(体重50キロだと60グラム)、朝にそのうち3~4割程度を摂取するのが望ましいという。柴田さんは「朝食にあと1品、例えばヨーグルトや納豆、ゆで卵を足すといい」とアドバイスする。
一方で、細胞の中では、古くなったたんぱく質を壊し、新しいたんぱく質の材料となるアミノ酸を作る「オートファジー」という仕組みがある。柴田さんによると、特に就寝中、筋肉を使わない夜間に、この働きが活性化する。食の細い高齢者はオートファジーによって筋肉が細ることもあり、防止のため就寝前に乳製品などを摂取するのも有効という。【藤沢美由紀】