中東やウクライナで戦火が長引き、国際情勢は不透明さを増している。大国が覇権争いに走り、世界の分断を深めることがあってはならない。
中国、ロシア、インドなど有力新興5カ国の枠組み「BRICS」に今年、イラン、エジプトなどが加わり、9カ国になった。
拡大したBRICSは人口で世界の約4割を占める。世界の国内総生産(GDP)の約3割となり、存在感を高めている。
先月、ロシア中部カザンで首脳会議が開かれた際には、アジアやアフリカなどの36カ国が拡大会合に参加した。プーチン露大統領によると、30カ国以上が加盟を希望しているという。
米国と対立する中露両国には、BRICSを主要7カ国(G7)との対抗軸にする狙いがある。国際決済システムや穀物取引市場など、米国主導の経済秩序からの脱却を目指している。
ただ、BRICSのメンバー国や加盟希望国の思惑は一様でないのが実態だ。
イランは親露・反米だが、エジプトは米国との関係が深い。インドは全方位外交を掲げる。加盟を希望するタイやベトナムは貿易拡大を目的とし、大国間の対立から距離を置いている。
多くの国がBRICSに関心を示す背景には、新興国の台頭で多極化が進む国際情勢がある。G7のGDPが世界に占める割合は、2000年には65%だったが、近年は5割を切る。
国際社会における欧米の威信も失墜している。ウクライナとパレスチナの紛争でロシアに厳しくイスラエルに甘いという対応の違いは、「ダブルスタンダード(二重基準)」との批判を浴びている。
トランプ前米大統領の返り咲きによって、米国の内向き化も進む。自由貿易体制が危機的状況に陥り、世界経済の下振れリスクがくすぶる中、先進国主導で構築された貿易や経済のルールに見直しを求める声があるのは確かだ。
だが、ブロック化が進めば、大国間の対立構図が強まり、「新冷戦」のような状況さえ生まれかねない。中露は、「グローバルサウス」と呼ばれる新興・途上国に、陣営選択の踏み絵を迫るような振る舞いは慎むべきだ。