[금융] 왜? '1달러 142엔으로 급등' 아무도 말하지 않는 단순한 본질 '사는 이유' '파는 이유'에서 사회의 움직임을 알 수 있다

[お持て成し]

왜? '1달러 142엔으로 급등' 아무도 말하지 않는 단순한 본질 '사는 이유' '파는 이유'에서 사회의 움직임을 알 수 있다 / 12/13(수) / 동양경제 온라인

'돈의 본질을 찌르는 책으로 이보다 읽기 쉬운 책은 없다.'
'공부하려고 했던 책 때문에 마지막에 울어버릴 줄 몰랐어'
경제의 교양을 배울 수 있는 소설 「너의 돈은 누구를 위해--보스가 가르쳐 준 「돈의 수수께끼」와 「사회의 구조」」에는, 발매 직후부터 많은 감상의 소리가 전해지고 있다. 이 책은 발매 한 달 반 만에 10만 부를 돌파한 베스트셀러다.

저자 다우치 마나부 씨는 전 골드만삭스 트레이더. 자본주의의 최전선에서 16년간 싸워온 다우치 씨는 이렇게 말한다.

"모두가 아무리 노력해도 모두 부자가 될 수는 없어요. 하지만 다같이 노력하면 모두가 행복할 수 있는 사회를 만들 수는 있다. 중요한 것은 돈을 늘리는 것이 아니라 그 돈을 어디로 흘려보내 어떤 사회를 만들 것인가입니다."

이번에는 지난주의 급격한 엔고가 왜 일어났는지 근본적인 이유를 풀이한다.

■ 급격한 엔고에 대한 '두 가지 설명'

지난주 외환시장이 갑자기 움직였다. 하루 만에 달러엔 환율은 147엔대에서 142엔대로 단숨에 돌입. "도대체 무슨 일이 일어나고 있는 거예요?" 라고 주변 사람들도 물었다.

저 둘이라면 어떻게 대답할까 나는 상상해 본다. 20년 전 골드만삭스증권에서 일하기 시작했을 때 금융시장과 세계경제에 대해 알려준 두 선배 말이다. 명랑한 롱머리 선배님과 조용한 키다리 선배님. 시장에서 큰 움직임이 있을 때면 언제나 그들에게 그 이유를 묻고 있었던 것이다.

롱머리 선배는 분명 자신 있게 가르쳐 주었을 거야.

"이번 환율 움직임의 원인은 일본은행 총재의 코멘트야. 마이너스 금리 해제를 시사하는 것으로 시장은 파악했다."

12월 7일에, 일본은행의 우에다 총재는, 국회 답변에서 「연말부터 내년에 걸쳐 한층 도전이 된다」라고 발언. 이에 따라 일본은행이 조기에 금융정책을 전환할 것이라는 전망이 시장 전체로 확산된 것으로 알려졌다.

반면 키다리 선배는 조금 귀찮은 얼굴로 이렇게 대답했을 것이다.

"달러를 팔고 싶은 사람이 많았겠지."

일반적으로 롱머리 선배의 말을 고마워하며 듣는 사람이 많다. 과연, 그런 일이 일어나고 있었구나 하고 납득한다. 나도 그 중 한 명이었어. 하지만 금융 세계에서 돈에 대해 배우면서 키다리 선배의 말이 더 중요하다는 것을 깨달은 것이다.

누가 무엇을 위해 사고, 누가 무엇을 위해 팔고 있는지. 관점을 바꾸어 생각하면, 세상의 움직임이 보인다.

20년 전 입사한 뒤 한동안 나는 롱머리 선배의 설명을 고개를 끄덕이며 듣고 있었다. 그러나 차츰 의문이 들기 시작했다.

어떤 날은 '오늘은 〇〇이 지표가 좋아서 주식을 매수했다'고 하는데, 다른 날에는 '오늘은 〇〇이 지표가 좋았는데 좋은 소식이 이미 다 반영되어 주식을 매수하지 않았다'고 설명하는 것이다.

무슨 일이 일어나고 있었는지 알면 그때는 납득한 기분이 든다. 그런데 같은 일이 일어나도 시장 반응은 사뭇 다르곤 한다. 그러나 그것은 이상한 일이 아니다. 상황에 따라 사람들의 매매 행태가 다를 수밖에 없기 때문이다. 예를 들어 공복에 카레 냄새를 맡으면 카레가 먹고 싶어지지만 곱배기 돈가스 덮밥을 먹고 난 뒤 주방에서 카레 냄새가 나더라도 카레를 먹고 싶지 않다.

일어난 일 자체는 계기일 뿐이다. 그것이 방아쇠가 되어 사람들이 주식이나 외환을 사고파는 것으로, 시장은 처음 움직이기 시작한다. 왜 사람들은 상품을 사고 팔아야 하는지 생각할 필요가 있다.

■ 사람들이 물건을 사는 '두 가지 이유'

그러기 위해 알아야 할 것은 금융상품이든 일용품이든 구매자에게는 크게 두 종류가 존재한다는 것이다. 그것은 사용하기 위해 사는 사람과 가격이 오를 것을 기대하며 사는 사람이다.

먹기 위해 카레를 산다. 콘서트에 가기 위해 티켓을 산다. 이렇게 사용하기 위해 물건을 살 경우 목적은 자신이 행복해지는 것이다.

한 쪽의 가격 인상 기대로 살 경우에는 자신이 행복을 느낄 필요가 없다. 전혀 관심 없는 아티스트 티켓이라도 오를 것 같으면 사고, 부동산 가격이 오를 것을 믿고 자신이 살고 싶지도 않은 아파트를 사는 사람도 있다. 싸게 사서 비싸게 팔리기만 하면 된다.

사용하는 것이 목적인 사람은 사고 싶어서 사는 사람인데 비해 가격 인상 목적인 사람은 팔고 싶어서 사는 사람이다. 후자의 사람들은 가까운 장래에 반드시 전매한다. 전매한 상대 역시 가격 상승 기대감으로 사는 사람이라면 그 사람은 더 전매한다. 사용하려는 사람이 구입할 때까지 이 전매는 반복된다.
 
주식, 외환, 부동산 등 투자(투기 포함)의 대상이 되는 상품에서도 이 두 종류의 '사는 사람'이 존재하고 있다.

어떤 이유로든 사는 사람이 있다면 괜찮은 얘기 같지만 후자의 비율이 너무 많으면 거품경제가 생겨난다. 17세기 네덜란드의 튤립 버블도, 1980년대 일본의 부동산 버블도 가격 상승 기대감에 사는 사람들이 가격을 끌어올렸다.

그런데 급등한 가격에 사용할 목적으로 사는 사람은 거의 없었다. 정신을 차려보니 팔기 위해 사는 사람들이 넘쳐나 거품이 터진 것이다.

자, 이 시점을 도입하여 크게 움직이고 있는 외환시장을 살펴보자. 외환시장에는 여러 가지 이유로 달러를 구입하는 사람들이 존재한다.

■ 달러 사는 사람들의 '3가지 이유'

첫 번째는 석유나 밀가루를 수입하기 위해서나 해외여행을 가기 위해 달러를 구입하는 사람들. 이들은 사용할 목적으로 사고 싶어서 사는 사람이다. 손에 넣은 달러는 지불에 사용되고 수중에는 남지 않는다. 그 이상의 거래는 발생하지 않는다.

두 번째는 미국 국채 등 달러 표시 금융상품에 투자하기 위해 사는 사람들. 일본의 국채 이율은 약 0~1%(연한에 따라 다르다)인데 반해, 미국 국채의 금리는 4~5%나 되기 때문에, 미국 국채는 투자 대상으로서는 매력적이다.

미국 국채뿐만 아니라 미국 주식 등에 투자하는 사람들도 많아 이들은 그 금융상품을 사기 위해 외환시장에서 달러를 구입한다. 이들 중 상당수는 언젠가 국채나 주식을 팔아 엔화로 돌려놓을 것으로 생각되기 때문에 장기적으로는 팔고 싶어서 사는 사람이라고 할 수 있다. 하지만 달러 자체의 가격 상승만을 기대하는 것은 아니다.

세 번째는 달러 상승 목적으로만 (소위 투기 목적으로) 사는 사람들이다. 1, 2차 목적으로 달러를 사는 사람들이 늘어날 것을 내다보고 미리 사고 있는 것이다. 이들이야말로 진정한 팔고 싶어서 사는 사람들이다.

이번에 달러-엔 환율이 크게 떨어진 것은 주로 세 번째 사람들의 영향이다. 일본은행이 마이너스 금리를 해제해 금리를 올리면 일본 국채 이율도 상승한다. 그러면 두 번째 목적으로 구입하는 사람들이 확연히 줄어든다. 그래서 황급히 판 것이다.

물론 그렇게까지 생각하지 못하는 사람도 있다. 그런 이들도 가격이 떨어지기 시작하자 이럴 게 아니었구나 싶어 보유하고 있던 달러를 팔기 시작했다. 그들에게는 가격이 오르지 않으면 달러가 필요 없는 것이다.

여기서 조용한 키다리 선배 얼굴이 떠오른다. "달러를 팔고 싶은 사람이 많았겠지."

이번 외환시장의 급속한 움직임에서 알 수 있는 것은 시장 참가자 중에 상승 기대감으로 달러를 보유하고 있던 사람이 꽤 많았다는 것이다. 만약 적다면 일본은행 총재의 코멘트로 지금까지 환율은 움직이지 않았다.

세상의 움직임을 알기 위해서는 계기가 된 일본은행의 정책에 대해 생각하기보다 왜 그런 사람들이 많았는지 생각해야 한다.

한 가지 이유로는 내년부터 시작되는 NISA 확충이 있을 것이다. 새 제도가 시작되면 일본의 투자머니가 이율이 높은 미국의 금융상품으로 향하는 것은 자명하기 때문에 앞서 달러를 사는 사람(투자회사나 금융기관 등도 포함)도 많았을 것이다.

하지만 그런 설명을 해주지 않은 롱머리 선배가 불친절하다는 것은 아니다. 해설자라는 의미에서는 그가 더 친절하다. 많은 사람들은 진짜 이유보다 납득할 만한 사소한 설명을 요구한다.

■ '자신의 언어로 깊이 생각한다'는 것의 중요성

졸저 '네 돈은 누구를 위해에서'에서도 투자은행에서 일하는 나나미가 비아냥 섞인 말을 하고 있다.

"저도 실감이 납니다. 그런 손님들이 우습게 여기지 않도록 굳이 어려운 말을 쓸 때가 있어요."
"우습게 여기지 않도록 …요?"
거기에 담긴 심상치 않은 감정이 유토에게도 전해져 왔다.
"그래요. 나 같은 젊은 여성들은 일본 고객들이 우습게 생각해요. 그래서 주가 상승의 이유를 물어보면 글로벌 과잉 유동성 장세라고 일부러 어려운 표현으로 대답하는 거야."

"저는 전혀 모르겠는데요"
유토(裕斗)는 머리를 긁었다.
"그거면 됐어.어려운 단어를 외우는 것만으로 많은 어른들은 만족해. 지금의 설명은 세상에 돈이 남아있기 때문입니다라고 말하는 것뿐인데."
너의 돈은 누구를 위해 38페이지에서
이 나나미의 코멘트에 대해 소설 속에서 경제 구조에 대해 가르쳐 주는 선생 역의 대부호는 이렇게 되받아친다.

"그들은 어려운 단어가 지혜의 열매인 줄로 알고 있구나. 과잉 유동성이라는 말을 외우면 이해한 것 같아. 조르기는 하지만 지혜의 열매를 먹고 똑똑해질 리가 없다. 지혜는 키우는 거야. 중요한 건 내가 알아보고 내 말로 깊이 생각하는 거야." 

너의 돈은 누구를 위해 39페이지에서
경제 전문가들의 말을 그대로 받아들이지 않고 그것이 사람들의 삶과 행동에 어떻게 영향을 미치는지를 생각하면 시장의 움직임뿐만 아니라 사회의 움직임도 보인다.

자신이 돈을 투자할 때도 마찬가지다.

"투자에 돈이 흐르면 주가가 올라 우리 삶이 풍요로워진다"고 목청껏 외치는 사람들이 있는데 주가가 어떻게 영향을 미치는지 따져봐야 한다. 투자 자금이 늘어나도 이대로라면 생활이 넉넉해지지 않는 이유는 다음 번에 말씀드리겠습니다.

다우치 마나부 : 전 골드만삭스 트레이더

https://news.yahoo.co.jp/articles/016d1751ea82268a51c83465978bce5d246a3615?page=1

なぜ？「1ドル142円に急騰」誰も語らないシンプルな本質　「買う理由」「売る理由」から社会

なぜ？「1ドル142円に急騰」誰も語らないシンプルな本質　「買う理由」「売る理由」から社会の動きがわかる
12/13(水) 6:32配信


7
コメント7件


東洋経済オンライン
誰が何のために買っていて、誰が何のために売っているのか。視点を変えて考えると、世の中の動きが見えてくるという（写真：Tsubaki／PIXTA）

「お金の本質を突く本で、これほど読みやすい本はない」
「勉強しようと思った本で、最後泣いちゃうなんて思ってなかった」
経済の教養が学べる小説『きみのお金は誰のため──ボスが教えてくれた「お金の謎」と「社会のしくみ」』には、発売直後から多くの感想の声が寄せられている。本書は発売1カ月半で10万部を突破したベストセラーだ。

【写真】元ゴールドマン・サックスのベストセラー作家が描く、青春「お金」小説！『きみのお金は誰のため』

著者の田内学氏は元ゴールドマン・サックスのトレーダー。資本主義の最前線で16年間戦ってきた田内氏はこう語る。

「みんながどんなにがんばっても、全員がお金持ちになることはできません。でも、みんなでがんばれば、全員が幸せになれる社会をつくることはできる。大切なのは、お金を増やすことではなく、そのお金をどこに流してどんな社会を作るかなんです」
今回は、先週の「急激な円高」はなぜ起きたのか、その根本的な理由を解説してもらう。

■急激な円高への「2つの説明」

　先週、外国為替市場が突如動いた。1日でドル円レートは147円台から142円台に一気に突入。「いったい何が起きているんですか？」と周りの人たちからも聞かれた。

　あの2人ならどう答えるだろうかと僕は想像してみる。20年前、ゴールドマン・サックス証券で働きはじめたとき、金融市場や世界経済について教えてくれた2人の先輩のことだ。陽気なロン毛の先輩と物静かなのっぽの先輩。マーケットで大きな動きがあったときは、いつも彼らにその理由をたずねていたのだった。

　ロン毛の先輩はきっと自信たっぷりに教えてくれただろう。

　「今回の為替の動きの原因は、日銀総裁のコメントだよ。マイナス金利の解除を示唆していると市場は捉えたんだ」

　12月7日に、日銀の植田総裁は、国会答弁で「年末から来年にかけて一段とチャレンジングになる」と発言。これによって日銀が早期に金融政策を転換するとの見方が市場全体に広がったそうだ。

　一方の、のっぽの先輩は、少し面倒くさそうな顔でこう答えただろう。

　「ドルを売りたい人が多かったんだろ」

　一般的には、ロン毛の先輩の話をありがたがって聞く人が多い。なるほど、そういうことが起きていたのかと納得する。僕もその1人だった。しかし、金融の世界でお金について学ぶにつれて、のっぽの先輩の言葉のほうが重要だと気づいたのだ。

誰が何のために買っていて、誰が何のために売っているのか。視点を変えて考えると、世の中の動きが見えてくる。

　20年前、入社してからしばらくの間、僕はロン毛の先輩の説明を頷きながら聞いていた。しかし、徐々に疑問が湧いてきた。

　ある日は「今日は〇〇の指標が良かったから、株が買われた」と言うのに、別の日には「今日は〇〇の指標が良かったけど、良いニュースが出尽くしたから、株は買われなかった」と説明するのだ。

　何が起きていたのか知れば、そのときは納得した気になる。ところが、同じことが起きても、市場の反応はまったく違ったりする。しかし、それは不思議なことではない。状況次第で人々の売買行動が異なるのは当然だからだ。例えば、空腹時にカレーの匂いを嗅げばカレーが食べたくなるが、大盛りカツ丼を食べたあとに、厨房からカレーの匂いがしても、カレーを食べたいとは思わない。

　起きた事柄自体は、きっかけにすぎないのだ。それが引き金となって人々が株や為替を売り買いすることで、市場は初めて動きだす。なぜ人々は商品を買い、そして売るのかを考える必要がある。

■人が物を買う「2つの理由」

　そのために知っておくべきことは、金融商品であれ、日用品であれ、購入者には大きく分けて2種類存在するということだ。それは、使用するために買う人と、値上がりを期待して買う人である。

　食べるためにカレーを買う。コンサートに行くためにチケットを買う。このように使用するために物を買う場合、目的は自分が幸せになることだ。

　一方の値上がり期待で買う場合は、自分が幸せを感じる必要はない。まったく興味のないアーティストのチケットでも値上がりしそうなら買うし、不動産価格が上がることを信じて自分が住みたくもないマンションを買う人もいる。安く買って高く売れさえすればいい。

　使用することが目的の人は「買いたいから買う人」であるのに対して、値上がり目的の人は「売りたいから買う人」である。後者の人たちは近い将来、必ず転売する。転売した相手もまた、値上がり期待で買っている人であれば、その人はさらに転売する。使用することが目的の人が購入するまで、この転売は繰り返される。

　株、為替、不動産など、投資(投機も含む)の対象になるような商品においても、この2種類の「買う人」が存在している。

どんな理由でも買う人がいるなら結構な話に思えるが、後者の人の割合が多すぎると、バブル経済が生まれてしまう。17世紀オランダのチューリップバブルも、1980年代日本の不動産バブルも、値上がり期待で買う人たちが価格を押し上げた。

　ところが、高騰した価格では使用することを目的に買う人はほとんど存在しなかった。気づいたら売るために買う人だらけになり、バブルが弾けたのだ。

　さて、この視点を取り入れて、大きく動いている為替市場を見てみよう。為替市場には、さまざまな理由でドルを購入する人たちが存在する。

■ドルを買う人の「3つの理由」

　1つ目は、石油や小麦粉を輸入するためや海外旅行に行くためにドルを購入する人たち。彼らは使用する目的で「買いたいから買う人」である。手に入れたドルは支払いに使われて、手元には残らない。それ以上の取引は発生しない。

　2つ目は、アメリカ国債などのドル建ての金融商品に投資するために買う人たち。日本の国債利回りはおよそ0～1％(年限によって異なる)なのに対して、アメリカ国債の金利は4～5％もあるから、アメリカ国債は投資対象としては魅力的だ。

　アメリカ国債だけでなくアメリカ株などに投資する人たちも多く、彼らはそれらの金融商品を買うために為替市場でドルを購入する。彼らの多くは、いつかは国債や株を売却して日本円に戻すと考えられるから、長期的には「売りたいから買う人」とも言える。しかしながら、ドル自体の値上がりだけを期待しているわけではない。

　3つ目は、ドルの値上がり目的だけで(いわゆる投機目的で)買っている人たちだ。1つ目や2つ目の目的でドルを購入する人たちが増えることを見越して、先回りして買っているのだ。彼らこそが正真正銘の「売りたいから買う人」たちである。

　今回、ドル円相場が大きく下げたのは、主に3番目の人たちの影響だ。日銀がマイナス金利を解除して利上げを行えば、日本の国債利回りも上昇する。すると、2つ目の目的で購入する人たちが確実に減ってしまう。だから、慌てて売ったのだ。

　もちろん、そこまで思いつかない人もいる。そんな彼らも、価格が下がり始めると「こんなはずじゃなかった」と思って、保有していたドルを売却し始めた。彼らにとっては、値上がりしなければドルなんて必要ないのだ。

ここで、物静かなのっぽの先輩の顔が思い浮かぶ。「ドルを売りたい人が多かったんだろ」。

　今回の為替市場の急速な動きからわかることは、市場参加者の中に、値上がり期待でドルを保有していた人がかなり多かったということだ。もし少なければ、日銀総裁のコメントでここまで為替相場は動いていなかった。

　世の中の動きを知るには、きっかけとなった日銀の政策について考えるよりも、どうしてそういう人たちが多かったのかを考えないといけない。

　1つの理由としては、来年から始まるNISAの拡充があるだろう。新制度が始まれば日本の投資マネーが利回りの高いアメリカの金融商品へ向かうのは自明だから、先回りしてドルを買っている人(投資会社や金融機関なども含む)も多かったはずだ。

　だが、そういう説明をしてくれなかったロン毛の先輩が不親切だというわけではない。コメンテーターという意味では彼のほうが親切だ。多くの人々は、本当の理由よりも、納得できそうな小難しい説明を求めている。

■「自分の言葉で深く考える」ことの大切さ

拙著『きみのお金は誰のため』でも、投資銀行で働く七海が皮肉混じりにこんなことを言っている。

「私も実感しています。そういうお客さんになめられないように、あえて難しい言葉を使うことがあります」
「なめられないように……ですか？」
そこに込められた、ただならぬ感情が、優斗にも伝わってきた。
「そうよ。私みたいな若い女性って、日本のお客さんには軽くみられちゃうのよね。だから、株価上昇の理由とか聞かれたら、『グローバルな過剰流動性相場』とか、わざと難しい言い回しで答えるの」

「僕には全然わかんないですけど」
優斗は頭をかいた。
「それでいいのよ。難しい単語を覚えただけで、多くの大人は満足するのよ。今の説明って、『世界でお金が余っているからです』と言っているだけなのにね」
『きみのお金は誰のため』38ページより
　この七海のコメントに対して、小説の中で経済のしくみについて教えてくれる先生役の大富豪はこのように切り返している。

「彼らは、難しい単語が知恵の実とでも思っているんやろな。過剰流動性という言葉を覚えれば理解した気になる。せやけど、知恵の実を食べて賢くなるわけやない。知恵は育てるもんや。重要なのは、自分で調べて、自分の言葉で深く考えることやで」

『きみのお金は誰のため』39ページより
　経済の専門家の言葉を鵜呑みにするのではなく、それが人々の暮らしや行動にどのように影響しているのかを考えると、市場の動きだけでなく社会の動きも見えてくる。

　自分がお金を投資する際にも、同じことが言える。

　「投資にお金が流れれば、株価が上昇して、我々の生活が豊かになる」と声高に叫ぶ人がいるが、株価がどのように影響しているかを考えないといけない。投資マネーが増えても、このままだと生活が豊かにならない理由は、次回お話しする。

田内 学 :元ゴールドマン・サックス　トレーダー