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血圧変動は認知症や心血管疾患のリスク増加を知らせるサインである可能性が、オーストラリアの研究グループによる研究で示唆された。24時間以内に、あるいは数日にわたって認められた大きな血圧変動は認知機能の低下と関連し、さらに、収縮期血圧(上の血圧)の大きな変動は動脈硬化と関連することが示されたという。南オーストラリア大学(オーストラリア)Cognitive Ageing and Impairment Neuroscience LaboratoryのDaria Gutteridge氏らによるこの研究結果は、「Cerebral Circulation - Cognition and Behavior」に9月1日掲載された。
Gutteridge氏は、「通常の治療では高血圧に焦点が置かれ、血圧変動は無視されているのが現状だ。しかし、血圧は短期的にも長期的にも変動し得るものであり、そうした変動が認知症や動脈硬化のリスクを高めているようだ」と話している。
この研究は、認知症のない60〜79歳の高齢者70人(年齢中央値70歳、女性66%)を対象に、短期的(24時間)および中期的(4日間)な血圧変動と認知機能や動脈壁の硬化度との関連を検討したもの。対象者は初回の研究室への訪問時に、modified mini-mental state(3MS)、およびCambridge Neuropsychological Test Automated Battery(CANTAB)による認知機能検査を受けた。その後、24時間自由行動下血圧測定の方法で、日中(7〜22時)と夜間(22〜7時)の血圧を測定し、次いで、家庭用血圧計で4.5日間、朝(起床後1時間以内、朝食前)と夜(就寝の1時間前、夕食から1時間以上後)の血圧を3回ずつ測定した。また、経頭蓋超音波ドプラ法により対象者の中大脳動脈の拍動性指数を算定するとともに、脈波解析と脈波速度の測定により動脈硬化度も評価した。
平均血圧値や変動の期間に関係なく
解析の結果、収縮期と拡張期の大きな血圧変動は、それが短期的な場合でも中期的な場合でも、平均血圧値にかかわりなく認知機能低下と関連することが明らかになった。短期的に大きな血圧変動は注意力の低下や精神運動速度の低下と関連し、日々の大きな血圧変動は遂行能力の低下と関連していた。また、収縮期血圧の短期的に大きな変動は動脈硬化度の高さと関連し、拡張期血圧の日々の大きな変動は動脈硬化度の低さと関連することも示された。その一方で、血圧変動と中大脳動脈との拍動性指数との間に関連は認められなかった。
Gutteridge氏は、「この研究により、1日の中での血圧変動や、数日単位で見た場合の血圧変動が大きいことは認知機能の低下と関連し、また、収縮期の血圧変動が大きいことは動脈硬化度の高さと関連することが明らかになった。これらの結果は、血圧変動の種類により、それが影響を及ぼす生物学的機序も異なる可能性が高いこと、また、収縮期および拡張期の血圧変動の両方が、高齢者の認知機能にとって重要であることを示唆するものだ」と述べている。研究グループは、これらの結果を踏まえた上で、「血圧変動は認知機能障害の早期臨床マーカーや治療ターゲットとして役立つ可能性がある」との見方を示している。
(HealthDay News 2023年10月18日)
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