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階段を使って上る、落ち葉をかき集める、重い買い物袋を運ぶといった、日常生活の中で断続的に行う高強度の身体活動(Vigorous Intermittent Lifestyle Physical Activity;VILPA)を1日に合計4.5分間行うだけで、がんの発症リスクを最大31%低下させられることが、新たな研究で示された。シドニー大学(オーストラリア)身体活動・ライフスタイル・公衆衛生学分野教授のEmmanuel Stamatakis氏らによるこの研究の詳細は、「JAMA Oncology」に7月27日掲載された。
この研究は、運動習慣のないことを自己報告したUKバイオバンク参加者2万2,398人(平均年齢62.0歳、男性45.2%)を対象に、VILPAとがんの発症リスクとの関連を調べたもの。対象者のVILPAは加速度計により測定されており、そのほとんど(92.3%)が1分以内の長さのものだった。
中央値6.7年に及ぶ追跡期間中に2,356件のがんが発生した。このうちの1,084件は、低い身体活動(PA)量に関連して生じることが示唆されている乳がんや大腸がんなどの12種類のがん(PA関連がん)であった。解析の結果、1日に占めるVILPAの時間は、全てのがん、およびPA関連がんの発症と関連していることが明らかになった。例えば、VILPAを行わない場合と比較して、1分以内のVILPAの総計(中央値)が1日当たり4.5分の場合では、全がん発症のリスクが20%(ハザード比0.80、95%信頼区間0.69〜0.92)、PA関連がん発症のリスクが31%(同0.69、0.55〜0.86)低下していた。また、最大のリスク軽減効果の50%を得るために最低限必要なVILPAの1日当たりの時間は、全がんでは3.4分(17%のリスク低下)であったのに対し、PA関連がんでは3.7分(27%のリスク低下)であり、PA関連がんに対するVILPAの効果の方が強いことが示唆された。
「定期的な運動をやめる口実にすべきではない」
Stamatakis氏は、「これらの結果は、運動を始めたり、継続したりすることが難しい人にとって、1日のうちに数回、ほんの短い時間でも高強度のPAをすることが、長期的には健康にとって有益である可能性を示唆している」と述べる。
一方、米国がん協会(ACS)の疫学・行動研究担当上級主任研究員であるErika Rees-Punia氏は、「PAについては、何もしないよりは何かした方が良いとよく言われるが、この研究結果は、まさにそのことを証明するものだ」と話す。さらに同氏は、「いつでも、どこでも、時間を問わずに行える超短時間の激しい動作でも、そのようなPAに含まれることが本研究で示された。特定の運動プログラムに興味がない人にとっては、歓迎すべき素晴らしい結果だ」とコメントしている。
なお、Stamatakis氏によると、PAの強度については、以下を目安にするとよいとのことだ。すなわち、原則としては、歌いながら行えるPAは低強度、話すことはできても歌うことができないPAは中強度、ほとんど話すことができないPAは高強度に該当する。同氏は、VILPAは質の高いPAであり、継続して定期的に行えば健康増進に大いに役立つとの見方を示している。
一方で、Stamatakis氏や他のがん専門家らは、この研究結果を、定期的な運動をやめる口実にするべきではないと警鐘を鳴らす。Rees-Punia氏は、「この研究には、定期的に運動をしている人が含まれていない。定期的に運動をしている人を含めて、運動習慣はないがVILPAをしている人と比べれば、前者の方ががんの発症リスクが低いことが明らかになるはずだ」と述べている。
(HealthDay News 2023年8月1️日)
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