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この日を記念日に選んだのは子供(キッズ)とキズの連想からで、子供にケガはつきものだからです。
専門医がキズや傷痕を治療することで、よりきれいに短時間で治すことが期待できると、多くのみなさんに知ってほしい。私たち形成外科医は、そんな願いを抱きつつ、啓発活動に取り組んでいるのです。
さて、連休中にお孫さんが訪ねて来るのを心待ちにしているおじいちゃん、おばあちゃんも多いことと思います。遊んでいるうちにお孫さんが、ケガをすることがあるかもしれません。どう対処しますか。
50年前は、ケガで生じたキズはしっかり消毒をしてガーゼを当て、乾いたキズにすることを心がけていたと思います。ぬらすことなど、もってのほかでした。ですが、今は全く逆です。50年前の常識が現在では非常識となっているのです。
キズが治る過程では、さまざまな細胞が活発に働きますが、その活動は乾いた環境より適度に湿った環境の方が適していることが分かってきました。消毒薬が細胞の活動を妨げてしまうので、むしろ清潔な水で洗浄する方がキズにとっても良いことになります。
乾いたガーゼを当てておくと、分泌物によりキズにガーゼが固着します。ガーゼをはがす時に痛みが出るし、キズを治すために活動している細胞も一緒にはがれてしまいます。
ですから、キズを適度に湿った状態に保ちつつ、キズに固着しにくい被覆材が数多く開発され、医療機関でも家庭でも使われるようになったのです。
数年前、キズに対して被覆材の代わりに食品用ラップを巻く対処法がはやりました。その後、形成外科外来を、ラップに巻かれたままのキズが細菌感染で重症化した患者さんがしばしば訪れるようになりました。
確かに、食品用ラップは分泌液によりキズを湿った環境に保ち、キズと固着することもありません。
ですが、ラップの下の液体は全く外に排出されません。過度に湿った環境はキズの周囲の皮膚をふやけさせてしまうし、細菌の温床にもなるのです。
ラップを適当な被覆材がない時の応急処置で使うのは良いとしても、早めの形成外科受診を勧めます。=次回は6月3日掲載