苦戦する日本 科学オリンピック
@才能の発掘
こんばんは、クローズアップ現代です。技術立国日本の未来を占う戦い、その主役は十代の少年少女です。
毎年夏、世界中の若者たちが数学や物理の能力を競い合う科学オリンピック、ここでの勝敗が技術力の行方を決めるとも言われる注目の大会です。その準備が今各国で進められています。過去10年で8度の優勝を誇る最強中国、国を挙げての強化策(英才教育振興法)でトップを窺がう韓国、そして日本でも最終選考が始まりました。アジアで最も多くノーベル賞学者を出してきた日本、しかし大会に参加して以来(1990年~)最高7位と苦戦が続いています。とても勝てそうにないです。未知のところにどうやって足を踏み入れていこうかみたいな感じです。どうすれば科学オリンピックで勝てるのか。政府は先月ノーベル賞学者や企業のトップを招集し強化に乗り出しました。
(東レ 前田勝之助名誉会長)理数系っていうのはやはり日本の国にとってもね、基盤になる人材なんですね。
技術大国日本の未来を託された秀才達、その知られざる戦いを追いました。
毎年夏に開かれているのが、世界中の10代の少年少女が生物や化学、物理、数学など各科目での能力を競い合う国際科学オリンピックです。国内の厳しい競争を勝ち抜いてきた若い頭脳、出場者はその後その国それぞれの国で経済開発を担う逸材と期待されているためこの大会での結果がそれぞれの国の将来の、10年後の産業力、開発力を占うものと見られています。それだけに科学オリンピックに向けて今各国が人材育成強化に乗り出しているのです。その科学オリンピックで好成績を残しているところがどこか。こちらが去年2006年の4科目の結果です。まず数学、1位となったのが中国、続いてロシア、韓国です。化学はといいいますとやはり中国がトップ、アジア勢が強くて台湾、韓国と続きました。そして物理と生物学、ご覧のような結果で中国はすべての科目で1位、韓国はこの科目で全て5位以内に入っていまして、台湾も好成績を修めています。で日本をと言いますと結果はこのようになりました。数学ではこれまでで最高の7位に入ったんですけども苦戦を強いられてる状況なんです。この苦戦の背景にありますのは好成績を修めている中国や韓国と比べて選手を支える体制が整っていないことが上げられています。その実態を最も競争が激しいといわれています数学オリンピックでご覧いただきましょう。
(東京 渋谷)先月下旬都内で数学オリンピック日本代表を決める最終選考会が開かれました。選手は12の難問に挑戦、成績上位の6名が代表に選ばれます。挑んだのは全国有数の進学校で数学トップを誇る21人です。三重県から来た高校2年生片岡俊基君、微分積分は小2でマスター、中2で大学卒業レベルの数学検定1級に合格しました。会場に最後に駆け込んできたのは中学生の副島真君(中3・東京)、小4で東大の入試問題をクリアー、2年前も史上最年少で代表に選ばれました。選手に出されるのはオリンピック本番と同レベルの問題です。例えば「1982人が出席しているパーティーでどの4人を選んでも、誰か1人は必ず他の3人と知り合いです。このパーティーで出席者全員を知っている人は最低何人いますか?」という問題。特に必要なのは計算力や複雑な数式ではなくひらめきと発想力です。受験数学で学ぶ公式や解法を暗記して問題に当てはめる方法では歯が立ちません。
(545)世界各国から選び抜かれた500人の神童がその頭脳を競い合う国際数学オリンピック、ひらめきと発想力で勝負が決まるこの大会で日本は初めて参加した90年以来苦戦が続いています。トップレベルと言われる5位以内は1度もありません。国内では受験戦争のトップに立つ進学校の秀才でも発想力の豊かさでは世界の壁は厚いのです。現在世界最強を誇るのが中国です。この10年でなんと8回1位、出席者全員が金メダルの快挙も成し遂げました。
(中国)強さの秘密は理数系の人材に対する官民一体となったバックアップ体制にありました。毎年政府が全国の成績優秀な小学生30万人に試験を実施、才能のある子どもを見つけるとその後中学高校と大学入学まで徹底した経済支援と英才教育を施しその才能を育てていきます。これまでに6人の金メダリストを輩出した蘇州中学(江蘇省)です。毎週オリンピックを目指す生徒だけを対象に特別授業が実施されています。使っている教科書は大学レベル、その上ひらめきや発想力を養うために独創的なとき方こそが重視されます。指導するのは多額の報酬で招かれた特別教師たちです。(817)教え子からメダリストを一人生み出すごとに教師には平均年収に匹敵するボーナスが支給されます。生徒には金メダルを獲れば北京大学などの無試験入学などの道が広がります。入学後の学費も援助が出ます。生徒たちの目標は各分野で活躍する先輩たちです。ソフト開発のベンチャー企業を設立し巨万の富を得た金メダリスト、3年前打ち上げに成功した有人ロケットの軌道計算もメダリストが奮闘したと言われています。(934)韓国(1009)ベトナム(1054)日本‐独学
(1641)日本の課題は人材育成だけではありません。実は科学オリンピックに挑んだ才能豊かな若い人たちが研究開発に進んでいないというもう1つの問題があります。(東京 新宿)数学オリンピックの選考会を主催する財団です。一人でも多くの理数系の人材を育てたいと大学教授たちが運営して来ました。ここに文部科学省から意外な調査データが送られてきたのは去年の末のことでした。これまでの数学オリンピック予選出場者の進路を調べたところ、理学工学の研究開発に携わる人は3割に過ぎなかったのです。残りの進路で特に多かったのは金融や商社などの事務職、そして医者でした。大学に進学する時医学系を選んだオリンピック出場者の西本将樹さんです。西本さんは日本代表のエースとして3年連続でオリンピックに出場した逸材でした。当時は理工系の研究者を目指していました。ところが大学進学にあたって周囲から勧められたのは医学系でした。収入や社会的地位が高いだろうからというのがその理由です。学校でも成績がよい友人の多くが医学系への進学を希望、模擬試験を受けると上位100人のうち実に8割が医学系を目指していました。結局西本さんも医学系を受験、2年後に理学部に変更しました。オリンピックに出場した多くのメンバーが進学に当たり医学系を選択しています。(2104)人材を海外から。
1.ひらめきと発想力はどこから来るのか?2.通勤時間にどんなことを考えますか?
3.頭がよいって何だろう?4.頭がいい人が社会で貢献できるようになるには?
5.頭はどんなときに使うべきか?6.頭の悪さを感じるときとは?
7.中国の脅威とは?8.自分の未来を計算するのに必要な条件は?