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LRT=ライト・レール・トランジットと呼ばれる次世代型の路面電車が、26日、栃木県で新規開業しました。地域の公共交通をめぐる新たな動きについて解説します。
■75年ぶりの新規開業
LRTは、床が低くデザイン性の高い車両が特徴の交通システムで、バリアフリー化の実現や環境への負荷の軽減といったメリットがあります。
26日に開業したのは「芳賀・宇都宮LRT」。路面電車の新規開業は実に75年ぶりのことです。
日本交通計画協会によりますと、日本の路面電車の路線長のピークは1932年、昭和7年の1746キロ。ところが1960年代から70年代にかけて車の普及によって廃止が相次ぎ、200キロほどまで激減しました。
それが今回、14.6キロが開業したことで、わずかながらも上昇に転じました。
■LRTを軸に地域交通を再編
今回開業したLRTは、宇都宮市にあるJR宇都宮駅の東口と、隣の芳賀町の工業団地を結びます。
整備を進めたのは宇都宮市と芳賀町です。少子高齢化や人口減少が進んでいく中、誰もがスムーズに移動できるようにすることで人の流れを増やし、活気あるまちをつくるのが大きなねらいです。一方、運営は、行政と民間が出資した会社が担います。
停留場は19か所。このうち5か所には「トランジットセンター」と呼ばれる、バスや乗用車などとの乗り換え施設が設けられています。バス路線も大幅に見直され、LRTを軸に地域交通の再編が図られました。
路線はさらに西側への延伸が計画され、実現すれば宇都宮市の中心市街地と結ばれることになります。
■ほかの都市への影響に注目
全線の新設によるLRTの開業は今回が初めてです。
LRTの導入はこれまでほかの地域でも検討が進められ、JRの路線を活用した富山市などの先行事例がありますが、各地に広く普及している状況にはなっていません。
かつて車の増加によって廃止が進んだ路面電車が、車に過度に依存しないまちづくりの主役になることができるのか。栃木県のLRTの成果や課題がほかの都市の交通政策に影響を及ぼすかどうかについても、注目したいと思います。
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