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ここ数年、夏は非常に暑い日が多く、「熱中症で〇人が救急搬送」という記事を読んだ方も多いと思います。西日本一帯を襲った豪雨災害の被災地も、雨は上がったものの気温が急上昇し、避難所生活や復旧作業中の熱中症に十分な注意が必要です。関東地方でも梅雨明けが早く、7月に入って高温が続いています。熱中症の原因と対策について改めてまとめました。
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今年3月中旬、仕事で滋賀県東近江市の八日市(旧八日市市)に滞在したのですが、そこで「ももいろクローバーZ」が4月下旬に野外ライブをすることを知らせるポスターを見かけました。残念ながら私は野外ライブには行けませんでしたが、そのライブ会場で午後4時の開演前、20代と50代の女性2人が熱中症による体調不良を訴え、病院に運ばれたと報じられました(読売新聞2018年4月22日)。
暑さに慣れない4~5月にも発症しやすい
ところで、熱中症は「暑い夏日の午後の病気」と思われがちですが、体が暑さに慣れていない春から初夏にかけても発症しやすいことはあまり知られていません。真夏だけでなく、4~5月の晴れの日、特に午前10時から11時ごろにかけて熱中症が高い頻度で発生します。
それだけではありません。みなさんの周りに「夏は暑くて当たり前」「寝るときにクーラーなんてつけない」と、どんなに暑くてもエアコンをつけない人はいませんか? 中高年の人に多い印象ですが、最近、高齢者が夜間に熱中症を発症することが多いことも知られるようになりました。
ももクロの屋外イベントのような「マス・ギャザリング」(一定の時間、限定地域に同一目的で集まった多人数の集団)が見られる場所では、喉が渇いても飲み物を手に入れにくい▽トイレに行くのが難しい、あるいはわずらわしいため水分摂取を控える--といった理由から、熱中症になる危険性が高いことが指摘されています。
気温29度を超えると熱中症になる人が増える
熱中症とはどのような病気か、おさらいをしましょう。
体温が上がった時、私たちの体は汗をかくことで体温を下げようとします。このため、暑い環境や激しい運動で大量の汗をかくと、体内の水分が不足し、急激な脱水状態に至ります。
すると、脳をはじめとする各臓器を循環する血流量が減り、その結果、めまいや立ちくらみに始まり、進行すると頭痛や吐き気、倦怠(けんたい)感などの症状が表れます。さらに重症になると意識を失ったり、手当てが遅れると死に至ったりすることがあります。脳以外の臓器にも影響することがあります。
熱中症の起こりやすさの予測は、湿球黒球温度(Wet Bulb Globe Temperature=WBGT)と呼ばれる暑さ指数を用います。人体と外気との熱のやりとり(熱収支)に着目した指標で、熱収支への影響が大きい湿度、 日射・輻射(ふくしゃ)など、気温--の3つを取り入れた指標です。
暑さ指数(WBGT)とは?(http://www.wbgt.env.go.jp/wbgt.php)
湿球黒球温度はやや複雑なので、簡単な指標を使うと、気温がおおむね29度を超えると、熱中症を発症する人が増えることが知られています。室温を28度以下にするのは熱中症対策にもなるのですね。
ところで、「クールビズで室温28度とすること」と「エアコンの設定を28度にする」ことは少し異なる場合があります。室内が均一の温度でないこと、夏日などで28度を超えてからエアコンのスイッチを入れても、室温が上昇してしまうことなどが原因です。
おしっこの色が濃くなったら熱中症に注意!
予防には、以下の対策が有効です。(1)暑さを避ける(2)服装を工夫する(3)こまめに水分を補給する(4)急に暑くなる日に注意する(5)暑さに備えた体作りを心がける(6)個人の条件(持病や当日の体の状態)を考慮する(7)集団活動の場ではお互いに無理強いしない--。
水分補給のタイミングについて、熱中症予防のパンフレットなどには皮膚や舌が乾燥したら、などと書かれています。私は、普段から自分のおしっこの色を見ておくよう勧めています。脱水になると、おしっこの色が通常の色から黄色、茶褐色に変化します。「いつもより色が濃いな」と思ったら、積極的に水分を補給しましょう。
私が研修医のころは、発熱した患者さんの体温を1度度下げるには、500mlの汗をかくと同時に、同じ量の水分を投与する必要があると習いました。それだけ、体が暑さに対応するには多くの水が必要なのです。
ただし、ここで気を付けたいのは、汗には塩分が含まれるため、水分だけでなく塩分も補給する必要があるということです。水分補給時には、水1リットルに食塩3gを混ぜた水分(糖分で味付けすると飲みやすい)を飲むとよいでしょう。スポーツドリンクも有効です。
また、周りで熱中症の人がいたらすぐ水分と塩分を補給し、涼しいところで休息させます。意識レベルの低下など重い障害が疑われる場合は、迷わず救急車を呼び、医療機関に運んで診てもらいましょう。
和田裕雄
順天堂大学准教授
わだ・ひろお 1993年、東京大学医学部卒。東京大学医学部付属病院、東京大学医科学研究所、英国Imperial College London留学、杏林大学付属病院呼吸器内科学教室などで、特に閉塞性肺疾患、慢性呼吸不全などの呼吸器疾患に焦点を当てて診療・研究・教育に携わってきた。2014年より順天堂大学公衆衛生学講座准教授として、予防医学や産業医学の分野で地域や働く人たちの健康管理にも目を配っている。医学博士、内科学会専門医、呼吸器学会専門医、老年医学会専門医。
