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エムポックス(サル痘)の症状と重症化リスク
エムポックス(サル痘)の感染経路
天然痘のワクチン・治療薬が有効
海外旅行 とくに注意が必要な感染症とは
海外旅行前・旅行中・旅行後 それぞれに注意を
エムポックス(サル痘)の症状と重症化リスク
エムポックス(サル痘)は、サル痘ウイルスに感染することで発症します。感染後、潜伏期間を経て、5~21日後に症状が現れます。 そのため、海外でサル痘ウイルスに感染した人が、潜伏期間中に日本に入国・帰国してウイルスを持ち込んでしまう可能性があります。主な症状は、発熱、悪寒、リンパ節の腫れ、頭痛、筋肉痛など。かぜなどと紛らわしいのですが、いちばんの特徴は皮膚の発疹で、徐々に膨らんで水疱(すいほう)になり、うみが出てきます。その後かさぶたとなり、発症後2~4週間で治癒します。
アフリカにおけるエムポックス(サル痘)患者の致死率は1~10%ほどとされていますが、先進国では多くの場合は軽症で、自然に回復しています。ただし肺炎や敗血症などの合併症を引き起こすことがあり、特に乳幼児や妊婦、免疫不全がある人などは重症化する可能性があるとされています。
エムポックス(サル痘)の感染経路
サル痘ウイルスを持っているネズミ・リス・サルなどの動物がヒトをかんだり、接触することでウイルスを感染させます。そして、感染したヒトの飛沫(ひまつ)・体液・皮膚病変などによって感染が広がっていきます。もともと、サル痘ウイルスは動物からしか感染しませんでした。しかし、現在、人間から人間へと感染が広がっています。これは、森林破壊などにより人間と野生動物の接触機会が増えたこと、さらにウイルスが人間の体内で変異して感染しやすくなったことが関係していると考えられています。
サル痘ウイルスに感染しないためには不特定多数の人と密接な接触をしないことが大切です。感染した人の唾液の飛沫や体液、皮膚の病変などを介して、ほかの人への感染が起こります。WHO(世界保健機関)やECDC(ヨーロッパ疾病対策センター)が追跡調査したところ、感染者の多くで男性どうしの性的な接触があったことが確認されました。一方で、女性の患者さんも確認されており、密接な接触によって誰もが感染する可能性があります。 また、手洗い・手指の消毒を行うことも重要です。タオルやシーツなどを介した医療従事者の感染の報告があるため、感染者が使ったものは手袋などを着用して直接的な接触を避けて洗濯などを行うようにしてください。
天然痘のワクチン・治療薬が有効
WHOは、天然痘ワクチンはエムポックス(サル痘)にも有効で、その予防効果は85%に達すると報告しています。本来、エムポックス(サル痘)予防の目的で天然痘ワクチンを使うことはできないのですが、今回の流行を受け、研究目的で特定の人には使えることになりました。対象となるのは、患者さんの家族など、患者さんに接触してから14日以内の濃厚接触者で、接触から21日後までの発症の有無を調べることになっています。 感染が疑われる場合には最寄りの保健所や医療機関に相談してください。受診する場合はマスクを着用し、発疹はガーゼで覆うなどの対策が必要です。水疱やかさぶたを検体として採取し、PCR検査で感染の有無を調べます。
感染が確認されたら、国が指定した感染症指定医療機関58か所で受けることができ、天然痘治療薬「テコビリマット」が使用される予定です。ただし、この薬はまだ国内で承認されておらず、薬の有効性や安全性を調べる「特定臨床研究」として例外的に使用が認められています。
海外旅行 とくに注意が必要な感染症とは
旅行会社が2022年4月に行ったインターネットアンケートでは、40%以上が2022年夏までに海外旅行に行きたいという結果になりました。安全に海外旅行を楽しむには、感染症対策が重要です。とくに注意が必要な感染症は「肝炎」「デング熱・マラリア」「破傷風」「狂犬病」です。
A型肝炎は魚介類などの食べ物から感染するため、1週間程度の短い滞在でも注意が必要です。B型肝炎は体液や血液を介して感染することが多いです。また、タトゥー(入れ墨)やピアスをあける際に、汚染された器具を通して感染するケースも増えています。デング熱は2022年、シンガポールで流行し、注意喚起が行われています。アジア諸国では都市部ならデング熱、地方ならマラリアが多い傾向があります。破傷風は傷口に破傷風菌が入り込んで毒素を出し、それが神経に作用してさまざまな症状が起こる病気で、発症すると死亡率が非常に高いのが特徴です。また動物由来の感染症のうち最も注意が必要なのが狂犬病です。発症後の致死率はほぼ100%。イヌだけではなく、ネコやネズミなど哺乳類すべてが感染源になります。インドやフィリピンなどで流行しています。
海外旅行前・旅行中・旅行後 それぞれに注意を
糖尿病や高血圧、呼吸器疾患などの基礎疾患がある人では、感染症が起こりやすく、重症化しやすいです。旅行の前に担当医に相談し、渡航の是非について検討するようにしましょう。また、どんな感染症が流行しているのかなど現地の最新情報を厚生労働省検疫所や外務省のホームページなどで確認するようにしましょう。危険な感染症が流行しているような場合は渡航先に応じたワクチン接種・予防薬の処方を受けるようにしましょう。また、海外では医療費は全額自己負担で、かなり高額になるため、海外旅行保険に加入することも重要な準備といえます。
厚生労働省検疫所のホームぺージはこちら (※NHKサイトを離れます)※別タブで開きます 外務省のホームページはこちら (※NHKサイトを離れます)※別タブで開きます
海外旅行中、現地ではこまめに手を洗うようにします。生肉など加熱が不十分な食品や不衛生な状況で調理された料理やカットフルーツなどは食べないようにします。果物や野菜は食べる前によく洗うなど、一般的な衛生対策を心がけましょう。また、動物との接触は可能な限り避けます。せき、発熱、腹痛、下痢など気になる症状がある場合には、他者との接触を最小限にします。旅行に支障が出るほどの重い症状がある場合には、医療機関を受診するようにしましょう。
帰国したときに症状がある場合は、空港内などの検疫所に相談します。また、帰国後1か月ぐらいの間に、せき、発熱、腹痛、下痢などの症状がみられたら、直接医療機関には行かず、事前に最寄りの保健所に電話したうえで、海外に滞在していたことを伝えます。症状がある間は、他者との接触を最小限にします。