エムポックス(サル痘) “重症化しやすい”タイプ 日本の備えは
2024年8月18日 21時54分 医療・健康
「サル痘」から名称変更された「エムポックス」の感染がアフリカ中部で拡大しています。重症化しやすいとされる新たなタイプのウイルスが見つかっていて、15日にはアフリカ以外では初めて、スウェーデンでこのタイプのウイルスの感染が確認されたと発表がありました。
日本の備えはどのようになっているのでしょうか。
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WHO「緊急事態」を宣言
感染拡大の中心となっているのが、アフリカのコンゴ民主共和国です。
ことしだけで1万4000人以上の感染が確認され、500人以上が死亡しました。重症化しやすいとされる新たなタイプのウイルスが広がっているとみられています。
感染は周辺国でも確認され、WHOは「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言しました。
WHO テドロス事務局長
「アフリカの中、そしてアフリカの外でさらに広がるおそれがあり、憂慮すべきだ」
重症化しやすいウイルス スウェーデンでも
今回、感染が広がっているのはおととしと比べて重症化しやすいタイプのウイルスで、スウェーデンの保健当局は15日、このタイプのウイルスによる感染が国内で確認され、アフリカ以外では初めての感染例だと発表しました。
患者はアフリカで感染が拡大している地域への渡航歴があったということで、現在は隔離された状態で治療を受けているとしています。
スウェーデン保健分野の政府担当者
「重症化するタイプの症例が確認された。深刻に受け止めている」
おととしにも欧米を中心に感染が広がったエムポックス。発熱や発疹などの症状が現れるウイルス性の感染症で、子どもや高齢者などでは重症化して死に至るケースもあります。
感染した人や動物の体液や血液に接触したり、近距離で飛まつを浴びたりすることで感染する可能性があります。
今回の流行の特徴について専門家は、次のように指摘しています。
岡山理科大学元教授 森川茂さん
「主に接触感染で広がるウイルスだが今回の流行では家庭内感染などで子どもが発症するケースが多いなど、性的な接触ではない通常の接触での感染リスクが高まっている。また、今回流行しているウイルスは以前流行したものと比べ病原性が強く、特に15歳未満の子どもでの感染者が多く、重症化して亡くなる方も多いと報告されている」
日本の対応は
外務省は15日、コンゴ民主共和国、ブルンジ、ケニア、ルワンダ、ウガンダ、コンゴ共和国、中央アフリカ共和国の7か国を対象に、4段階ある「感染症危険情報」の「レベル1」を出しました。
政府は、こうした国へ渡航したり滞在したりする場合は、感染に十分注意するよう呼びかけています。
日本国内で感染が疑われる患者が出た場合は各都道府県にある地方衛生研究所で検査を行い、重症者は東京や大阪など7つの都道府県にある医療機関で抗ウイルス薬の投与が受けられる体制を整えているということです。
ワクチン不足が深刻に
さらなる感染拡大を防ぐために必要なのがワクチンです。しかし、アフリカではいま、ワクチン不足が深刻です。
IFRC(国際赤十字・赤新月社連盟)の担当者は16日、スイスでの記者会見で感染状況を報告したうえで、「前回2年前の流行をはるかに超え、アフリカが近年直面している最も重大な健康上の脅威のひとつだ」と述べ、感染の拡大が深刻だと指摘しました。
そのうえで「検査体制は不十分で、ワクチンの不足もアフリカ全体で深刻だ。私たちは新型コロナからの教訓を学んでいないようだ。備蓄の多くは裕福な国にある」と述べ、各国が備蓄するワクチンなどを、すみやかにアフリカに供給してほしいと呼びかけました。
アフリカCDC(疾病対策センター)は、エムポックスのワクチンは、アフリカ全体で少なくとも1000万回分必要である一方、現在使用可能な量は、およそ20万回分にとどまるとしています。
岡山理科大学元教授 森川茂さん
「今後、アフリカでのワクチン接種が遅れてしまうと世界中に感染が拡大するリスクがある。日本でもアフリカの流行地域にいた人が知らないうちに感染して帰国して発症するリスクが考えられる。発症初期には発熱などの症状があるので、流行地域に滞在した人は発熱があればエムポックスを疑って医療機関で検査を受けてほしい」