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医師が処方するかぜ薬や抗アレルギー薬、保湿剤などの医療用医薬品。こうした薬局などで購入できる市販薬と似たような成分や効能を持つ、いわゆる「OTC類似薬」の保険給付の見直しが議論されています。薬代の負担の増加や受診控えなどを懸念する声も出る中、なぜ、見直しの議論が進められているのか、まとめました。
「OTC類似薬」とは 「市販薬」と違いは

保険適用の見直しの議論の対象となっている「OTC類似薬」とはどんなものなのでしょうか。
医薬品は主に、医師の診断を受けて処方される医療用の医薬品と、薬局などで購入できる市販薬に分けられます。

このうち「市販薬」は、「カウンター越し」で販売、購入する薬、英語で「Over The Counter」の略から「OTC医薬品」とも呼ばれています。
「OTC類似薬」は、明確な定義はありませんが、この「OTC医薬品」と成分や効能が同じ、または似たような薬のことで、かぜ薬や抗アレルギー薬、保湿剤、湿布薬などがあります。
「OTC類似薬」は、現在は原則、医師の処方箋が必要で、医療保険が適用されるため、患者の自己負担は1割から3割に抑えられています。
実際の負担額で比較してみると、たとえば、「ロキソプロフェン」という成分が含まれる解熱鎮痛薬では、市販薬だとメーカーの希望小売価格は1箱12錠入りで768円です。
同じ成分で、医師に処方される「OTC類似薬」の先発医薬品の場合、国が定めた薬価では1錠あたり10.4円。
窓口での自己負担が3割の人の場合だと、1錠あたり3.12円となり、12錠では37.44円となります。

「OTC類似薬」の場合は、この薬価に加えて、診察料や薬局の技術料などの費用が加わりますが、薬代の負担だけでみると、市販薬とはおよそ20倍の差があります。
専門家によりますと、市販薬は、広告宣伝などの費用が上乗せされるため、価格が高くなる傾向にあるということです。
難病患者「当事者の意見聞いて」

難病を抱える患者も今後の議論の行方を心配し、「当事者の意見を聞いてほしい」と訴えています。
埼玉県に住む23歳の男性は、皮膚の難病「先天性魚りんせん」を患っていて、全身の皮膚が乾燥してはがれ落ちるほか、汗腺が適切に機能せず、みずから体温調節することも難しいといいます。
現在は、アレルギーを抑える飲み薬と保湿剤など3種類の塗り薬を処方されています。

全身の皮膚の乾燥を抑えるため、1日で50グラムのクリーム1本と、皮膚の状態が悪いときには5グラムの軟こうを5本から6本、使い切るといいます。
これらの薬は保険適用されているため薬代は年間3万円ほどに抑えられていますが、同様の成分が入った市販薬にすべて置きかえて購入すると、薬代は年間で80万円以上にもなるということです。
身体の状態によっては追加の薬を処方してもらうほか、薬代以外にも皮膚を覆う大量の包帯や体温調節を補助する特別な洋服も必要で、経済的な負担は大きいといいます。
男性は「皮膚の状態が悪化すると痛みで動けなくなり、仕事や日常生活が送れなくなるので、薬の量を減らすことはできません。これ以上、自己負担が増えるといまの収入では生活を維持できなくなるのではと、この先、どうなるか不安です。国には、当事者の意見を聞いてもらい、薬を必要としている人が本当に困らないのか、しっかり時間をかけて検討して制度を作って欲しいです」と話していました。
背景に医療費増加 医療界などから懸念や不安の声
OTC類似薬の保険給付の見直しに向けた議論の背景には、増加し続ける医療費があります。
医療費は高齢化や医療の高度化などに伴い増加していて、昨年度は概算で48兆円となり、4年連続で過去最高を更新しました。
医療費は今後も増加する見込みで、厚生労働省は、2040年度には80兆円近くに達すると予測しています。
こうした中、政府は、ことし6月に閣議決定した「骨太の方針」に、持続可能な社会制度のため現役世代の保険料負担を軽減させるなどとして、OTC類似薬の保険給付のあり方の見直しを盛り込みました。
また、10月、自民党と日本維新の会が交わした連立合意書でもOTC類似薬を含む薬剤自己負担の見直しが盛り込まれ、議論が本格化するとみられています。
一方、患者家族や医療界などからは保険適用の見直しの議論には懸念や不安の声が上がっています。
難病患者やその家族などおよそ5700人が回答したアンケート調査では、保険適用が外れた場合に懸念されることを聞いたところ、複数回答で、「薬代が高くなること」が8割、「薬が必要量用意できずに、病状が悪化する」と「自己判断で薬を買うようになる」が6割などとなっています。
また、日本医師会も仮に保険適用が外された場合、受診控えにつながるほか、乳幼児の医療費助成制度がある自治体では、結果として子育て世代の自己負担が増えるおそれがあるとして懸念を表明しています。
見直し議論のポイントは
【保険適用除外による医療費の削減効果は?】
OTC類似薬を保険適用から外した場合、医療費がどのくらい削減されるかは、「OTC類似薬」の対象をどの範囲にまで広げるかで大きく変動します。
複数の専門家が試算を出していて、このうち、医療経済に詳しい東京大学大学院の五十嵐中特任准教授が行った試算では、市販薬に同じ成分と効能がある「OTC類似薬」を保険適用から外した場合、医療費は年間でおよそ3280億円削減されると推計しています。
また、同じ成分が入っていて、効能が同じではない「OTC類似薬」まで含めて幅広く保険適用を外した場合は、医療費は年間およそ6500億円削減できると試算しています。
【保険適用の除外以外の案は?】
保険適用からの除外のほかにも、医療費の削減に有効な手段として、例えば、OTC類似薬を処方された場合の窓口での自己負担率を引き上げることや一定額を上乗せとする案も考えられます。
【見直しの議論どうなる?】
OTC類似薬の保険適用の見直しをめぐる議論は、厚生労働省の審議会で進められていますが、現段階でどのような薬が対象になるかや見直しに向けた具体的な案は示されていません。
ただ、国は、必要な受診を確保し、子どもや慢性疾患を抱えている人や低所得の人に配慮した上で、ことしの年末までに十分な検討を行うとしています。
そして、早期に実現可能なものについて来年度から実行するとして、議論を進めています。
【専門家「保険適用除外は最後の手段」】
さきほどの試算で紹介した東京大学大学院の五十嵐特任准教授は、OTC類似薬の保険適用を見直すことについては医療費の抑制という観点から妥当だとしながらも、ほかの手段も検討するなど丁寧な対応が大切だとしています。
五十嵐特任教授は、OTC類似薬の自己負担率の引き上げや市販薬の値下げなどによって、OTC類似薬と市販薬の価格の差を縮め、軽症の患者などが市販薬を選ぶよう促していくやり方もあるとした上で「本当に薬を必要としている患者を、漏らさないような配慮が必要だ。保険適用からの除外は、『最後の手段』と位置づけて考えるべきではないか」と話していました。
医師が処方するかぜ薬や抗アレルギー薬、保湿剤などの医療用医薬品。こうした薬局などで購入できる市販薬と似たような成分や効能を持つ、いわゆる「OTC類似薬」の保険給付の見直しが議論されています。薬代の負担の増加や受診控えなどを懸念する声も出る中、なぜ、見直しの議論が進められているのか、まとめました。
「OTC類似薬」とは 「市販薬」と違いは

保険適用の見直しの議論の対象となっている「OTC類似薬」とはどんなものなのでしょうか。
医薬品は主に、医師の診断を受けて処方される医療用の医薬品と、薬局などで購入できる市販薬に分けられます。

このうち「市販薬」は、「カウンター越し」で販売、購入する薬、英語で「Over The Counter」の略から「OTC医薬品」とも呼ばれています。
「OTC類似薬」は、明確な定義はありませんが、この「OTC医薬品」と成分や効能が同じ、または似たような薬のことで、かぜ薬や抗アレルギー薬、保湿剤、湿布薬などがあります。
「OTC類似薬」は、現在は原則、医師の処方箋が必要で、医療保険が適用されるため、患者の自己負担は1割から3割に抑えられています。
実際の負担額で比較してみると、たとえば、「ロキソプロフェン」という成分が含まれる解熱鎮痛薬では、市販薬だとメーカーの希望小売価格は1箱12錠入りで768円です。
同じ成分で、医師に処方される「OTC類似薬」の先発医薬品の場合、国が定めた薬価では1錠あたり10.4円。
窓口での自己負担が3割の人の場合だと、1錠あたり3.12円となり、12錠では37.44円となります。

「OTC類似薬」の場合は、この薬価に加えて、診察料や薬局の技術料などの費用が加わりますが、薬代の負担だけでみると、市販薬とはおよそ20倍の差があります。
専門家によりますと、市販薬は、広告宣伝などの費用が上乗せされるため、価格が高くなる傾向にあるということです。
難病患者「当事者の意見聞いて」

難病を抱える患者も今後の議論の行方を心配し、「当事者の意見を聞いてほしい」と訴えています。
埼玉県に住む23歳の男性は、皮膚の難病「先天性魚りんせん」を患っていて、全身の皮膚が乾燥してはがれ落ちるほか、汗腺が適切に機能せず、みずから体温調節することも難しいといいます。
現在は、アレルギーを抑える飲み薬と保湿剤など3種類の塗り薬を処方されています。

全身の皮膚の乾燥を抑えるため、1日で50グラムのクリーム1本と、皮膚の状態が悪いときには5グラムの軟こうを5本から6本、使い切るといいます。
これらの薬は保険適用されているため薬代は年間3万円ほどに抑えられていますが、同様の成分が入った市販薬にすべて置きかえて購入すると、薬代は年間で80万円以上にもなるということです。
身体の状態によっては追加の薬を処方してもらうほか、薬代以外にも皮膚を覆う大量の包帯や体温調節を補助する特別な洋服も必要で、経済的な負担は大きいといいます。
男性は「皮膚の状態が悪化すると痛みで動けなくなり、仕事や日常生活が送れなくなるので、薬の量を減らすことはできません。これ以上、自己負担が増えるといまの収入では生活を維持できなくなるのではと、この先、どうなるか不安です。国には、当事者の意見を聞いてもらい、薬を必要としている人が本当に困らないのか、しっかり時間をかけて検討して制度を作って欲しいです」と話していました。
背景に医療費増加 医療界などから懸念や不安の声
OTC類似薬の保険給付の見直しに向けた議論の背景には、増加し続ける医療費があります。
医療費は高齢化や医療の高度化などに伴い増加していて、昨年度は概算で48兆円となり、4年連続で過去最高を更新しました。
医療費は今後も増加する見込みで、厚生労働省は、2040年度には80兆円近くに達すると予測しています。
こうした中、政府は、ことし6月に閣議決定した「骨太の方針」に、持続可能な社会制度のため現役世代の保険料負担を軽減させるなどとして、OTC類似薬の保険給付のあり方の見直しを盛り込みました。
また、10月、自民党と日本維新の会が交わした連立合意書でもOTC類似薬を含む薬剤自己負担の見直しが盛り込まれ、議論が本格化するとみられています。
一方、患者家族や医療界などからは保険適用の見直しの議論には懸念や不安の声が上がっています。
難病患者やその家族などおよそ5700人が回答したアンケート調査では、保険適用が外れた場合に懸念されることを聞いたところ、複数回答で、「薬代が高くなること」が8割、「薬が必要量用意できずに、病状が悪化する」と「自己判断で薬を買うようになる」が6割などとなっています。
また、日本医師会も仮に保険適用が外された場合、受診控えにつながるほか、乳幼児の医療費助成制度がある自治体では、結果として子育て世代の自己負担が増えるおそれがあるとして懸念を表明しています。
見直し議論のポイントは
【保険適用除外による医療費の削減効果は?】
OTC類似薬を保険適用から外した場合、医療費がどのくらい削減されるかは、「OTC類似薬」の対象をどの範囲にまで広げるかで大きく変動します。
複数の専門家が試算を出していて、このうち、医療経済に詳しい東京大学大学院の五十嵐中特任准教授が行った試算では、市販薬に同じ成分と効能がある「OTC類似薬」を保険適用から外した場合、医療費は年間でおよそ3280億円削減されると推計しています。
また、同じ成分が入っていて、効能が同じではない「OTC類似薬」まで含めて幅広く保険適用を外した場合は、医療費は年間およそ6500億円削減できると試算しています。
【保険適用の除外以外の案は?】
保険適用からの除外のほかにも、医療費の削減に有効な手段として、例えば、OTC類似薬を処方された場合の窓口での自己負担率を引き上げることや一定額を上乗せとする案も考えられます。
【見直しの議論どうなる?】
OTC類似薬の保険適用の見直しをめぐる議論は、厚生労働省の審議会で進められていますが、現段階でどのような薬が対象になるかや見直しに向けた具体的な案は示されていません。
ただ、国は、必要な受診を確保し、子どもや慢性疾患を抱えている人や低所得の人に配慮した上で、ことしの年末までに十分な検討を行うとしています。
そして、早期に実現可能なものについて来年度から実行するとして、議論を進めています。
【専門家「保険適用除外は最後の手段」】
さきほどの試算で紹介した東京大学大学院の五十嵐特任准教授は、OTC類似薬の保険適用を見直すことについては医療費の抑制という観点から妥当だとしながらも、ほかの手段も検討するなど丁寧な対応が大切だとしています。
五十嵐特任教授は、OTC類似薬の自己負担率の引き上げや市販薬の値下げなどによって、OTC類似薬と市販薬の価格の差を縮め、軽症の患者などが市販薬を選ぶよう促していくやり方もあるとした上で「本当に薬を必要としている患者を、漏らさないような配慮が必要だ。保険適用からの除外は、『最後の手段』と位置づけて考えるべきではないか」と話していました。
医師が処方するかぜ薬や抗アレルギー薬、保湿剤などの医療用医薬品。こうした薬局などで購入できる市販薬と似たような成分や効能を持つ、いわゆる「OTC類似薬」の保険給付の見直しが議論されています。薬代の負担の増加や受診控えなどを懸念する声も出る中、なぜ、見直しの議論が進められているのか、まとめました。
「OTC類似薬」とは 「市販薬」と違いは

保険適用の見直しの議論の対象となっている「OTC類似薬」とはどんなものなのでしょうか。
医薬品は主に、医師の診断を受けて処方される医療用の医薬品と、薬局などで購入できる市販薬に分けられます。

このうち「市販薬」は、「カウンター越し」で販売、購入する薬、英語で「Over The Counter」の略から「OTC医薬品」とも呼ばれています。
「OTC類似薬」は、明確な定義はありませんが、この「OTC医薬品」と成分や効能が同じ、または似たような薬のことで、かぜ薬や抗アレルギー薬、保湿剤、湿布薬などがあります。
「OTC類似薬」は、現在は原則、医師の処方箋が必要で、医療保険が適用されるため、患者の自己負担は1割から3割に抑えられています。
実際の負担額で比較してみると、たとえば、「ロキソプロフェン」という成分が含まれる解熱鎮痛薬では、市販薬だとメーカーの希望小売価格は1箱12錠入りで768円です。
同じ成分で、医師に処方される「OTC類似薬」の先発医薬品の場合、国が定めた薬価では1錠あたり10.4円。
窓口での自己負担が3割の人の場合だと、1錠あたり3.12円となり、12錠では37.44円となります。

「OTC類似薬」の場合は、この薬価に加えて、診察料や薬局の技術料などの費用が加わりますが、薬代の負担だけでみると、市販薬とはおよそ20倍の差があります。
専門家によりますと、市販薬は、広告宣伝などの費用が上乗せされるため、価格が高くなる傾向にあるということです。
難病患者「当事者の意見聞いて」

難病を抱える患者も今後の議論の行方を心配し、「当事者の意見を聞いてほしい」と訴えています。
埼玉県に住む23歳の男性は、皮膚の難病「先天性魚りんせん」を患っていて、全身の皮膚が乾燥してはがれ落ちるほか、汗腺が適切に機能せず、みずから体温調節することも難しいといいます。
現在は、アレルギーを抑える飲み薬と保湿剤など3種類の塗り薬を処方されています。

全身の皮膚の乾燥を抑えるため、1日で50グラムのクリーム1本と、皮膚の状態が悪いときには5グラムの軟こうを5本から6本、使い切るといいます。
これらの薬は保険適用されているため薬代は年間3万円ほどに抑えられていますが、同様の成分が入った市販薬にすべて置きかえて購入すると、薬代は年間で80万円以上にもなるということです。
身体の状態によっては追加の薬を処方してもらうほか、薬代以外にも皮膚を覆う大量の包帯や体温調節を補助する特別な洋服も必要で、経済的な負担は大きいといいます。
男性は「皮膚の状態が悪化すると痛みで動けなくなり、仕事や日常生活が送れなくなるので、薬の量を減らすことはできません。これ以上、自己負担が増えるといまの収入では生活を維持できなくなるのではと、この先、どうなるか不安です。国には、当事者の意見を聞いてもらい、薬を必要としている人が本当に困らないのか、しっかり時間をかけて検討して制度を作って欲しいです」と話していました。
背景に医療費増加 医療界などから懸念や不安の声
OTC類似薬の保険給付の見直しに向けた議論の背景には、増加し続ける医療費があります。
医療費は高齢化や医療の高度化などに伴い増加していて、昨年度は概算で48兆円となり、4年連続で過去最高を更新しました。
医療費は今後も増加する見込みで、厚生労働省は、2040年度には80兆円近くに達すると予測しています。
こうした中、政府は、ことし6月に閣議決定した「骨太の方針」に、持続可能な社会制度のため現役世代の保険料負担を軽減させるなどとして、OTC類似薬の保険給付のあり方の見直しを盛り込みました。
また、10月、自民党と日本維新の会が交わした連立合意書でもOTC類似薬を含む薬剤自己負担の見直しが盛り込まれ、議論が本格化するとみられています。
一方、患者家族や医療界などからは保険適用の見直しの議論には懸念や不安の声が上がっています。
難病患者やその家族などおよそ5700人が回答したアンケート調査では、保険適用が外れた場合に懸念されることを聞いたところ、複数回答で、「薬代が高くなること」が8割、「薬が必要量用意できずに、病状が悪化する」と「自己判断で薬を買うようになる」が6割などとなっています。
また、日本医師会も仮に保険適用が外された場合、受診控えにつながるほか、乳幼児の医療費助成制度がある自治体では、結果として子育て世代の自己負担が増えるおそれがあるとして懸念を表明しています。
見直し議論のポイントは
【保険適用除外による医療費の削減効果は?】
OTC類似薬を保険適用から外した場合、医療費がどのくらい削減されるかは、「OTC類似薬」の対象をどの範囲にまで広げるかで大きく変動します。
複数の専門家が試算を出していて、このうち、医療経済に詳しい東京大学大学院の五十嵐中特任准教授が行った試算では、市販薬に同じ成分と効能がある「OTC類似薬」を保険適用から外した場合、医療費は年間でおよそ3280億円削減されると推計しています。
また、同じ成分が入っていて、効能が同じではない「OTC類似薬」まで含めて幅広く保険適用を外した場合は、医療費は年間およそ6500億円削減できると試算しています。
【保険適用の除外以外の案は?】
保険適用からの除外のほかにも、医療費の削減に有効な手段として、例えば、OTC類似薬を処方された場合の窓口での自己負担率を引き上げることや一定額を上乗せとする案も考えられます。
【見直しの議論どうなる?】
OTC類似薬の保険適用の見直しをめぐる議論は、厚生労働省の審議会で進められていますが、現段階でどのような薬が対象になるかや見直しに向けた具体的な案は示されていません。
ただ、国は、必要な受診を確保し、子どもや慢性疾患を抱えている人や低所得の人に配慮した上で、ことしの年末までに十分な検討を行うとしています。
そして、早期に実現可能なものについて来年度から実行するとして、議論を進めています。
【専門家「保険適用除外は最後の手段」】
さきほどの試算で紹介した東京大学大学院の五十嵐特任准教授は、OTC類似薬の保険適用を見直すことについては医療費の抑制という観点から妥当だとしながらも、ほかの手段も検討するなど丁寧な対応が大切だとしています。
五十嵐特任教授は、OTC類似薬の自己負担率の引き上げや市販薬の値下げなどによって、OTC類似薬と市販薬の価格の差を縮め、軽症の患者などが市販薬を選ぶよう促していくやり方もあるとした上で「本当に薬を必要としている患者を、漏らさないような配慮が必要だ。保険適用からの除外は、『最後の手段』と位置づけて考えるべきではないか」と話していました。
医師が処方するかぜ薬や抗アレルギー薬、保湿剤などの医療用医薬品。こうした薬局などで購入できる市販薬と似たような成分や効能を持つ、いわゆる「OTC類似薬」の保険給付の見直しが議論されています。薬代の負担の増加や受診控えなどを懸念する声も出る中、なぜ、見直しの議論が進められているのか、まとめました。
「OTC類似薬」とは 「市販薬」と違いは

保険適用の見直しの議論の対象となっている「OTC類似薬」とはどんなものなのでしょうか。
医薬品は主に、医師の診断を受けて処方される医療用の医薬品と、薬局などで購入できる市販薬に分けられます。

このうち「市販薬」は、「カウンター越し」で販売、購入する薬、英語で「Over The Counter」の略から「OTC医薬品」とも呼ばれています。
「OTC類似薬」は、明確な定義はありませんが、この「OTC医薬品」と成分や効能が同じ、または似たような薬のことで、かぜ薬や抗アレルギー薬、保湿剤、湿布薬などがあります。
「OTC類似薬」は、現在は原則、医師の処方箋が必要で、医療保険が適用されるため、患者の自己負担は1割から3割に抑えられています。
実際の負担額で比較してみると、たとえば、「ロキソプロフェン」という成分が含まれる解熱鎮痛薬では、市販薬だとメーカーの希望小売価格は1箱12錠入りで768円です。
同じ成分で、医師に処方される「OTC類似薬」の先発医薬品の場合、国が定めた薬価では1錠あたり10.4円。
窓口での自己負担が3割の人の場合だと、1錠あたり3.12円となり、12錠では37.44円となります。

「OTC類似薬」の場合は、この薬価に加えて、診察料や薬局の技術料などの費用が加わりますが、薬代の負担だけでみると、市販薬とはおよそ20倍の差があります。
専門家によりますと、市販薬は、広告宣伝などの費用が上乗せされるため、価格が高くなる傾向にあるということです。
難病患者「当事者の意見聞いて」

難病を抱える患者も今後の議論の行方を心配し、「当事者の意見を聞いてほしい」と訴えています。
埼玉県に住む23歳の男性は、皮膚の難病「先天性魚りんせん」を患っていて、全身の皮膚が乾燥してはがれ落ちるほか、汗腺が適切に機能せず、みずから体温調節することも難しいといいます。
現在は、アレルギーを抑える飲み薬と保湿剤など3種類の塗り薬を処方されています。

全身の皮膚の乾燥を抑えるため、1日で50グラムのクリーム1本と、皮膚の状態が悪いときには5グラムの軟こうを5本から6本、使い切るといいます。
これらの薬は保険適用されているため薬代は年間3万円ほどに抑えられていますが、同様の成分が入った市販薬にすべて置きかえて購入すると、薬代は年間で80万円以上にもなるということです。
身体の状態によっては追加の薬を処方してもらうほか、薬代以外にも皮膚を覆う大量の包帯や体温調節を補助する特別な洋服も必要で、経済的な負担は大きいといいます。
男性は「皮膚の状態が悪化すると痛みで動けなくなり、仕事や日常生活が送れなくなるので、薬の量を減らすことはできません。これ以上、自己負担が増えるといまの収入では生活を維持できなくなるのではと、この先、どうなるか不安です。国には、当事者の意見を聞いてもらい、薬を必要としている人が本当に困らないのか、しっかり時間をかけて検討して制度を作って欲しいです」と話していました。
背景に医療費増加 医療界などから懸念や不安の声
OTC類似薬の保険給付の見直しに向けた議論の背景には、増加し続ける医療費があります。
医療費は高齢化や医療の高度化などに伴い増加していて、昨年度は概算で48兆円となり、4年連続で過去最高を更新しました。
医療費は今後も増加する見込みで、厚生労働省は、2040年度には80兆円近くに達すると予測しています。
こうした中、政府は、ことし6月に閣議決定した「骨太の方針」に、持続可能な社会制度のため現役世代の保険料負担を軽減させるなどとして、OTC類似薬の保険給付のあり方の見直しを盛り込みました。
また、10月、自民党と日本維新の会が交わした連立合意書でもOTC類似薬を含む薬剤自己負担の見直しが盛り込まれ、議論が本格化するとみられています。
一方、患者家族や医療界などからは保険適用の見直しの議論には懸念や不安の声が上がっています。
難病患者やその家族などおよそ5700人が回答したアンケート調査では、保険適用が外れた場合に懸念されることを聞いたところ、複数回答で、「薬代が高くなること」が8割、「薬が必要量用意できずに、病状が悪化する」と「自己判断で薬を買うようになる」が6割などとなっています。
また、日本医師会も仮に保険適用が外された場合、受診控えにつながるほか、乳幼児の医療費助成制度がある自治体では、結果として子育て世代の自己負担が増えるおそれがあるとして懸念を表明しています。
見直し議論のポイントは
【保険適用除外による医療費の削減効果は?】
OTC類似薬を保険適用から外した場合、医療費がどのくらい削減されるかは、「OTC類似薬」の対象をどの範囲にまで広げるかで大きく変動します。
複数の専門家が試算を出していて、このうち、医療経済に詳しい東京大学大学院の五十嵐中特任准教授が行った試算では、市販薬に同じ成分と効能がある「OTC類似薬」を保険適用から外した場合、医療費は年間でおよそ3280億円削減されると推計しています。
また、同じ成分が入っていて、効能が同じではない「OTC類似薬」まで含めて幅広く保険適用を外した場合は、医療費は年間およそ6500億円削減できると試算しています。
【保険適用の除外以外の案は?】
保険適用からの除外のほかにも、医療費の削減に有効な手段として、例えば、OTC類似薬を処方された場合の窓口での自己負担率を引き上げることや一定額を上乗せとする案も考えられます。
【見直しの議論どうなる?】
OTC類似薬の保険適用の見直しをめぐる議論は、厚生労働省の審議会で進められていますが、現段階でどのような薬が対象になるかや見直しに向けた具体的な案は示されていません。
ただ、国は、必要な受診を確保し、子どもや慢性疾患を抱えている人や低所得の人に配慮した上で、ことしの年末までに十分な検討を行うとしています。
そして、早期に実現可能なものについて来年度から実行するとして、議論を進めています。
【専門家「保険適用除外は最後の手段」】
さきほどの試算で紹介した東京大学大学院の五十嵐特任准教授は、OTC類似薬の保険適用を見直すことについては医療費の抑制という観点から妥当だとしながらも、ほかの手段も検討するなど丁寧な対応が大切だとしています。
五十嵐特任教授は、OTC類似薬の自己負担率の引き上げや市販薬の値下げなどによって、OTC類似薬と市販薬の価格の差を縮め、軽症の患者などが市販薬を選ぶよう促していくやり方もあるとした上で「本当に薬を必要としている患者を、漏らさないような配慮が必要だ。保険適用からの除外は、『最後の手段』と位置づけて考えるべきではないか」と話していました。
医師が処方するかぜ薬や抗アレルギー薬、保湿剤などの医療用医薬品。こうした薬局などで購入できる市販薬と似たような成分や効能を持つ、いわゆる「OTC類似薬」の保険給付の見直しが議論されています。薬代の負担の増加や受診控えなどを懸念する声も出る中、なぜ、見直しの議論が進められているのか、まとめました。
「OTC類似薬」とは 「市販薬」と違いは

保険適用の見直しの議論の対象となっている「OTC類似薬」とはどんなものなのでしょうか。
医薬品は主に、医師の診断を受けて処方される医療用の医薬品と、薬局などで購入できる市販薬に分けられます。

このうち「市販薬」は、「カウンター越し」で販売、購入する薬、英語で「Over The Counter」の略から「OTC医薬品」とも呼ばれています。
「OTC類似薬」は、明確な定義はありませんが、この「OTC医薬品」と成分や効能が同じ、または似たような薬のことで、かぜ薬や抗アレルギー薬、保湿剤、湿布薬などがあります。
「OTC類似薬」は、現在は原則、医師の処方箋が必要で、医療保険が適用されるため、患者の自己負担は1割から3割に抑えられています。
実際の負担額で比較してみると、たとえば、「ロキソプロフェン」という成分が含まれる解熱鎮痛薬では、市販薬だとメーカーの希望小売価格は1箱12錠入りで768円です。
同じ成分で、医師に処方される「OTC類似薬」の先発医薬品の場合、国が定めた薬価では1錠あたり10.4円。
窓口での自己負担が3割の人の場合だと、1錠あたり3.12円となり、12錠では37.44円となります。

「OTC類似薬」の場合は、この薬価に加えて、診察料や薬局の技術料などの費用が加わりますが、薬代の負担だけでみると、市販薬とはおよそ20倍の差があります。
専門家によりますと、市販薬は、広告宣伝などの費用が上乗せされるため、価格が高くなる傾向にあるということです。
難病患者「当事者の意見聞いて」

難病を抱える患者も今後の議論の行方を心配し、「当事者の意見を聞いてほしい」と訴えています。
埼玉県に住む23歳の男性は、皮膚の難病「先天性魚りんせん」を患っていて、全身の皮膚が乾燥してはがれ落ちるほか、汗腺が適切に機能せず、みずから体温調節することも難しいといいます。
現在は、アレルギーを抑える飲み薬と保湿剤など3種類の塗り薬を処方されています。

全身の皮膚の乾燥を抑えるため、1日で50グラムのクリーム1本と、皮膚の状態が悪いときには5グラムの軟こうを5本から6本、使い切るといいます。
これらの薬は保険適用されているため薬代は年間3万円ほどに抑えられていますが、同様の成分が入った市販薬にすべて置きかえて購入すると、薬代は年間で80万円以上にもなるということです。
身体の状態によっては追加の薬を処方してもらうほか、薬代以外にも皮膚を覆う大量の包帯や体温調節を補助する特別な洋服も必要で、経済的な負担は大きいといいます。
男性は「皮膚の状態が悪化すると痛みで動けなくなり、仕事や日常生活が送れなくなるので、薬の量を減らすことはできません。これ以上、自己負担が増えるといまの収入では生活を維持できなくなるのではと、この先、どうなるか不安です。国には、当事者の意見を聞いてもらい、薬を必要としている人が本当に困らないのか、しっかり時間をかけて検討して制度を作って欲しいです」と話していました。
背景に医療費増加 医療界などから懸念や不安の声
OTC類似薬の保険給付の見直しに向けた議論の背景には、増加し続ける医療費があります。
医療費は高齢化や医療の高度化などに伴い増加していて、昨年度は概算で48兆円となり、4年連続で過去最高を更新しました。
医療費は今後も増加する見込みで、厚生労働省は、2040年度には80兆円近くに達すると予測しています。
こうした中、政府は、ことし6月に閣議決定した「骨太の方針」に、持続可能な社会制度のため現役世代の保険料負担を軽減させるなどとして、OTC類似薬の保険給付のあり方の見直しを盛り込みました。
また、10月、自民党と日本維新の会が交わした連立合意書でもOTC類似薬を含む薬剤自己負担の見直しが盛り込まれ、議論が本格化するとみられています。
一方、患者家族や医療界などからは保険適用の見直しの議論には懸念や不安の声が上がっています。
難病患者やその家族などおよそ5700人が回答したアンケート調査では、保険適用が外れた場合に懸念されることを聞いたところ、複数回答で、「薬代が高くなること」が8割、「薬が必要量用意できずに、病状が悪化する」と「自己判断で薬を買うようになる」が6割などとなっています。
また、日本医師会も仮に保険適用が外された場合、受診控えにつながるほか、乳幼児の医療費助成制度がある自治体では、結果として子育て世代の自己負担が増えるおそれがあるとして懸念を表明しています。
見直し議論のポイントは
【保険適用除外による医療費の削減効果は?】
OTC類似薬を保険適用から外した場合、医療費がどのくらい削減されるかは、「OTC類似薬」の対象をどの範囲にまで広げるかで大きく変動します。
複数の専門家が試算を出していて、このうち、医療経済に詳しい東京大学大学院の五十嵐中特任准教授が行った試算では、市販薬に同じ成分と効能がある「OTC類似薬」を保険適用から外した場合、医療費は年間でおよそ3280億円削減されると推計しています。
また、同じ成分が入っていて、効能が同じではない「OTC類似薬」まで含めて幅広く保険適用を外した場合は、医療費は年間およそ6500億円削減できると試算しています。
【保険適用の除外以外の案は?】
保険適用からの除外のほかにも、医療費の削減に有効な手段として、例えば、OTC類似薬を処方された場合の窓口での自己負担率を引き上げることや一定額を上乗せとする案も考えられます。
【見直しの議論どうなる?】
OTC類似薬の保険適用の見直しをめぐる議論は、厚生労働省の審議会で進められていますが、現段階でどのような薬が対象になるかや見直しに向けた具体的な案は示されていません。
ただ、国は、必要な受診を確保し、子どもや慢性疾患を抱えている人や低所得の人に配慮した上で、ことしの年末までに十分な検討を行うとしています。
そして、早期に実現可能なものについて来年度から実行するとして、議論を進めています。
【専門家「保険適用除外は最後の手段」】
さきほどの試算で紹介した東京大学大学院の五十嵐特任准教授は、OTC類似薬の保険適用を見直すことについては医療費の抑制という観点から妥当だとしながらも、ほかの手段も検討するなど丁寧な対応が大切だとしています。
五十嵐特任教授は、OTC類似薬の自己負担率の引き上げや市販薬の値下げなどによって、OTC類似薬と市販薬の価格の差を縮め、軽症の患者などが市販薬を選ぶよう促していくやり方もあるとした上で「本当に薬を必要としている患者を、漏らさないような配慮が必要だ。保険適用からの除外は、『最後の手段』と位置づけて考えるべきではないか」と話していました。
