|
夜叉の願望
『ぐちゃぐちゃにしてくれ、旦那様』
遊郭での甘ったらしい空気とは一変、土方と坂田の雰囲気は色を纏っていた。
情事の時のように蕩けた、甘い声でそう言われて坂田の息子が反応しない訳もなく、坂田は息子がパーン!するのを我慢してあの〇センセーもびっくりな速さで帰路を走った。
向かう先は万事屋愛の巣♡。ラブホもいいかと思ったが、俺の匂いが好きな土方には俺の匂いが染み付いた布団に寝転がって包まれて欲しい、と思い、ラブホよりも長い帰路を選んだ。
幸い、明後日まで神楽と新八は万事屋に帰ってこない。
なによりこの時間も土方への焦らしプレイだ、と考えれば、坂田に少しは余裕が出来そうだ、とは浅はかな考えで。
万事屋はそんなことを考えているだろうが、同時に万事屋への焦らしプレイにもなっているんだざまあみやがれと考え、内心投げやり気味の若干性欲が限界突破しそうな土方は同じく若干性欲が限界突破しそうな坂田を腹の奥を疼かせながらほくそ笑んだ。
実際、坂田は鼻の下を伸ばしているが決して土方を見ない。見たら完全に限界突破してしまうからだ。
そして、互いに互いが今いかにえっちな心境になっているかを想像することで、余計に自分で自分の首を絞める結果となっているのは余裕のない二人にはわからない。
万事屋に着いてそうそう、嫌な汗を流すためお風呂へと土方を抱えて向おうとした。だが、ふいに袖を引っ張られ、つい、土方の顔を見てしまった。
焦らしに焦らされた土方の姿は坂田にとって魅力的でしかなく、もう媚薬みたいな魅惑的な色を発している。
着流しはあまり丁寧に着込んでいなかったため、肩からずり落ち土方の真っ赤に染められた肩を剥き出しにしていて、熱に浮かされ潤んだ目と、はあはあと熱い息を吐く食い縛られた口からは涎が微かに零れていて、いつもつりあげられた眉はもどかしげに顰められているのだ。
坂田の息子は暴れ狂ったが、パーン!することは無かった。坂田の決死の理性がそれを止めたのだ。
理性を焼き、どうにでもなれとヤケになった土方は凄かった。
「万事屋ァ、風呂なんていいから、さっさとテメェので逝かせろ」
「ま、待ってっ」
寝室の扉を開けた途端もう我慢できないと言わんばかりに襲う土方に、今度は坂田が待てと言う番だ。
姫抱きから抜け出した土方に腹の上に跨られ、カチャカチャとベルトが外される。
こんな積極的な土方は初めてだ。
「アァ?………前にヤッたのいつだと思ってんだ。どうせテメェも我慢の限界なんだろ」
土方は漢前な笑みを浮かべた。坂田の陰部の上でゆるゆると器用に腰を振り、互いの陰部を刺激する。そのやわい刺激に、坂田は歯を食いしばった。
確かに二人は焦らしプレイ以前に、土方が忙しいのがあったり、こちらが土方の非番のときに依頼が入ったりしてなかなか休暇が合わなかった。極めつけは、やっとの非番に二人で会っていたら、呼び出された時だ。あの時は迎えに来た山崎をどうしてやろうかと思った。
そんなこともありかれこれ一ヶ月ぐらい情事に及ぶ事が出来なかったわけで。互いに会ってしまえば理性崩壊必至だったのだ。特に巡回中の遭遇は本当に隔靴掻痒なもので。まるで恋しているように不自然な目線の逸らし方をする二人に、沖田と神楽は悪そうな笑みを浮かべていた。
かのポリネシアンセックスよりもポリネシアンしていた状態だったのだから、ここで待てと言う方が野暮というものだ。
「なァ、良いだろ?わかったらさっさと俺の中にチンコぶち込めや」
「っ!!ちょっ、ゴム!」
「要らねェ」
帯を解き、白い流水紋の着流しを坂田に見えるようわざと腰の後ろにはらう。
着流しは両腕に引っかかっているているだけの状態となり、土方の媚態が顕になっていた。坂田の眼前に惜しみなく晒される土方の陰茎はそそり立ち、とぷとぷと透明な汁が出ている。
何より、透明な液でてらてらと光沢を出している土方の後孔が、土方自身も今日の逢瀬に期待をしていたのだということを雄弁に語っている。坂田のズボンとパンツをとっぱらう。
既に臨戦態勢の坂田の陰茎を支え、そっと土方の後孔に充てると、そのまま土方は荒々しくそこに腰を下ろした。
「ッ!…ぅ♡ンッ!!♡♡♡、ァ、〜〜〜〜〜ッッ♡♡♡」
「ぁ、……ぐっ!!」
トコロテンのようにぴゅっ、と射精した土方は嬉しそうに口角を上げて上擦った声で控えめに喘ぐ。久しぶりの挿入に、土方の中は堪らないとぎゅうぎゅうキツく締め付け、土方の中の襞が坂田の陰茎にびっしりと纏わりついてきた。坂田は入れただけで射精しそうになったが、なんとか耐えて土方を見上げる。坂田はこれから己の身に訪れるであろう快楽を想像して身震いをした。
土方も絶頂と興奮のあまり武者震いのように足腰ががくがくと震えている。
土方はそのまま坂田の腹筋に手を置いて、前立腺を狙ってピストンを始めた。
「は、ァ♡よろずや、ん、ふっ♡♡!て、めぇも早く、出しやが、れ!♡♡!!♡♡♡」
「くっ、…出る!!」
「ぁ〜〜〜〜〜〜ッッッ♡♡♡♡!!!!!」
一度イッて絶頂しやすくなっていた土方は、坂田がイくと同時に二度目の射精をする。
土方は坂田を見つめながら、腰を坂田に擦り付けるようにして快感を慣らそうとしているが、だんだんとその動きが緩慢になり、へなへなと坂田の上へ倒れこもうとした。
まだそこまで時間が経っていないというのに、快楽で腰が抜けたか。
土方がこちらへ倒れる前に、体を起こした坂田は跨る土方の肩を押し、正常位の位置をとる。
奥が亀頭に刺激され、土方に一瞬にしてとてつもない快楽が襲う。堪えるような喘ぎ声に、つい笑みが溢れた。
「ん゙ぅっ♡♡♡!!!!!」
「ごめんな♡」
正常位で奥まで入ったまま、ピストンもせず覆い被さった坂田は互いの乳首をピッタリと密着させ、土方を抱きしめた。
土方は自分よりも少し重い体重と肉厚な筋肉に呼吸が息苦しくなり、なんだか落ち着かなかった。
中からも外からも圧迫感を感じる。
息苦しくなることで身体が変な風に強張り、中に入っている坂田を動かされてもいないのに意識して締め付けてしまう。
そこからさらにじんわりと快楽が広がっていき、土方の体を脱力させて、脳内をぼんやりとさせる。
「あっ……ぅ、ぁ♡……はぁっ♡」
断続的に、土方は小さく喘いだ。
なんで動いてくれないのか、動いて欲しい。激しく、それこそ、遊郭でしたような暴力的なセックスを。息もできなくなるくらいに、何も考えられなくしてほしい。
「よ、ろずやぁ♡たのむ、……か、らっ♡♡♡」
先の、煙と一緒に吐き出したはずの熱が、広がる。
しかし、坂田はそんな土方の思いを知ってか知らずか、動かなかった。
「土方とヤんの久しぶりだしよお、銀さん、甘々セックスしてえんだわ。」
坂田の顎から伝った汗が、土方に落ちる。
「銀さんのお願いも聞いてよ」
「ぁ、あ♡………♡♡」
時折坂田がピストンもせず、挿入した位置をゆるゆると横に動かして前立腺や結腸口を揺さぶる。土方はじわじわと迫り来る快楽に、心臓の拍動を速くし、坂田の陰茎をきゅんきゅんと締め付けた。
「よろず、やっ♡や、ぁ♡♡♡♡」
それで微かに土方の身体が揺れると、坂田と土方の乳首がこりこりと擦れ、敏感になった体にはそんな微弱な刺激も毒になる。坂田もその刺激から、密かに陰茎を硬くした。
「土方、俺の心臓の音に集中してみて」
「?♡♡ぁ♡♡♡」
ぼんやりとしている土方は、特に何も考えることなく、言われた通りに、自分の心臓近くに感じる坂田の心音を意識した。
とくん、
とくん、
とくん、
ゆるやかな心拍。
それが、自分の心音に移っていくのが分かる。
心拍が合わさり、強く感じる。
目を閉じれば、それだけが頭に響き、支配されている感覚に陥り、まるで全て坂田に包まれているようだった。
そして、耳を塞がれ、口の中を坂田の舌が、荒く掻き混ぜ蹂躙する。
視覚も、聴覚も、触覚も、味覚も、嗅覚も、全てが坂田に埋め尽くされる。
堕ちる。
骨抜きにされ、坂田に神経まで支配されるような感覚に汗がたら、と垂れる。土方は反射的に目を見開いて口を引き剥がし、口元を手で隠した。
目を瞑って土方の中の心地良さを堪能していた坂田は、目を開けて微笑む。
「だ、だめだっ゙♡♡♡♡お゙、かしく♡、な、るぅ゙♡♡♡♡♡」
「ん〜?ぐちゃぐちゃのどろどろにして~♡って言ったの、土方くんだよね」
意地の悪い笑みを浮かべた坂田は、先程のお返しにと、土方の耳元で、低く、甘く、囁く。
「それとさ、銀時って呼んでくれよ、」
「ひっ♡」
「 " 十四郎 " 」
「ッ♡♡♡」
脳が、揺さぶられたようだった。名前を呼ばれ、半ば脳イキのように土方は坂田を締め付ける。
土方の腹の上にいつのまにか出来ていたらしい粘度の高い液の水溜まりを腹に感じ、坂田はまじかよ、と思いながらふたたび耳を塞いで接吻をする。
長い執拗い接吻に、ばしばしと背中を叩いてくるが、その振動が余計に自身を苦しめることを理解した土方は抵抗をやめた。息を詰まらせたりふ、ふ、と荒い鼻息をしたりしている。
土方は早く動いて欲しいと思った。
「ん、♡よろずやぁぁ♡♡♡」
「ほら、違うでしょ。銀時だよ、ぎ、ん、と、き」
トびたくても、こんな快楽では生き地獄だ。
気持ちよすぎるのに、トべない。
微熱でトロトロに溶かされていくのを、ありありと感じる。
逃げようと身動ぎをするが、それすらも快楽となる。毒に侵されているようだった。
「ん、ふぅ゙♡…くぁ゙♡……ッ♡♡♡…ふ♡♡」
どもった喘ぎ声を聞きながら、坂田は土方の力が完全に抜けるのをじっくり待った。
接吻やらなにやらで精一杯になっている土方に分からないように、少しずつ陰茎を抜いていく。
土方の後孔の縁に雁が引っかかると、さすがに土方は気づいたのか、訝しげにこちらを見つめてきた。
「ぎんとき?」
銀時、と舌っ足らずに呼び、小首をかしげる土方はとてつもなく可愛かった。
名前も呼んでくれたし、そろそろご褒美あげないと。
「ぐちゃぐちゃにしてやるよ、マイハニー♡」
腹筋が緩んで動いていないうちに、一気に最奥に向け突く。
その瞬間はいやに静かで、時が止まったように感じた。土方が蕩けさせていた目を開き、ひゅ、と息を吸う。
ぐぽんっ♡
土方の腹の奥から、変な音が鳴る。
シーツを握る手に、ぎゅっと力が入るのが分かった。
土方の筋肉が強張り、足をぴんと伸ばし、首を擡げ、背中を仰け反らせる。枕にぐり、と土方の後頭部が更に押し付けられた。
口が大きく開き、そこからはたらたらと涎が垂れるのみ。
出るはずの声も、呼吸も、衝撃のあまりに失われる。
土方の尿道からぷしゃああああああ♡と透明な液体が吹き出した。尋常では無いほどに土方の中が畝り、坂田の陰茎を咥え込む。土方の視界は、チカチカと光が飛び散りフラッシュをたかれたようになった。
土方は何が起こっているのか、理解が追いつかず、頭にハテナを浮かべている。
「ふ、ぁっ───〜〜〜〜〜〜ッッ♡♡♡♡!!!?か…、ふ、ッ♡♡♡♡♡!!???!」
「あーららぁ、十四郎、潮吹いちゃったねえ」
「??ァ♡♡?」
土方は自分が今どうなっているのかを知らず、ただ快楽を受け止めているだけだ。
それを見ながら坂田はさらなる追い討ちをかけるように土方の腰をがっちり掴み、どちゅん♡どちゅん♡と一撃一撃が重いピストンをして結腸口を何度も貫く。土方の尻と、坂田の鼠径部が音を立ててぶつかる。
貫く度に、ぴゅ、と潮を勢いよく吹き出し、土方の後孔は奥へ奥へと雄を誘った。
「♡っぁ?ぎん、♡♡と、き♡!!だめっ、イ゙ッでっ、る゙から゙っァ゙♡、まっれ、とま゙っで!♡♡♡♡♡♡やっ、ぁ゙ア゙ぁ゙あ゙あ♡♡♡♡♡♡!!!!」
「ッ、待たねえよっ………!」
「あ、ぁぁ♡ああ゙あぁ♡♡♡♡はっ、も゙っ、くる゙しぃ♡♡♡♡♡」
息が止まれば、その分後で大きく息を吸うことになり、そしてそれに合わせて大きな喘ぎ声が出る。
鼻水やら涙やらを流しながら、幼子のようにいやいやと首を振って必死に懇願する土方にはもうプライドもなにも無かった。真選組副長という肩書きも、この姿を見たら裸足で逃げ出しそうなくらいだ。
土方のヘソ下に手を置き、ぐい、と押した。そして、押したままぐりぐりと揺らして結腸口辺りを刺激した。臍の横の筋肉が突っ張り、痙攣する。
「かっは…、ぐる゙じっ♡♡!!♡♡♡、あ゙♡ぎ、んっとき♡♡♡!!!…す、きっ♡、すきぃ!♡♡♡、」
「~~~っ、最高かよっ………!」
握ったシーツから手を離し、坂田の首後ろに手を回した。
土方は羞恥心を失い、好きだとうわ言のように無我夢中に言う。坂田は土方の滅多に見せない愛情表現に鼻血が出そうになるくらいに悶えた。
もはや数回絶頂し、絶頂の波から戻れずにいる土方にとって快楽は暴力味を帯びたものと化している。
しかし、堪らなく気持ちいい、それ以外頭に浮かばない。
苦しいのが気持ちいい、痛いのが気持ちいい、全てが坂田によって快楽へと書き換えられていく。
土方の中はもっともっとと激しく求め、坂田の陰茎に絡みついた。長い間の空白を、必死に埋めようとしているようだった。
「………しっかり受け取れよ、十四郎!」
「あ、ぁあ~~~~♡♡♡♡♡!!♡♡♡!」
陰茎はぴくぴくと痙攣し、土方の最奥に勢いよく精子を出した。それに合わせるようにして土方も潮を吹いた。
坂田はゆさゆさと軽く腰を振り、尿道に残った精子を余すことなく土方に出しきる。
「ん♡…あ…ぁあ…あ♡♡♡」
土方の体は絶頂の境目が曖昧になり、痙攣しながらしょろしょろと力無く潮を零す。緩急の付けられた坂田の攻めに翻弄された土方は幸福感の中、いつのまにか意識を手放していた。
土方が坂田によってプライドもレッテルも何もかも、その全てを剥がされ、ただの土方十四郎として坂田の元へ堕ちてきた。
「ほんっとに、最高………♡」
坂田は見世の時から持て余していた欲求が満たされたことに、ほう、と湯気が出そうなくらい熱い、恍惚の息を吐いた。
二人のはあはあという荒い息だけが部屋に響く。
坂田は頬を緩めて余韻に浸っていると、無防備な土方の顔が目に入り、無性になにかしたい衝動に駆られた。
頬を掴んで、土方の顔をべろりと舐め上げ、まるでマーキングのように汗と涙と涎とでめちゃくちゃなそこに自分の涎も混ぜ込んだ。
土方はびくりと反応するが、目を開けない。
未だ結腸に嵌っている雁をどうしようかと抜こうとすると、あ、あ、と無意識に声を上げる土方が面白くて、結腸口に雁を引っ掛けたまま、緩い動きで結腸を揺さぶった。
ふわりとした射精感が出てきて、それに従って一人射精した後、一息に土方の中から抜いた。
栓を失った土方の穴からはこぽこぽと坂田の放った精液が溢れ出ている。
坂田は火照った熱が落ち着くと、よっこらせと立ち上がり、お風呂を沸かしに行った。お風呂が沸くのを待つ間、とりあえずびしょびしょの土方を拭き、ガワだけ綺麗になった土方を事務室のソファへ寝かす。
土方の汗で湿った髪をひと撫ですると、布団に敷いた防水シートを剥がし、洗面所へ持っていく。
ここには坂田と土方の前準備がやけに良い事にツッコミを入れる者は居ない。
お風呂が沸いた音がしたので、坂田は気絶しノびていている所為で普段よりも重く感じる土方を抱えて、鼻歌交じりに風呂へ向かった。