안돼라고 말하지 않았다면 '性的행위 OK?'. 노출이 많은 옷을 입은 사람에게는 만져도 되나? 알아두면 좋을 소중한 '性的同意'의 이야

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イヤと言わなかったら「性的行為OK？」　露出の多い服の人には触ってもいい？　知っておくべき大切な「性的同意」の話菊地香・毎日新聞医療プレミア編集部

2024年5月14日

　人気お笑いコンビ「ダウンタウン」の松本人志さんが女性に性的行為を強要したと「週刊文春」が報じるなど、今年も性加害や性暴力をめぐる報道が絶えない。基本的に、一方の同意がないまま性的行為が行われるからだ。

　昨年に改正された刑法でも性的同意の重要性が示されたのに、現実には相手から明確な同意を取ったり、逆に誘いを断ったりするのは容易ではない。自らが加害者にならず、被害者も生まないためにするのは当然として、身体的、精神的、社会的に良好な状態（ウェルビーイング）を目指すには、知っておくべき最低限のことがある。

4割超が「自信がない」「分かっていない」

①友人が自宅にあがってきたら、性的行為をしても問題ない

②胸元が開いたシャツを着ている人は、ちょっとぐらい胸を触っても嫌がらない

③妻（夫）が相手なら、同意を取らなくてもセックスしてよい

④パートナーとは1週間前にキスをしたので、今週もできるはずだ

⑤バーで知り合った人が酔ってしなだれかかってきたら、ホテルに連れて行って性交しても大丈夫

⑥女性器が濡れていたり、男性器が勃起していたりしたら、同意している証拠になる

　YESかNOか。すべて「性的同意」に関するクイズだ。

　答えは後述するとして、この「性的同意」という言葉、耳慣れない人も多いかもしれない。

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　でも、ただの「同意」なら多くの人が慣れ親しんでいる。「他人の意見や求めなどに対して賛成すること」で、社会生活を送っている以上、意識しているとしていないとに関わらず、あらゆる場面で繰り返し実践しているものだからだ。大東学園高や一橋大などで長年、性教育に携わってきた“人間と性”教育研究協議会の水野哲夫代表幹事は、こう話す。

“人間と性”教育研究協議会代表幹事の水野哲夫さん＝提供写真

　「たとえば友達を食事に誘う時、友達が辛いものが苦手だと言ったら、強引にエスニック料理店に行きますか？　どの店にするかを話し合うのが普通ですよね。それが同意を得るという行為で、日ごろ無数にやってきているはずなのに、『性的同意』となると、よく分からなくなってしまう。相手から同意を得てはじめて、お互いの考えを一致（＝合意）させることができるのです」

　昨年に国際協力NGOのジョイセフが、全国の15～29歳5800人に実施したインターネット調査「性と恋愛2023」にも、その傾向が表れている。

　性的同意について「絶対に大事だと思う」と答えた人は9割を超えたのに、「性的同意を得ているつもりだが、本当に得られているか自信がない」と答えた人は41・5％、「具体的に性的同意とはどういうものなのか、正直分かっていない」と答えた人は42％にのぼった。

　キスやセックスなどの性的な行為に対して、お互いの意思をYES/NOで確認すること――。ジョイセフは、2月に発売した「SRHR NOTE」（SRHR＝性と生殖に関する健康と権利）で、性的同意をこう定義している。ノートを監修した産婦人科専門医の稲葉可奈子さんに尋ねた。

産婦人科医の稲葉可奈子さん＝提供写真

国際協力NGOジョイセフが発行する「SRHR NOTE」＝提供写真

　「性的同意で大切なのは、お互いが性的行為に対して嫌がっていないことはもちろん、その行為を『したい』もしくは『してもよい』と思っているかどうかです。性的行為にはセックスやキスだけでなく、ハグやボディタッチ、プライベートな話題をすることなども含まれています。それらに対して『明確なYES』が示された場合を除いてはNOとみなすのが基本的な考え方になります」

　とはいえ、気持ちは白黒で割り切れないし、YESとNOの間にはグラデーションがあるもの。「そこを話し合い、どういう行為ならいいのかを考えることが必要で、結局、コミュニケーションの問題に尽きる」と稲葉さんは言うのだ。

コロナ禍に家事を手伝う対価でセックスを求める夫

　正論だし、もっともだ、と思う。だが、現実はコミュニケーションそのものが難しかったり、機能不全に陥っていたりするケースはある。初めて会った相手や、知り合って間もない相手より、むしろ付き合いの長いパートナーや配偶者の方が性的同意を得るハードルは高いかもしれない。そのココロは「何を今さら」「聞かなくても分かる」「するのは当たり前」など……。

　避妊の選択肢を増やすなど、性の健康に関わる活動を行う「＃なんでないのプロジェクト」代表で「東大で性教育を学ぶゼミ」講師の福田和子さんは、コロナ禍に行った緊急アンケートの結果にショックを受けた。2020年5月にNPO法人ピルコンと「新型コロナウイルス感染症の影響下における、意図しない妊娠の不安と緊急避妊薬」と題したインターネット調査を実施したところ（回答者1545人）、パートナーのストレスや経済的困難によって望まない性的行為が引き起こされていることを実感したからだ。

#なんでないのプロジェクト代表の福田和子さん＝提供写真

　「『コロナになって在宅の頻度が増えた夫からセックスを求められて困っている』と訴える女性たちがいたのです。中でも、家事を手伝うことなどで、よりセックスへの無言の圧力を高める夫がいると知り、暗澹（あんたん）たる気持ちになりました」（福田さん）

　福田さんが「暗澹たる気持ち」になったのには理由がある。

　公衆衛生学を学ぶために19年から留学したスウェーデンでは「相互の積極的なYESのない性交や、その同等行為はすべてレイプ」とみなす法律が成立しており、行為の前に同意を得る文化が根付いていたからだ。多様性にも富んでいて、出産後のセックスレスに悩んでいる夫婦が実家に相談に行くドラマや、おじいちゃんとおばあちゃんが幸せそうにベッドインするCMが日常の中にあった。

　「それに引き換え、日本では性の話題がオープンになりにくく、性的同意がないがしろにされていると感じたのです。コミュニケーションを丁寧に積み重ねた方が暴力を防ぐことができるのはもとより、よりハッピーな関係を築くこともできるのに理解が浸透していない、と」（同）

　実際に、女性は男性より我慢している傾向が強い。ジョイセフが21年に15～64歳の5338人を対象にしたアンケートでは、「気が乗らないのに性交渉に応じたことがある」と答えた女性（15～29歳＝46・5％/30～64歳＝63・5%）は、男性（15～29歳＝26・4％/30～64歳＝39・8％）に比べて格段に多かった。

　「今、この行為はNOだけど、あなたが嫌いなわけじゃない」

　「同意をしていないのに、されてしまった」

　「同意を求められなかったので、NOと言えなかった」

　「同意を求められたけれど、NOと言いにくかった」

　上記のアンケート結果から推測されるのは、こんなシチュエーションだろうか。

　性的同意を求められた時、心からYESと言えるならいいけれど、難しいのはNOの場合。いい知恵はないものか。

　「夫婦の場合、『いちいち確認するの？』と驚かれますが、求められた方が少しでも違和感を覚えたり、嫌だと思ったりしたら、相手に言葉で伝えるしか解決法はありません。いきなり言葉にするのが難しければ、ベッドに性的同意に関する本を置いておくとか、SNSのスタンプなどでそれとなく気持ちを伝えてみるとか、何らかの意思表示することです」（水野さん）

　また、ある性的行為に対して、はじめにYESと言ったからといって、行為が終わるまでずっとYESが続くとは限らない。30分前はYESだったけれど、30分たってもYESとは限らない。昨日はYESだったけれど、今日もYESとは限らない――。

　「行為の途中に気分が変わったら、雰囲気を壊すかもしれないなどと思わず、『したくない』とか『やめてほしい』と言っていいんです。言葉にしにくければ、右手を挙げるとかサインを決めておくのもお勧めです。歯医者さんで治療を受ける際、『痛い時は右手を挙げて』と言われますよね。あの感じです」（同）

　稲葉さんは大前提として、「NO＝嫌い」ではないことを理解してほしいと訴える。

　「パートナー同士の場合、同意を求められた方は、まず相手の『したい気持ち』自体を否定せず、受け止めてあげてください。その上で、ただNOと言うだけではなく、『その行為は今はしたくないけれど、あなたを嫌いなわけじゃない』と伝えるのがいい。性的な行為に対して今この瞬間はNOなのであって、相手の人格や存在そのものを否定しているわけではないからです。NOと言われた方も嫌われているわけではないので、傷つく必要はありません」

　実際、福田さんはNOを伝えた相手と友人関係が続いている。

　23歳の頃、ヨーロッパ出身の男性から性的な誘いを受けた。その際、男性は「嫌なら嫌と言ってほしい。断られるのは悲しいけれど、その気持ちをきちんと処理するのが自分の責任。我慢されたり、うそを言われたりする方が嫌だ」と丁寧に前置きをしてくれた。

　おかげで、気が乗らなかった福田さんは生まれて初めて素直にNOを伝えることができた気がしたという。むしろその言葉に感激し、彼に対する信頼度は一気にアップしたそうだ。

　「逆にそれまで、いかにNOを言いにくい環境にいたのかということに気付かされました。相手に嫌われてはいけないとか、相手を傷つけてはいけないとか、こうあるべきだとか、見えない規範に縛られ、期待に応えるべきだと思っていた。性的同意が必要な場面では、いかに言いやすい環境が整っているかが重要。同意を得る側の配慮が求められています」（福田さん）

同意を取る側の最低限の配慮とは

　では、具体的に「配慮」とは何か。ポイントは主に以下の3点に集約される。

①非強制性

　同意を求められた側がNOと言っても、身の危険を感じない環境になっていることが必要。危険を感じる状態でYESと言っても、それは同意をしたことにはならないため、同意を取る側が「断っても不利益にはならない」というメッセージを示すことが必要になる。

②対等性

　上司と部下、先輩と後輩など明らかな上下関係がある場合、下の立場の者はNOを言いにくい。上の立場の人は、下の立場の人に対して十分な配慮が必要になる。①と同様に「断っても不利益にならない」というメッセージを示すこと。

③非継続性

　たとえばキスをしたからといって、セックスにも同意しているわけではない。また、今回は同意したからといって、次回も同意するわけではない。体調や気分によっても変わる可能性があるため、その都度、一つ一つの行為に同意が必要。

　だが、長い付き合いになるほど難しいのが、②の対等性だという。先に挙げた「家事を手伝う対価として妻にセックスを求める夫」に当てはめると分かりやすい。

　「夫の『手伝う』という発想そのものが対等ではないですよね。『手伝ってあげる』ではなく、たとえば昼食だけでも『自分の分は自分で作る』と伝えればいい。それが相手を尊重することですし、何より楽です。その結果、お互いに自由になり、言いたいことを言いやすくなると思います。そうした日々の積み重ねの先に『性的同意』や合意があるのですから」（水野さん）

　ところで、昨年から耳目を集めているのが、松本人志さんの問題である。女性に性的行為を強要したという「週刊文春」報道で名誉を棄損されたとして、版元の文芸春秋社と「週刊文春」編集長に損害賠償などを求めているが、そもそも①～③のような最低限の「配慮」はなされていたのだろうか。

　昨年7月13日には改正刑法が施行された。強制性交等罪と準強制性交等罪が統合されて不同意性交等罪に、強制わいせつ罪と準強制わいせつ罪も統合されて不同意わいせつ罪となり、「性的同意」の重要性が打ち出された。加えて、同意しない意思を形成したり表明したりすることなどが困難になり得る原因として、「暴行・脅迫」のほかに「恐怖や驚がく」「経済的・社会的地位に基づく影響力」など8項目が具体的に示された。

　＜「イヤ」と思うこと、「イヤ」と言うこと、または、「イヤ」を貫くことが難しい状況で、性的な行為がされた場合、それは、「不同意わいせつ罪」や「不同意性交等罪」という犯罪の被害です！＞

　法務省は、大学生向けのリーフレットでこう訴える。

　また、性的行為に同意できるとみなされる「性交同意年齢」が13歳から16歳に引き上げられたのも大きな変化だ。1907（明治40）年の制定から116年かかって、ようやく国際標準に追いついた。これによって16歳未満の子どもとの性交等は、同意があったとしても処罰の対象になる（ただし、相手が13歳以上16歳未満では、行為者が5歳以上年長の場合）。

刑法改正案などを全会一致で可決した衆院本会議＝国会内で2023年5月30日、竹内幹撮影

　このように性的同意の有無は犯罪と結びついているため、「どこまでがセーフなのか」という角度から関心を持つ人はいる。だが、水野さんは「犯罪と認定されなければいいという問題ではない」と語気を強める。

　「同意なく、望まぬ性的行為をされた人は、何を失うのだろうと考えてみてほしい。自分らしさ、自由、誇り、健康、自己肯定感……。挙げたらキリがありません。『魂の殺人』という表現もありますが、それでは表しきれないほど、多くの可能性を失うことになるのです」（水野さん）

　3月に世界保健機関（WHO）が発表した概要報告書によると、世界では女性の約3人に1人が一生のうちに、身体的・性的に近しいパートナーからの暴力か、パートナー以外からの性的暴力を受けていると推計している。そして、その暴力は女性の身体的、精神的、性的、出産に関する健康に悪影響を及ぼすことがある、と。

　もちろん悪影響は女性の被害者に限った話ではない。たとえば旧ジャニーズ事務所の問題が示すように性別に関わりなく、男性の被害者も苦しみを負うことは、当事者らの想像を絶する努力によって可視化されている。

性的同意は健康と「楽しい、気持ちいい」につながる

　ユネスコが策定した国際的な性教育の指針である「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」では15～18歳以上の学習目標として「健康で、よろこびのある、パートナーとの合意したうえでの性的行動のために同意は不可欠である」としている。

　冒頭で水野さんも述べた通り、相手の同意があって初めて、より相互性に満ちた「合意」が生まれるということ。逆に、同意も合意もない性的行為は健康を損なう恐れがある。

　たとえば、イヤイヤながらセックスをしている更年期世代の女性は、セックスをしていない女性に比べ、体調が悪いという調査結果がある。45～65歳の女性157人に更年期度（簡略更年期指数SMI）をチェックし、かつ性生活についても尋ねたところ、セックスはしていても内容に不満や不安がある女性は、していない女性よりも、SMI値が優位に高いという結果が出た。

　「セックスレスの女性は不幸で不健康」と同情を買いがちだったのに、実はイヤイヤながらの場合、「している女性」の方が肩こりや発汗など、更年期特有の不定愁訴を訴える割合が高かったのだ（2010年、東邦大医学部「中高年女性の不定愁訴と性生活に関する検討」）。

　「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」の日本語訳を担当した一人である福田さんは、性的同意を理解するためのキーワードとして「規範」と「期待」を挙げる。

　規範とは、たとえば「夫や彼氏ならセックスを求めるべき」だという価値観。期待とは、たとえば「妻や彼女ならセックスの求めに応じてほしい」という価値観だ。

　「規範や期待があると、それとズレた時にモヤモヤしたり、言いたいことが言いにくくなったりするものです。そこは規範や期待に基づいてパートナーとの関係性を作るのではなく、ある性的な行為についていいのか、イヤなのか、その都度、言葉にしてゆくのが大事で、そうしながら落としどころを探る“旅”が性的同意を取ることだと思うのです。『取らなかったら怖い』ではなく、『取ったら楽しい、気持ちいい』と考えてほしい」（福田さん）

　最後に、冒頭のクイズについて。

　「一つでもYESがあった人は、自分が性的同意や性暴力について大きな勘違いをしていることを自覚してください。性に関する正確で科学的な認識が欠落していれば、その人の学歴や社会的地位、さらには性格や人格にかかわらず、他者を傷つける可能性があります」（水野さん）

特記のない写真はゲッティ

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菊地香

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毎日新聞医療プレミア編集部

きくち・かおる　1992年入社。新雑誌編集部、サンデー毎日編集部などを経て、2023年8月から現職。公益財団法人「性の健康医学財団」が認定するカウンセラーの資格を持つ。