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ファミリーマートとパナソニックなどは2日、人工知能(AI)を使った顔認証による決済や、自動で価格を変更できる電子値札などの省力化技術を用いた実験店舗を横浜市にオープンし、報道陣に公開した。セブン-イレブン・ジャパンやローソンなど他のコンビニエンスストア大手でも同様の試みが始まっており、人手不足解消の切り札になるか注目される。【藤渕志保】
ファミマの実験店舗は、パナソニックグループの施設隣接地にあり、一般客が利用できる通常の店舗スペースに加え、パナソニックグループの社員だけが利用できる実験スペースを設けた。実験スペースでは、社員は事前に専用アプリで氏名や顔の画像、クレジットカード情報などを登録。入り口で顔認証による本人確認を行う。店内の精算用の専用台に商品をまとめて置くと、天井などに設置した2台のカメラが商品と利用者を識別し、代金を自動計算。登録済みのクレジットカードで自動決済する。利用者は手ぶらで買い物ができ、将来の無人営業の可能性を検証する。午前10時までに予約すると正午ごろに職場に弁当などを配達する「モバイルオーダー」の実証実験も行う。
一般利用者向けのスペースでは、商品陳列棚に約3000枚のディスプレー付き電子値札を導入。割引時などに自動で価格表示を変えられるほか、「新商品」の告知もできる。また天井などに80台以上のカメラやセンサーを設置し、利用客の動きや混雑具合、商品の陳列状況などを把握。品不足になると、店員が身につけた端末に情報を自動通知し、作業効率を上げる。
取材に応じたファミマの沢田貴司社長は「人手不足などの問題が注目されている。技術革新を待ったなしで進める。省力化により、これまでより狭いスペースでも出店できるようになる」と述べ、人手不足解消と出店ニーズの拡大に期待を示した。
他社も深刻な人手不足を受け、ITを活用して省力化を進めている。
セブン-イレブンは昨年12月、東京都内でNECの顔認証技術を使った無人レジの実証実験を始めた。省力化により店舗の採算性を改善するとともに、企業の施設内などへの出店の可能性を探る。店舗の生産性を上げるため、3月には新店舗を中心に、陳列しやすい新型棚など、店員の作業負担を軽くする新設備を10種導入した。
ローソンも7月をめどに、深夜の時間帯に無人営業する実証実験を始める計画だ。実験開始当初は店員が待機するが、一定期間後に完全無人化する。10月までに、買い物客が自分で商品バーコードを読み取って会計する「セルフレジ」を全店で導入する。
省力化のためのデジタル機器の設置で、集まる情報量も増えるため、データの有効活用が課題となる。情報通信総合研究所の手嶋彩子主任研究員は「コスト削減にとどまらず、お客に合った商品提案などのマーケティングにつなげていけるかが鍵となる」と指摘する。
■KeyWord
コンビニ人手不足
コンビニエンスストア業界では、低賃金や多岐にわたる業務、早朝や深夜帯の勤務が敬遠され、人手不足が深刻化している。
調査会社リクルートジョブズによると、2月の3大都市圏(首都圏、関西、東海)のコンビニスタッフの平均時給は975円(前年同月比25円増)で、全60職種平均の1046円を大きく下回った。
一方で、人件費はコンビニ本部ではなく各フランチャイズチェーン(FC)店が負担する仕組みとなっているため、賃上げはFC店の経営を圧迫する。現場では外国人店員が増え、接客教育が課題となるほか、経費節減のため自ら長時間勤務するオーナーの過労などから、24時間営業の見直しを求める声が出ている。