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● イソップ寓話41. 猿の網打ち(원숭이의 투망질)
漁師が居ました。船に乗って川へ魚を取りに行きました。良いお天気です。川は青い空を映してさらさらと美しく流れていました。
「何時も、此処には魚が沢山いるから、今日もここへ 網を投げて見よう。」漁師は 網を大きく広げてざぶんと、川の中へ投げ込みました。
「よいしょ、えいさ、よいしょ。」と、網を引き上げました。みると、あみのなかに 大きな魚や、 小さな魚がぴちぴちと、一杯 跳ねています。
漁師は喜びました。にこにこし乍ら、幾度も網を投げて、魚を沢山取りました。 その内にお腹が空いて来ました。
「もう、お昼頃だろう。丘へ上がってお弁当を食べよう。」漁師は船の中に網を置いて、お弁当を持って、船から上がって行きました。
川岸の 木の上に森から出て来た猿が居ました。猿はさっきから漁師の魚取りをじっと見ていました。「面白そうだな。僕も一度魚取りをして見たいなあ。」
猿は漁師がいなくなったので、木の上から するすると滑り降りて来ました。船の中へ入りました。
「よし、この網で魚を取ってやろう。面白 いぞ。」網を掴んで立ち上がりました。けれども、初めて網を持ったので、どうしたら良いのか分かりません。
網が手や足に絡まって動け無くなりました。「こりゃ大変だ。網さん離れろ。」漸く網が離れました。
「此で大丈夫。今度はこの網を川の中へ投げ込めば、魚が 一杯取れるんだ。 どれ、 遣って見よう。」
猿は網を担いで、力一杯頭の上で振り回しました。すると、体が駒の様にぐるぐると 回って止まりません。猿は船の中にひっくり返りました。
「わあ、痛い、痛い。今度は気を付けてやるぞ。」猿はもう一度頭の上で、網を振り回しました。そして、川へ投げ込みました。すると、網に引っ張られて猿は網と一緒に川の中へ飛び込んで仕舞いました。
● イソップ寓話42. 驢馬ときりぎりす (당나귀와 배짱이)
「きりぎりすさんの声は 綺麗だなあ・・。」 驢馬は 草むらで鳴いているきりぎりすの 声を 聞いて、すっかり羨ましく成りました。
「きりぎりすさん。貴方の 声は本当に素晴らしいですね。一体何を食べれば、そんなに良い声になれるのですか。 教えて下さい。」
驢馬は何とかして 自分もきりぎりすの様な 声に成りたいと思いました。
「はい、私達は毎日草の露を吸っているだけです。」「なあんだ、そんな 簡単な事なのか・・・。」
驢馬は 早速その日から 毎日毎日、お腹の 空くのも我慢して、草の露だけを吸って 暮らしました。
所が、驢馬は段々やせ 細って到頭死んでしまいました。
● イソップ寓話43. 井戸に降りた狐 (우물에 내려온 여우)
或晩、狐が散歩にに出ました。森も、山も良い月夜です。谷川の水はお月様に 照らされて、銀の 帯の様に光っていました。
「お月様の 国へ 一度行ってみたいな。」
狐はそう思い乍ら山を降りて行くと、井戸がありました。井戸の水にお月様が映っています。
狐は井戸の縁につっ立って、井戸の底に映ったお月様を眺めていました。「真ん丸くて 綺麗な お 月様だな。 手に取って 見よう。」狐は 釣瓶に乗って、ざぶんと 井戸の底へ 下りました。
水は揺れて、映っていた 丸い お月様は こなごなに崩れました。狐は がっかりしました。「何だ、こんな事なら お山に登ったお 月様を見ていた方が良かった。」狐は 井戸の外へ出ようと しました。 けれども、綱を登る事が出来ません。
「困ったなあ、誰か来てくれえ。おうい、 おうい。」と、井戸の底で鳴き声を出して、呼んでいました。 其処へ 狼が来ました。何時も山の者を虐めている 悪い 狼です。狐は 狼を凝らしめてやろうと思いました。
「狼くん、井戸の水は 美味しいぞ。飲みに来ないか。」「よし来た。」
狼は井戸の外に出ていた釣瓶に、飛び乗りました。釣瓶は勢い良く井戸の底へ降りました。
その拍子に反対側の釣瓶に 掴まって いた 狐は、するすると 上がって井戸の外へ 飛び出しました。「狼くん、さようなら。」 狐はそう言って、月夜の山へ帰って行きました。
● イソップ寓話44. お月様の着物 (달님의 옷)
お月様が 散歩をし乍ら下を見ると、女の子が遊んでいました。お月様はその子達を見て、「私も、あの子達の様に着物が着て見たい。着物が欲しい。」と思いました。そこで、二人に呼び掛けました。
「今晩は。貴方達の着物はとても綺麗ですね。私にも縫って下さいな。」女の子達はお月様を見上げてにこにこしました。
「ええ、拵えて上げましょう。」と、 一人の子が言いました。「あら、でも駄目だわ、出来ないわ。」 と、 もう ひ一人の子が言いました。「おや、どうして。」お月様は 尋ねました。
「だって、お月様は細い三日月様になったり、真ん丸になったり、何時も大きさが変わっているんですもの。」 と、その子は答えました。
● イソップ寓話45. お化けの林檎 (도깨비 사과)
叔父さんが散歩に行きました。何処を見ても良いお天気です。暖かい風がそよそよ。
あっちにも、此方にも花が一杯咲いてい て、小鳥の声も聞こえます。
「春の野原は気持ちが良いな。賑やかな町と違って、空気がとても美味しいぞ。」叔父さんは深呼吸をしながら、のんびりとして野原の道を歩いて行きました。
すると、道の真ん中に、林檎が一つ落ちて いました。とても美味しそうな林檎です。 「はてな、誰も通らない道に林檎が落ちて いる。それに、この辺には林檎の木はないし、 これは変だぞ。誰かが私を騙そうとして、悪戯に置いたのかな。」
叔父さんは不思議に思って、林檎を踏み付けて見ました。すると、林檎ががたがたと 揺れました。 風船玉の様に大きくぷくんと膨れました。叔父さんは 驚きました。慌てて飛び下がりまし た。
「此奴はお化け林檎だぞ。林檎なんかに負けて堪るものか。」叔父さんは大急ぎで棒を探しました。林の中に棒が落ちていました。棒を確り握って走って来ました。林檎を睨み付けて 怒鳴りました。
「このお化け林檎め。引っ込め、えい、えい。」棒を振り上げて、力一杯林檎を叩き 続けました。林檎は叩かれる度に、体を揺すぶって大きくなりました。
むくむく、むくり。むくむく、むくり。叔父さんは腰を抜かす程吃驚しました。 もう 夢中です。「お前何かに負けるものか。えい、えい、 えい。」 目を吊り上げてめちゃくちゃに叩き続ける叔父さんの叫び声が、静かな道に高く響きました。
到頭林檎は道一杯に大きく広がってっ て、 叔父さんを見下ろしました。叔父さんは呆れました。疲れきりました。 林檎の 前にぺたりっと尻餅を搗ました。
「その時、神様が煙の様に静かに現れました。そして、優しくおっしゃいました。
「もしもし、それは怒りん坊の林檎だよ。ふんだり叩いたりすると、尚怒るよ。知らん 顔をして通り過ぎる事だよ。」
「はい。もう 相手にしません。」「それがいい。突っかかって行くと、 益々怒っ て、しまいには どうにもならなくなるからね…。」神様は 笑って消えました。
叔父さんは林檎の横をそっと通りました。 すると、林檎は小さく縮み始めました。
● イソップ寓話46. 法螺吹き選手(허풍선이 선수)
或町に、嘘ばかり吐いているので誰からも相手にされない、法螺吹き選手と言う渾名の運動選手が居りました。
或時、法螺吹き選手は運動の試合の為に遠い町へ出掛けました。暫くして帰って来ると、早速町の人達に自慢話を始めました。
「オリンピックの選手何か、大した事は無いね。誰一人私に勝てる者は居無かったもの。 私は 走れば風の様に早く、幅跳びでは背中に翼の有る様に軽々と跳んで見せたよ。嘘だと思ううなら、あの町の人に聞いてご覧。」
その時、話を聞いていた町の人が言いました。「何もそんな遠い町の人に聞か無くても、 今直ぐ此処で遣って見せてくれれば、 本当か嘘か分るよ。」
法螺吹き選手は一言 も返事が出来ずに、 こそこそと逃げ出して仕舞いました。
● イソップ寓話47. 鷲と烏 (독수리와 까마귀)
烏が 居ました。木の枝に留まって、日向 ぼっこをしていました。枝の下には青い牧場が遠くまで広がっていて、沢山の羊達が鬼ごっこをして遊んでいました。
烏は羊達を見下ろし乍ら独り言を言いました。「良い お天気だなあ。牧場も羊もお日様に照らされて、絵に描いた様に綺麗だな。」
烏はうっとりとして景色を見ていると、 行き成りざざざざっと激しい風の音が耳の側を通りました。「うわあ、何だろう。」
烏が首を縮めて居ると、一羽の大きな鷲が空から舞降りて来たのでした。大鷲は見る間に、牧場の子羊を一匹掴み上げて、空へ飛び上がって行きました。
子羊は泣いて叫びました。「お母さん、助けてえ。」その声が 段々空の上へ小さく成りま した。烏は見ていて、感心しました。
「あんなに大きな羊を攫(さら)って行けば、 何時までも食べ物に困ら無いだろうなあ。ああ、羨ましいなあ。」
烏は自分も子羊を攫いたくなって来ました。「大鷲も鳥なら自分も鳥だ。よし、 攫って逃げよう。」
烏は木の枝から、勢い良く飛び上がりま した。「どの羊を攫おうかな。」牧場の上を飛び乍ら、太った羊を見付けました。「美味しそうだ、あれに決めよう。」
烏は羊の背中に飛び降りました。力一杯掴んて引っ張りました。けれども、羊は重くて動きません。烏は慌てました。もう一度 羊のふさふさとした毛の中へ、深く足を入れました。
「えいさ、えいさ。」と、引っ張りました。やはり駄目です。羊は重くて持ち上がりません。慌てていると、羊飼の叔父さん 達が走って来ました。「この烏め、何をするのだ。」
叔父さん達の怒鳴り声に、烏は逃げ様と焦りました。けれども、足が羊の毛の中に 引っかかって抜く事が出来ません。烏は捕まって連れて行かました。
● イソップ寓話48 馬と驢馬 (말과 당나귀)
馬と驢馬が重い荷物を沢山背中に背負って、ご主人と旅に出ました。 驢馬は 暑さと疲れですっかり弱って仕舞いました。
「馬さん、お願いです。私の荷物を少しだけ背負って下さいな。」でも、馬の頼みを聞こうとはしませんでした。
可哀想に驢馬はやがてカ尽きて倒れました。ご 主人は 驢馬の荷物を全部馬の背中に積み変えました。
「ああ、こんな事になるのなら、あの時驢馬の頼みを聞いて、少しでも荷物を背負って遣るんだっ た。」
馬は 後悔しましたがもう間に合いません。 これから先重い荷物を全部一人で運ばなければ成ら無くなって仕舞いました。
● イソップ寓話49. 絵に描いたライオン (그림의 사자)
大層 勇敢な 若者がいました。 狩りが大好きで馬に乗り、槍を持って毎日獣のを追って、野や山を駆け回って居ました。
所が、若者のお父さんは臆病な年寄りでした。息子が狩りに出る度に、「馬からおちて怪我をしはしないかしら、獣のに噛まれはしないかしら。」とはらはらするのでした。
或時、乱暴なライオンが出て野原を通る人が幾人も襲われました。そこで、狩りの上手い勇敢な人達で、このライオンを退治する事になりました。
「私こそこの槍で一突きにしてのやるぞ。」若者はその日を楽しみに勇み立っていました。お父さんはその話を聞いた夜、 息子がライオンと戦って、噛み殺される夢を見ました。
「大変だ。あんな 恐ろしい事が本当に起こったらどうしよう。」心配したお父さんは大勢の人を使って 、大 急ぎで空まで届く程高く石を積み、その上に家を建てました。
そして、「可愛い息子よ、どうか私の言う 事を聞いておくれ。」そう言って、無理矢理その家に息子を入れて仕舞いました。そして、大勢番人をつけて見張らせました。
その家はとても立派で綺麗でした。壁物には色々な動物の絵が描いてありました。この絵を見れば息子も狩りに行った積もりになっ て、慰められるだろうと思ったからです。
けれど、息子は却って狩りの事を思って、
辛くてなりません。ライオンの絵が憎らしくなりました。「やい、この悪者め。」 と、絵のライオンを睨み付けました。
「俺がこんな所へ押し込められているのはお前の所為だ。お前何かが居るから、お父さんが詰まらない夢を見て、本当にするのだ。よしお前の目を潰してやろう。」
息子は手の指で勢い良く壁のライオ ンの目を突き刺しました。途端に 息子は、「あ、 痛たっ。」と、叫んで踞りました。壁が破れて大きな棘が息子の爪の間に突き刺さったのです。
物音や叫び声を聞き付けて人々がどうしたのかと駆け付けました。棘は抜き取りました。けれど、黴菌が体中に回って、息子は 高い熱を出しまし た。
早速医者が呼ばれて来て手当てをしました。でも、少しも熱は下がりません。可哀想に息子は到頭死んで仕舞いました。
「何と言う事だ。ライオンに殺されない様にとこの家を作ったのに、その 壁の絵に
殺されてしまうとは・・・。」お父さんはそう言って嘆きました。
「命を助けようとして、返って詰まらない 死に方をさせて仕舞いました。こんな事になるのだったら、ライオン退治に行かせて 勇ましく戦わせてやれば良かったと思います。」お母さんも泣きながら言いました。
● イソップ寓話50. 二匹の山羊 (두 마리의 염소)
「退いてよ。僕が先に渡り始めたんだから。」「違うよ。渡り始めたのは僕が先だったよ。」深い 谷川の一本橋で、二匹の山羊が出会いましたか。二匹はお互いに相手を退かせ様として喧嘩を始めました。
「退けったら退けよ。」ぐんぐん、頭で押し合う度に橋はぐらぐら揺れます。一寸でも足を滑らせたら、下は深い谷底です。落ちたら命はありません。
「こんな所で喧嘩をして 落っこちたら 大変だ。ねえ、君、僕がしゃがむから、僕を乗り越えて先に渡ると良いよ。」
一匹の 山羊が言いました。こうして、二匹の山羊は何方も後戻りしないで、無事に橋を渡りました。