刑務所で起きた奇跡
刑務所では名前を呼ばないで番号で呼ぶのですが、そのときの先生の番号が五九六番でした。その番号は「オグルハダ(無念だ)」という言葉のように聞こえたりしました。先生は既決囚の部屋に入るようになったのですが、その部屋には一人の死刑囚がいました。その人は人民軍の高級将校で、日帝時代に日本の歩兵学校と士官学校を出た軍人で、解放後、人民軍司令官の部下となった人でした。彼はそのような立場にいながら、北韓の軍の機密を南韓に流したという罪名で、死刑宣告を受けて独房で死刑の日を待っていたのです。ある日夢か幻のように、自分の名前を呼ぶ声が聞こえて来たそうです。「不思議だ」と思っていると、また名前を呼ぶ声が聞こえて来たのですが、返事をしないでいると、三回目にまた名前を呼ぶので「はい」と答えると、白い姿の老人が現れて、「あなたは絶対に死なない。その代わりにあなたは南から来られた若い先生を迎える準備をしなさい。」というのでした。それは夢か幻のうちに起きた出来事でした。
そのうちにある日、自分の名前が呼ばれ、もう死刑が執行されるのかと思って出てみると、以外にも死刑執行から三年刑に減刑されていたのです。彼の上官が外国の軍事会議に行っている間に起きたことで、上官が「自分が全体的な責任を持つから、彼を生かしてくれ」と言ったので、減刑されたのでした。そこで彼は嬉しさのあまり白い姿の老人の話を忘れてしまいました。ところが夢にまた白い老人が現れて、非常に怒った声で「君は私の話を忘れたのか。『若い先生を迎える準備をしなさい。』と言ったのに、どうしてそれを忘れたのか。」と叱り、老人は消えてしまいました。その次には彼の父親が現れて、「私がその若い先生のおられる所に案内してあげる。」と言って、彼を連れて行ったのです。そこで彼の父の後について大きな階段を上ると、大きな宮殿がありました。その中に大王様が座る椅子があり、父に「今私がその若い先生を見せてあげるから三拝をしなさい。」と言われ、父について三拝すると、父は「では頭を上げてみなさい。」と言ったのです。そこで頭を上げてみると、まぶしくて何も見えなかったので、また頭を下げていると、父が「では行こう」と言って、彼を連れて階段を下りて行くうちに消えてしまったのです。そこで彼は意識が戻り、夢か幻のうちに起きた出来事のようだったと言いました。その方が金氏なのです。
そして金氏のいる部屋にちょうど先生が入るようになったのです。先生は学生時代から数回刑務所や警察に出入りされたので、そこの規則をよく知っておられました。そのために部屋に入るやいなや挨拶をし、便器のそばに行って座られました。ところが金氏は死刑囚として長くそこにいたため監房長を務めていたのですが、先生を見ると心がひかれ、自分のそばに呼んで何か聞いてみたくなったのです。そして先生にお話をしてくださいと言ったのですが、先生はなかなかお話をされませんでした。なぜならば多くの自由主義者の同志たちが、拷問をしても吐かない場合、共産党員を偽装させ監獄に入れて、同志であると思わせて、詳しい事情をともに語り合うようにさせ、秘密を摘発されて大変な目にあった例を先生は知っておられたからです。
しかし先生は金氏の志を知って、「ロレンス」という人の名前を使って、先生が闘って来られた路程を金氏に語ったのです。それで金氏は白い姿の老人の言う通りに先生の弟子になりました。その後一ヵ月ぐらい経って、二人とも興南に移監するようになりました。興南収容所では食事がとても少なく、三ヵ月足らずで健康を害して多くの人々が死んでしまうのです。そのぐらい食糧が少ないのに重労働をさせられるので、なおさら衰弱してしまうのです。先生がこの人は七ヵ月くらいしかもたないだろうと思われると、本当にその人は七ヵ月足らずで死んでしまうというのです。
ところが先生は、この与えられた食事で五年間を支えなければならなかったのです。ご飯を大きなスプーンで食べれば数回で終わってしまうので、ご飯一粒、一粒を数えながら食べることによって、たくさん食べたという心理的な助けを求めた人もいたそうです。それでも労働はきつく、お腹のすく生活が続くと体が弱って、ある人は食べている途中で倒れてしまうのです。そうするとそこにいる人たちの中で、一番初めに発見した人が食べ残しを持って行くのです。はなはだしいのは食べている際、石が混じっていて□から取り出すと、それを持って行って食べるほどでしたから、どれほどおなかがすいていたかを知ることができるのです。
それで先生はいかにして少量の食事で五年間を持たせるかを考え、その食事の半分を分けて他の人に与え、残りの半分だけを召し上がったのです。先生はその半分を持って「これが私が五年間食べるものである」と考え、三ヵ月過ぎた後からは、その食事を全部食べるようにしたそうです。それは「これが私の分で、この半分は神が私に余分にくださるのである」と思い、二人分を食べていると思うことによって、お腹いっぱいになったと感じることができたそうです。
先生は獄中ではほとんど話をされなかったのですが、労働をしていて昼間の時間に話をしてあけた人がいます。その人は朴という人で、刑務所に収容された二千名の罪人の総監督でした。その人の権限は大きかったのです。先生はその人に、洗礼ヨハネが使命を果たすことができなかったことについて、話をしてあげたそうです。その人は若いとき信仰生活をして、教会の助士(伝道師)まで務めた人でしたが、その後教会を離れてしまったそうです。ですから彼が先生のお話を聞くと大変反発し、その日には先生の身辺にも大きな危険が訪れるようになったのです。先生はたった一言「そうしてはいけないだろうに……」と言われ、彼から離れたのです。
その夜彼は、苦痛を受けて眠れずにいると、白い姿の老人が現れ、「あなたは五九六番が一体誰か知ってて反対するのですか」と叱るのです。あまりにも苦しいので「すみません」と言って謝ると、体が楽になったのです。翌日先生は、同じような時間にまたその人に会って、さらに信じがたい話をされたので、彼は怒りが込み上げて来たのです。するとまたその夜も苦痛が始まり、白い姿の老人が現れて「君はどうして分からないのか」と叱ったのです。三回もそのような経験をしたため、彼は先生の二番目の弟子となったのです。彼は先生を知らなかったときには関心がなかったのですが、先生を知ってからは少しでも簡単な仕事を見つけてあげなければと思い、先生にそのことを話したのです。ところが先生はそれを拒み、反対に難しい仕事を自ら進んでされたのです。
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金元弼 - 証言 3. 刑務所で起きた奇跡
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