脂肪肝になるのは、お酒をよく飲む人だけとは限りません。食べ過ぎや運動不足が招く非アルコール性の脂肪肝は、進行すると肝炎から肝硬変、肝がんに至ることも。「お酒を飲まないから大丈夫」と過信せず、脂肪肝を指摘されたら定期的に検査を受けましょう。
非アルコール性の脂肪肝とは?
食べ過ぎや運動不足により、摂取した栄養が十分に消費されない状態が続くと、肝臓は中性脂肪を蓄積します。脂肪肝はこの中性脂肪が多くなった状態で、飲酒が関係するアルコール性のものと、アルコールをあまり飲まない人がなる脂肪肝があります。後者とそれによって起こる肝臓の病気は「非アルコール性脂肪性肝疾患」と総称され、「Nonalcoholic Fatty Liver Disease」という英語表記から「NAFLD(ナッフルディー)」とも呼ばれます。
名前は「非アルコール性」ですが、アルコールを全く飲まない人だけでなく、少量(1日の飲酒量が男性ならビール中瓶1.5本、ワイン3杯、日本酒1.5合まで、女性ならビール中瓶1本、ワイン2杯、日本酒1合まで)の飲酒をしている人の脂肪肝や肝臓の病気もNAFLDに該当します。つまり、お酒をそれほど飲んでいなくても、脂肪肝になる可能性があるのです。
NAFLDの一部は肝硬変や肝がんに
NAFLDの患者数は日本全国で1,000万人以上いるとも推計されており、男性は40~60代、女性は60代前後に多く見られる傾向です。80~90%の人は脂肪肝のままで病気が進行することはありませんが、10~20%の人は少しずつ悪化して、「NASH(ナッシュ):Nonalcoholic Steato-Hepatitis」と呼ばれる「非アルコール性脂肪肝炎」に進行。さらにNASHの患者の5~20%が、5~10年で肝硬変に至り、肝がんを発症するリスクが高くなることがわかっています。
症状がないため、自分では気づきにくい
NAFLDは、脂肪肝の段階では自覚症状がないことがほとんどです。NASHでも、肝硬変まで進行してしまうと、黄疸や足のむくみといった症状がみられることがありますが、病状が進まないうちは特に目立った症状はありません。ですから、健康診断で脂肪肝の可能性を指摘されたら、自覚症状がなくても放置せず、詳しい検査を受けることが大切です。脂肪肝は超音波検査などでわかりますが、NASHの確定診断には肝臓の組織を採取して調べる肝生検が必要になります。
肥満やメタボ、酸化ストレスが原因
NAFLDやNASHの最大の原因となるのは肥満です。食べ過ぎや運動不足により肥満になると、血糖値を調整するホルモンであるインスリンの効き目が悪くなり、より肝臓に中性脂肪がたまりやすい状態になります。脂肪肝はメタボリックシンドロームが肝臓に現われた病態と考えられており、糖尿病や脂質異常症、高血圧はNAFLDやNASHの発症に大きく関係しています。実際にNASHやNAFLDの患者では、これらの病気を合併しているケースがほとんどです。さらに、メタボリックシンドローム、生活習慣病にNAFLDを合併している場合
は、NASHに進展するリスクが高まります。
ほかに、酸化ストレスによって肝細胞が傷害されることもNASHの原因になります。肝臓に脂肪がたまりすぎると、余分な栄養をエネルギーに変えるときに、活性酸素などの有害な物質が発生します。この「酸化ストレス」を受けると、肝細胞が傷つきやすくなり、組織に炎症が起こることでNASHになりやすくなるのです。
こんな生活習慣はNAFLDやNASHの原因に
NAFLDやNASHは肥満と深く関係していることで、日ごろのこんな生活習慣は、発症のリスクを高めます。自分の行動を振り返ってみて、心当たりがある場合は改善に取り組みましょう。
【よく食べるが運動する習慣がない】