もっと困ったことに、かまれなくても感染した事例があります。これも厚労省の発表です。
17年、四国の40代の男性が飼い犬にかまれたわけでもないのにSFTSを発症、同時に飼い犬も発症していることが分かりました。遺伝子検査の結果、男性は飼い犬から感染したのは間違いなく、おそらくなめられたことが原因ではないかとみられています。
ここで、ダニに刺されて重症化する八つの感染症を表にまとめてみましょう。
これら八つのなかで今後ますます注目されるのは、やはりSFTSでしょう。ワクチンも治療薬もなく、死に至ることもあり、その上ダニのみならず、イヌやネコとの接触がリスクとなるわけですから、注意しなければならないのは必至です。特に、無防備な服装で野山で遊び、また動物に警戒心のない子供たちは要注意です。
年間400~500人が感染する「ツツガムシ病」
国内でみたときに、SFTSの次に注意が必要なのは、頻度の高い「ツツガムシ病」と「日本紅斑熱」です。これらには有効な治療法がありますが、必ずしも早期発見できるとは限らず、治療開始が遅くなり死亡する例も毎年のようにあります。今回はSFTSに加えてこれら二つを取り上げ、次回に残りの五つを紹介したいと思います。
八つの感染症のなかで、国内で最も頻度が高いのはツツガムシ病で、過去数年はだいたい年間400~500人程度の報告があります。ダニの一種のツツガムシの体内に「リケッチア」と呼ばれる種類の小さな細菌が潜んでいることがあり、これがダニ(ツツガムシ)に刺されたときにヒトの体内に侵入するのです。
感染すると、刺されてから1,2週間の潜伏期を経て、頭痛や関節痛と発熱を起こします。皮膚の発疹や、刺された傷口のかさぶたも特徴です。
なお、他の七つの感染症はいずれも「マダニ」と呼ばれるダニが媒介する感染症ですが、ツツガムシ病だけはマダニではなくマダニよりも少し小さいツツガムシという名前のダニが原因です。
SFTSとは異なり、ツツガムシ病には抗菌薬がよく効きます。したがって適切な治療が行われれば死に至ることは通常はありません。ですが、実際には毎年のように死者がでています。なぜでしょうか。
それは診断がつけられないからです。医師が無能だからか、と問われれば、そういう場合もあるかもしれませんが、患者さんにダニに刺された記憶がないことが多々あり、こうなるとなかなか疑いにくいのです。