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意外に思うかもしれないが、自閉症がある子どものすい臓に対する治療が、行動面の問題の軽減に有効である可能性が、米テキサス大学(UT)ヘルス・マクガバンメディカルスクールの精神医学および行動科学教授のDeborah Pearson氏らによる研究で示された。この研究結果は、「JAMA Network Open」に2023年11月30日掲載された。
研究グループは、食事からのタンパク質摂取とセロトニンやドーパミンなどの重要な神経伝達物質との関連がこの結果の重要ポイントだと説明している。これらの神経伝達物質がうまく働かないと、子どもの行動に影響が及ぶ。自閉症スペクトラム障害(ASD)のある子どもの多くはパスタやパンなどの炭水化物の多い食品を好む一方、タンパク質の多い食事には抵抗を示す。しかし、神経伝達物質の合成に必要なアミノ酸はタンパク質からしか得ることができない。
そこで研究グループは、膵酵素(すいこうそ)の補充により膵臓でのアミノ酸の産生量を増加させることが子どもの脳に有用であり、脳の神経伝達物質の不足に関連する問題行動の軽減につながるのではないかと考えた。Pearson氏は、「ASDのある子どもには、しばしば易刺激性(怒りっぽさ)などの不適応行動が併発する。そのような場合に、副作用のリスクが低い介入で対処できるかどうかを明らかにしたかった」と説明する。
怒りっぽさや多動性、不適切な発言…… 多様な症状が改善
研究は、3~6歳のASDがある子ども190人(平均年齢4.5歳、男児79%)を対象に実施された。まず、12週間にわたって実施された第一段階の研究では、ランダムに選ばれた92人の子どもの食事に1日3回、豚由来の高プロテアーゼ膵酵素(900mg、以下、膵酵素)をふりかけた。一方、残る98人の食事には偽の酵素(プラセボ)をふりかけた。この研究期間中、研究者や子どもの親には、どの子に何が与えられているのかは明かされなかった。
その結果、膵酵素を摂取した子どもでは、親の報告に基づいた子どもの易刺激性や多動性、従順性のなさ、不適切な発言が有意に減少したことが明らかになった。これに対し、プラセボを摂取した子どもでは、このような変化は認められなかった。
次の段階の研究では、24週間にわたって全員に毎日膵酵素が投与された。その結果、この期間も、子どもの親の報告に基づいた易刺激性や多動性、不適切な発言が有意に減少したほか、無気力、引きこもりの程度も低下していた。全研究期間を通じて、膵酵素投与と関連/無関連の重大な有害事象は1件も報告されなかった。
Pearson氏は、「今回の研究では、神経伝達物質の合成に必要なアミノ酸の産生を促すと考えられている膵酵素の補充がASDの未就学児の行動面の機能の改善に関連することと、その副作用は極めて少ないことが示された」と説明している。
なお、本研究は、研究で使用された膵酵素補充剤を開発しているCuremark社の資金提供を受けて実施された。
(HealthDay News 2023年12月21日)
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