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海流発電は外洋の強い海流の流れを利用し、タービン水車を回して発電する。海底に固定したワイヤに発電機器をつなげ、強い流れが安定している水深30~50メートルにタービンを浮遊させる。時間や天候に左右されにくいため発電効率は50~70%が見込め、同じ再生可能エネルギーの太陽光(約15%)や風力(20~40%)に比べて優位性があるという。
IHIとNEDOは2017年8月に約1週間ほど実験を行ったが、今回は1年間かけて実験する。実験には、両者が共同開発した発電機器「かいりゅう」(最大出力100キロワット)を使う。かいりゅうは、直径約11メートルのタービンがついた全長約20メートルの発電機2台と、浮体を兼ねた変圧・送電機1台で構成。タービンが互いに逆方向に回転して海中で姿勢を保つ。
前回の実験は同県十島村口之島の北約5キロで実施したが、海流が想定より弱く最大出力は30キロワットにとどまった。この点を踏まえ、今回は強い海流が期待できる沖合約10キロの海中に設置。また、発電効率を高めるため、海流の乱れを防ぐ整流板の数を増やし、機器の傾きを調整する自律制御プログラムも改良した。
発電機器は8月中旬から設置し、秋から発電を始める。季節による環境変化などのデータ収集に加え、電力の品質も評価し、実際に同島への電力供給も検討する。一方、発電コストは1キロワット時当たり20~40円とされる太陽光や風力に対して格段に高いため、実用化に際しては機器を大型化して数台並べるなど大規模化して同水準まで下げることを検討している。
IHIは「21年以降の離島での実用化に向け、今回は重要な実験となる。課題を検証しながら電源としての信頼性を高めていきたい」と話した。【高橋慶浩】