入院すると毎日測定した経験のある人も多い、血中酸素飽和度(SpO2)。身体の異常を発見する方法として医療機関では日常的に使われますが、いったい何がわかるのでしょうか? また、血中酸素飽和度の測定に使われている指先を挟むクリップのような機器「パルスオキシメーター」の仕組みについても解説します。
体の状態を知るバイタルサインとしては、脈拍、体温、血圧、呼吸状態の4つが基本ですが、第5のバイタルサインとして「血中酸素飽和度(SpO2)」の測定があり、広く医療現場で採用されています。
そもそも酸素飽和度とはなんでしょう。呼吸によって肺に取り込まれた酸素は、血液中の赤血球と結合して全身へ運ばれます。その取り込まれた酸素が赤血球と結合している割合を示しているのが血中酸素飽和度です。
パルスオキシメーターは、心臓から全身へ血液を送り出している動脈血の中の赤血球のうち、何%が酸素と結合しているかを指先の皮膚を通して測定します。指先には動脈も静脈も通っていますが、動脈にある特有の脈動によって血管を選別しています。ですから酸素飽和度と併せて脈拍数も測定されます。
指先を挟むプローブといわれる装置には、光を発してその光を受けるセンサーがあり、皮膚を通して動脈の血流を検知します。血液の赤い色は赤血球の色で、酸素と結合すると赤が強く鮮やかになります。プローブは赤さの度合い(光の吸収率)から酸素飽和度を割り出します。
通常、片手の人差し指にプローブを挟むと、わずか数秒で測定できます。ピッと音が鳴ると同時に測定値がデジタル表示されます。酸素飽和度は96~99%が標準値とされ、90%以下になると酸素飽和度が低い状態とみなされ、全身の臓器に酸素が十分に行き渡っていない状態、つまり呼吸不全が疑われます。
酸素飽和度が低下する要因として考えられるのは、肺での赤血球と酸素の結合に支障がある、赤血球の濃度が低い、心臓機能に問題があって血液を送り出す量(心拍出量)が低下している、などが考えられます。
具体的な疾患としては、気管支喘息や気管支拡張症、慢性閉塞性肺疾患、肺炎、気胸や胸膜炎、貧血、心不全などがありますが、脳腫瘍や脳出血などによって脳の呼吸中枢にダメージを受けた場合でも、酸素飽和度が低下します。
その他の検査としては、睡眠時無呼吸症候群のスクリーニング検査で、血中酸素飽和度の数値を測定して観察する場合にも使われています。呼吸が止まると酸素が体内に取り込まれなくなり、血液中の酸素が一時的に低下するためです。
わずか数秒の痛みもない検査で、重要な病気の兆候がわかる第5のバイタルサイン。覚えておくといいかもしれません。