PCR検査は「polymerase chain reaction」の頭文字をとった検査方法で、日本語だと「ポリメラーゼ連鎖反応」です。長くなるのでPCRあるいはPCR検査で話を進めます。
新型コロナウイルスのPCR検査の不足が話題になり、6日から公的医療保険の適用対象となりました。「なかなか受けさせてもらえない」という声については、確かに病気の広がりをキチンと把握するという意味では、もう少しやってもよいのかなとは思いますが、実はこの検査、今言われている検査の信頼性でいうともう一つなのです。
二つの指標――感度と特異度
検査の有効性を見る指標の一つに、「感度」と「特異度」という指標があります。この二つは表裏一体の指標です。感度というのは、ある病気にかかっている人を本当にその病気だと診断できる率、つまり、100人の患者さんを検査して、陽性が100人であれば100%となります。100人の患者さんを検査して、そのうち50人だけが陽性なら、感度は50%ということになります。後者では、本当は病気なのに50人の人は病気ではないと診断されるのです。
一方の特異度は、病気ではない人を病気ではないと診断できる率です。例えば、「特異度90%」の検査なら、全く病気ではない人100人を検査した場合、90人を病気ではないと判定するということになります。逆に言えば、10人については病気だと誤って判定してしまうのです。
結果が陰性でも安心できない
現在の新型コロナウイルスで用いられているPCR検査は感度が30~70%という値だと言われています(※)。特異度については定かではありませんが、重症急性呼吸器症候群(SARS)の検査では、検体にもよりますが、92〜100%と報告されています。
例えばこの検査を風邪症状の1000人に行ったとします。そして、そのうち1%がコロナウイルスの感染者だった場合、どうなるでしょう。
1000人のうち1%ですから、10人が実際にコロナウイルスの感染者です。後の990人はただの風邪です。
PCR検査の感度を高く見積もって70%としてみましょう。感度70%ですから、10人のうち、7人が陽性と判断され、3人は見逃されます。今回の新型コロナウイルスのPCR検査の感度(病気の人を病気と診断できる確率)を考えると、陰性とされても全く安心はできないのです。
その結果、どんなことが考えられるでしょうか。
たとえば、あなたが新型コロナウイルスの感染者で、検査を受けたとします。本当は感染しているのに30%もの確率で、陰性と判断されてしまいます。
もし、そのことを知らない場合、あなたはどうするでしょうか? きっと、新型コロナウイルスには感染していない、風邪だったんだと安心し、あちこちに行ってしまう可能性があります。