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ベジタリアン食が心臓に良いことを示唆する、新たなエビデンスが報告された。シドニー大学(オーストラリア)のTian Wang氏らが行ったシステマティックレビューとメタ解析の結果であり、詳細は「JAMA Network Open」に7月25日掲載された。
Wang氏によると、ベジタリアン食は一般に健康的な食事スタイルと位置付けられているものの、心血管疾患(CVD)ハイリスク者にメリットをもたらすか否かは、これまで明確になっていなかったという。そこで同氏らは、Embase、MEDLINE、CINAHL、CENTRALという文献データベースおよびその他のウェブサイトを用い、2021年7月31日までに報告された論文と灰色文献(伝統的な商業ルートでは入手困難な情報)を対象として、CVD患者またはCVDハイリスク者を対象にベジタリアン食による介入を行った研究報告を検索。20件の無作為化比較試験(RCT)の報告を抽出した。
抽出されたRCTの研究参加者数は合計1,878人(平均年齢28~64歳)で、介入期間は平均25.4週(範囲2~24カ月)だった。4件はCVD患者対象、7件は糖尿病患者対象、9件はCVD危険因子が二つ以上ある人を対象としていた。食事介入の方法は研究によりやや異なり、ラクト・オボ・ベジタリアン食(肉は食べないが、卵や乳製品などの動物性食品は摂取)やビーガン食(動物性食品を一切摂取しない完全菜食)などによって行われていた。
半年継続 体重と悪玉コレステロール、血糖値で有意に改善
メタ解析の結果、ベジタリアン食を平均6カ月続けると、体重は-3.4kg(95%信頼区間-4.9~-2.0)、LDL(悪玉)コレステロールは-6.6mg/dL(同-10.1~-3.1)、HbA1cは-0.24%(-0.40~-0.07)という有意な改善が認められた。なお、収縮期血圧の変化幅は-0.1mmHg(-2.8~2.6)で非有意だった。
この報告に対して米国の栄養と食事のアカデミーの元会長であるConnie Diekman氏は、「植物性食品を多く食べる、あるいは、動物性食品の摂取量全体を減らす、または脂肪の少ない動物性食品を選んで摂取するという食生活が健康につながるという、従来の考え方を支持するデータと言える」と論評。また、米テキサス大学サウスウェスタン医療センターのLona Sandon氏は、「肉類を減らして植物性食品を摂取することが心臓の健康に良いというこれまでの研究結果は一貫したものであり、信頼性がかなり高い」と述べている。なお、両氏ともに今回発表された研究には関与していない。
Wang氏らは現在、ベジタリアン食と薬物療法を並行して行った場合に、CVDリスクがどのように変化するのかを調査している。この研究意図に関連してSandon氏は、「薬物介入のみではリスク抑制が不十分な場合もあるため、ハイリスク患者はできる限りのことを行うべきだ。動脈硬化の進行を抑えるように働くベジタリアン食は、その一部として位置付けられるだろう」と解説。Diekman氏もこれに同意した上で、「世界で最も多くの人々の命を奪う原因の一つがCVDだ。LDL-Cを上昇させてCVDリスクを押し上げてしまうことの多い動物性食品の摂取を控えめにして、より多くの植物性食品に目を向けることが、CVDリスク低減の第一歩になる」と話している。
(HealthDay News 2023年7月26日)
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