|
皮膚と筋肉が侵される「若年性皮膚筋炎」は、毎年10万人に4人ほどの割合で発症するという指定難病の1つです。子どもの場合、筋肉や皮膚に特徴のある症状があらわれて気づくことが多いといいます。いったいどんな病気なのでしょうか。
多くは皮膚症状が先行して現れる
皮膚筋炎は、小さな子どもも青少年も、大人になってからも発症します。発症時期は15歳以下が3%、60歳以上25%で、中年発症が最も多いようです。子どもの発症は少ないですが、症状や予後が大人と異なるため、16歳未満の発症を「若年性皮膚筋炎」と呼んでいます。若年性の好発年齢は5~14歳です。
若年性皮膚筋炎は、皮膚と筋肉の小さな血管に炎症が起きて、筋力が低下し筋肉が痛み、まぶたやひじ・ひざなど関節に特徴的な皮疹が出るという珍しい病気です。多くは筋症状より皮膚症状が先行してあらわれますが、まれに皮膚症状だけの場合もあります。
疲れやだるさを訴える
皮膚筋炎を発症すると、子どもは疲れやだるさを訴えるようになるのが典型的な症状です。筋力が低下することでつまずきやすく、階段で不自然に転ぶようになったりします。逆上がりなど、できたはずの運動ができなくなり、小さな子どもなら歩くのを嫌がって、しきりに抱っこをせがむといった変化がみられることも。
筋力の低下は、ほとんど認められないものや軽症で終わることもありますが、進行し重症化するケースでは手足の筋肉が拘縮し、歩行困難で寝たきりになる場合も報告されています。また呼吸器の筋力が低下して嚥下(えんげ)障害や呼吸困難が生じることもあります。
皮膚症状は手指関節やひじ、ひざ、目の周辺
皮膚症状としては、「ゴットロン徴候」と称される角質が盛り上がってガサガサした紅斑が、手指関節の背面、ひじ・ひざ関節の伸側面などにあらわれるのが特徴です。目の周りが腫れ、上まぶたに「ヘリオトロープ疹」というはれぼったい紅斑がみられることもあります。
発症した子どもの約3割に、皮下にカルシウムが沈着する「石灰化」がみられるのは、若年性特有の症状です。皮下が一度石灰化すると治りにくく、手足の動きが制限されることもあります。なお、大人ではがんが合併することがありますが、若年性にはまずありません。
合併症として、間質性肺炎、消化管の潰瘍・出血、心臓の病変(心電図の異常、心筋障害)などがあります。肺や腸管、心臓といった他の臓器に異変がみられるケースは重篤な場合が多く、生命予後にも影響します。
薬物療法で安定を目指す
病気の原因ははっきりしていませんが、膠原病の一種の自己免疫疾患であり、細菌やウイルスなどへの感染や、紫外線の暴露といった、いくつかの要因が引き金になって発症すると考えられています。遺伝はしないものの遺伝的体質が受け継がれていると発症しやすくなると報告されています。また、近年では若年性皮膚筋炎に罹患した患者の70%に筋炎特異的抗体陽性との文献もあります。
治療は、炎症を抑え、筋肉や臓器の損傷を防ぐために、免疫抑制剤とステロイド剤を併用する薬物療法が主流です。病気をコントロールして安定した状態になることを目標に治療が行われています。拘縮などが起きて筋肉にダメージを受けたときはリハビリテーションなども行います。
関連記事
<2㎡を描く 闘病記が大賞受賞>
<子どもに多いアレルギー性紫斑病>
<膠原病は毛が抜けやすくなる代表的な病気>
<汗ばむとピリピリ…… コリン性じんましんって?>
<スポーツをする人に知って欲しいジョーンズ骨折>
大人になってふつうの生活を送れるようになることが治療の最終目標です。近年は治療成績が上がっており、数年のうちに新しい治療薬が開発されるともいわれているようです。今後の研究の進展が期待されます。
監修:松平隆光(医療法人社団秀志会 松平小児科院長)
「ケータイ家庭の医学」2020年掲載
(C)保健同人社
特記のない写真はゲッティ