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毎日新聞 2021/4/7 東京朝刊 有料記事 616文字
建設現場でアスベスト(石綿)を吸い込み健康被害を受けたとして、元建設作業員らが国や建材メーカーに賠償を求めた集団訴訟で、被害者への補償の枠組みを検討する与党の対策プロジェクトチーム(PT)会合が6日あり、原告側が厚生労働省との間で複数訴訟の統一和解案を交渉中であることを明らかにした。
訴訟は各地で起こされ6件が最高裁に上告中。一部の訴訟で国側の敗訴が確定している。原告側の和解案は、死亡者への慰謝料2800万円▽国の責任割合は慰謝料額の2分の1--などが柱。高裁判決で示された賠償額や国の責任範囲に基づいたもの、としている。また未提訴の患者への救済措置として国とメーカーが資金を分担し、和解案と同水準の慰謝料を支払う補償基金を創設するよう求めた。PT座長の野田毅元自治相は「最高裁による最終判断が近づきつつある。できるだけ早期の解決に至りたい」と述べた。
原告側の小野寺利孝弁護士は記者会見で「和解交渉で被害救済へ向けた国の姿勢も問いたい」と述べた。
石綿を原因とする中皮腫や肺がん、石綿肺などの疾病を負った人に対する救済には労災保険給付と、石綿健康被害救済法、和解手続きによる賠償金の支払いがある。労災保険を受けられない人には石綿救済法で医療費や療養手当などを給付する。平均賃金の約8割が補償される労災に比べ、救済法は月額約10万円の療養手当にとどまり、遺族年金もない。厚労省は新たな補償制度の創設を検討している。【中川聡子】