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口腔病変の検体を非侵襲的に採取し、そこに含まれる2種類のタンパク質の比率をもとにスコアを算出することで、口腔がんを迅速に診断できるようになる可能性のあることが、新たな研究で示唆された。米ケース・ウェスタン・リザーブ大学生物科学部門のAaron Weinberg氏らによるこの研究結果は、「Cell Reports Medicine」に3月4日掲載された。
現行の口腔がんの生検は、歯科医やその他の専門医が口の中の疑わしい病変部位の組織を採取し、それを研究所に送って検査してもらうのが通常のプロセスである。しかし、この方法は、侵襲的である上に費用もかかる。それに対し今回の研究では、綿棒で病変部位を軽くこすって検体を採取し、それを分析するだけで、従来の生検と同程度に機能することが示されたという。
その具体的な方法は、まず、綿棒で病変部位とその対側の正常部位の検体を採取し、ELISA法によりそれぞれの検体のヒトβディフェンシン(β-defensin;BD)-3(hBD-3)とhBD-2の比率を算出する。BDは、口腔や肺、腎臓などの粘膜上皮や皮膚に発現するペプチドで、細菌などの病原体に対する防御機能を持つことが知られている。早期口腔がんの場合、hBD-3の発現が急増するが、hBD-2は変化しないという。次いで、病変部位のhBD-3とhBD-2の比率を正常部位の同比率で割ることで、BD指数と呼ばれるスコアを算出する。このスコアが特定の閾値を超えた場合には、口腔がんの可能性が高いと判定される。BD指数に基づくこの方法の検査能を3つのコホートで検証したところ、全体の感度は98.2%、特異度は82.6%であることが示された。
〝ジキル〟と思っていたら……実は〝ハイド〟
Weinberg氏は、「われわれは当初、hBD-3は創傷治癒や微生物の死滅に関与する、良い影響をもたらすものだととらえていた。しかし、ある種の細胞が制御不能に増殖するのと同じように、hBD-3も制御不能に増殖し得ることが明らかになったことから、口腔がんに焦点を当ててhBD-3を調べることにした」と話す。
Weinberg氏は続けて、「ジキル博士だと思っていたhBD-3が、実はハイド氏だと判明したときのわれわれの驚きを想像してみてほしい。hBD-3は腫瘍の成長を促すだけでなく、がんの初期段階で過剰に発現するのに対し、hBD-2に変化は生じないことが判明したのだ。正常部位に比べて病変部位ではこれらのタンパク質の発現レベルに違いが認められたことが、BD指数によりがんと良性病変を区別できるかどうかを調べる今回の研究につながった」と説明している。
研究グループは、すでに特許を取得したこの新しい検査法を採用することで、検査室ベースの生検の必要性を95%減らすことができると推定している。また、研究論文の共著者である、ケース・ウェスタン・リザーブ大学工学部教授のUmut Gurkan氏は、この結果に刺激され、約30分以内に患者のBD指数を表示できるポイント・オブ・ケア装置(特許出願中)を開発したという。
(HealthDay News 2024年3月5日)
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