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毎日新聞 2023/3/25 東京朝刊 有料記事 840文字
法廷内に設置された傍聴席用の大型モニター(右端と左端)=東京地裁で、馬場理沙撮影
なるほドリ 入管施設(にゅうかんしせつ)の監視(かんし)カメラ映像が法廷で上映されるって聞いたよ。
記者 名古屋出入国在留管理局(なごやしゅつにゅうこくざいりゅうかんりきょく)の施設で2021年3月、収容中に死亡したスリランカ人女性、ウィシュマ・サンダマリさん(当時33歳)の遺族(いぞく)が、国に損害賠償(そんがいばいしょう)を求めた裁判ですね。ウィシュマさんが亡くなるまでの様子を収めた約5時間分の映像を、法廷内の大型モニターで6月21日と7月12日の2回に分けて上映します。
Q 遺族はなぜ上映を求めたのかな。
A 遺族は裁判で「適切な治療を受けていれば死なずにすんだ」と訴えました。記者も民事訴訟記録の閲覧(えつらん)手続きをして映像を見ましたが、ウィシュマさんが「病院に連れて行って」と懇願(こんがん)したり、「あー」と叫んだりする様子が映っていました。死亡当日は衰弱して、看守(かんしゅ)らの呼びかけにも応じられないようでした。遺族代理人は「ビデオを見れば誰に責任があるのか分かる」と話しています。
Q 国は反対したんでしょ?
A そうです。その理由として「保安上の問題」を挙げました。多くの人の目に触れれば監視体制が把握(はあく)されてしまう、と難色(なんしょく)を示したのです。映像の一部はモザイク処理(しょり)されていますが、職員の顔が見えなくても、声などで誰か分かってしまうとも主張しました。双方の主張は平行線をたどり、最終的に名古屋地裁(ちさい)が公開の法廷で上映することを決めました。
Q ほかの裁判でも、監視カメラの映像が上映されたことってあるのかな?
A 14年に茨城県牛久市(いばらきけんうしくし)の入管施設で収容中に死亡したカメルーン人男性(当時43歳)の裁判でも、約2時間分の映像が法廷で上映されました。水戸(みと)地裁は22年9月、入管職員の注意義務違反(ちゅういぎむいはん)を認め、国に165万円を支払うよう命じました。(中部報道センター)