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脚のむくみが慢性化して、膝から下がかゆくなったり色素沈着が現れたりしていたら、うっ滞性皮膚炎かもしれません。皮膚に潰瘍ができるまで症状が進むと治りにくく、痛みも伴います。早めに気づいて適切なケアを行うことが大切です。
皮膚への栄養や酸素が不足して起きる
うっ滞性皮膚炎は、足から心臓に戻る血流が滞るために、皮膚への栄養や酸素の供給が不足することで起こります。症状が出るのは、膝から下の部分(下腿)。うっ血の原因としては、血液の逆流を防止する静脈弁の遺伝的な機能障害や下肢静脈瘤などがあり、ほかに、長時間の立ち仕事、肥満、妊娠、加齢による下腿(特にふくらはぎ)の血流障害も関係します。
中年以降に多くみられ、初期症状としては、血管の怒張(=ふくれあがること)、長時間の立ち仕事の後などに起こるふくらはぎや足首まわりのむくみがあります。休むと回復しますが、次第に頻繁に起こるようになります。
慢性化すると、血管の怒張は増悪し、皮膚が赤くなる紅斑(こうはん)や紫斑(しはん)が出現し、数週間から数カ月で褐色の色素沈着がみられるようになります。色素沈着は静脈のうっ血によって皮膚表面(真皮層)の毛細血管もうっ血し、微量の血液が漏れ出ることで生じます。
また、ちょっとした傷で、潰瘍ができると非常に治りにくく痛みも伴います。細菌感染を起こすこともまれではありません。
色素沈着や潰瘍などの特徴的な症状から、皮膚科では視診だけでおおよその診断がつきますが、静脈の状態を確認するために、超音波検査や血管造影検査などが行われることもあります。気になる症状があれば、早めに受診しましょう。
基本はうっ血の改善 下肢静脈瘤には手術も
治療の基本は、下腿静脈のうっ血を改善することです。医師の処方による医療用の弾性ストッキングや弾性包帯は、日常的に着用することで脚に圧力をかけて血液の循環を促します。うっ血が改善されると、むくみや皮膚症状も軽快に向かいます。
日常生活では、寝るときは両足の下にクッションや畳んだ毛布などを置いて足先が少し高くなるようにしてください。いすに座るときも、台などを利用してなるべく足を高い位置に置くようにします。立ち仕事では適度に休憩をとることも必要です。下半身のマッサージやストレッチ、入浴も効果があります。
かゆみや湿疹に対しては、ステロイド外用薬が用いられます。潰瘍ができてしまった場合は、治癒を促進させる目的で壊死(えし)組織を除去する軟膏などが使われ、被覆材(ドレッシング材)で傷口を保護します。細菌感染がある場合は、外用や内服の抗菌薬を使用します。
下肢静脈瘤が原因となっている場合は、血管外科で、レーザーや高周波による血管内手術を行うこともあります。ほかにも、ワイヤーを挿入して傷んだ血管を抜き取る静脈抜去術(ストリッピング手術)や硬化剤を血管に注射して閉塞させる硬化療法など、下肢静脈瘤の状態に応じた治療法が選択されます。
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監修:日野治子(関東中央病院 皮膚科特別顧問)
「ケータイ家庭の医学」2019年3月掲載より
(C)保健同人社
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