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毎日新聞 2023/4/2 21:45(最終更新 4/3 04:27) 1643文字
坂本龍一さん=東京都港区で2020年3月21日、北山夏帆撮影
音楽グループ「YMO」での活動や、映画「ラストエンペラー」の音楽などで知られる作曲家、坂本龍一(さかもと・りゅういち)さんが3月28日死去した。71歳だった。葬儀は近親者で営んだ。2014年に中咽頭(いんとう)がん、21年に直腸がんを公表し、闘病していた。
河出書房の名編集者、坂本一亀の長男として東京に生まれた。子供のころからピアノと作曲を学び、東京芸術大に入学、大学院時代からスタジオミュージシャンとしての活動を始めた。
1978年、細野晴臣さん、高橋幸宏さんと「イエロー・マジック・オーケストラ(YMO)」を結成、自身は教授の愛称で親しまれた。シンセサイザーやコンピューターを駆使した革新的な音楽世界を構築し、「テクノポリス」や「ライディーン」「君に、胸キュン。」などを世に問うて人気を博した。グループは83年に「散開」(解散)するも、93年に「再生」(再結成)するなど、折に触れて共演した。
YMOの活動の傍ら、故忌野清志郎さんとシングル「い・け・な・いルージュマジック」を発表し、派手な化粧姿で歌うパフォーマンスで話題になった。
ヨノイ大尉役として出演した映画「戦場のメリークリスマス」(大島渚監督、83年)では音楽を作曲し、英国アカデミー賞作曲賞を受賞。甘粕正彦役を務めた映画「ラストエンペラー」(ベルナルド・ベルトルッチ監督、87年)の音楽にも携わり、米国アカデミー賞作曲賞を獲得した。以来、映画音楽の作曲家としての名声が高まり、拠点をニューヨークに置きながら、「リトル・ブッダ」や「鉄道員(ぽっぽや)」「レヴェナント 蘇(よみが)えりし者」「MINAMATA―ミナマタ―」などの音楽を担当し、「母と暮せば」では毎日映画コンクール音楽賞を受賞した。バルセロナ・オリンピック(92年)の開会式の曲も制作している。
脱原発運動や被災地支援にも長年取り組み、2011年の東日本大震災による福島第1原発事故後は「一刻も早く脱原発を」と訴え、音楽イベント「NO NUKES」を開始。震災を機に東北の若者らと結成した「東北ユースオーケストラ」で音楽監督を務めるなど、被災地の復興支援にも親交の深い女優の吉永小百合さんらと尽力した。
また、憲法9条改正に反対するなど反戦平和・政治への関心も高く、15年には東京・永田町の国会議事堂前で開かれた安全保障関連法案への抗議集会でスピーチ。20年には沖縄県名護市辺野古沖の新基地建設海域を視察し「この美しい自然を壊してまで(新基地を)造る意義はない」と強く批判した。
私生活では82~06年、シンガー・ソングライターの矢野顕子さんと結婚、歌手の坂本美雨さんをもうけた。21年に直腸がんを公表した際、「これからは『がんと生きる』ことになります。もう少しだけ音楽を作りたいと思っていますので、みなさまに見守っていただけたら幸いです」とコメントした。22年6月にステージ4と発表し、同年12月、「最後になるかもしれない」としてピアノソロコンサートの映像を国内外に配信。闘病中に日記を書くようにスケッチしたという音の作品集「12」(23年1月発売)が遺作アルバムとなった。
坂本龍一さんの主なアルバム・映画音楽
1978年 アルバム「千のナイフ」
80年 アルバム「B―2ユニット」
83年 映画「戦場のメリークリスマス」の音楽
84年 アルバム「音楽図鑑」
87年 映画「ラストエンペラー」の音楽
89年 アルバム「ビューティ」
93年 映画「リトル・ブッダ」の音楽
95年 アルバム「スムーチー」
98年 アルバム「BTTB」
2002年 映画「ファム・ファタール」の音楽
04年 アルバム「キャズム」
07年 映画「シルク」の音楽
09年 アルバム「アウト・オブ・ノイズ」
15年 映画「母と暮せば」の音楽
17年 アルバム「async」
21年 映画「MINAMATA―ミナマタ―」の音楽
23年 アルバム「12」