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毎日新聞 2023/4/5 東京朝刊 有料記事 692文字
なるほドリ 小惑星(しょうわくせい)リュウグウの試料(しりょう)からアミノ酸が見つかったんだって?
記者 探査機(たんさき)はやぶさ2が持ち帰った試料に、23種類のアミノ酸が含まれていました。生物の体をつくるたんぱく質はアミノ酸からできており、生命の起源(きげん)を考える上で重要な物質です。ただし、地球の生物が使っているものとは大きな違いがありました。
Q 何が違ったの?
A アミノ酸のような有機物(ゆうきぶつ)には、化学式は同じですが、鏡に映(うつ)したように正反対の構造をしているものがあります。これを左右の手に例えて「左手型」「右手型」と呼びます。地球の生物はほとんど左手型のアミノ酸だけを使っていますが、リュウグウのアミノ酸は、左右がほぼ同じ数だけ含まれていました。
Q 左右でそんなに違いがあるの?
A アミノ酸の一種で、うま味調味料(みちょうみりょう)として使うグルタミン酸は、うまみを感じるのは左手型だけで、右手型は味がしません。1950年代から睡眠薬(すいみんやく)として使われたサリドマイドは、妊婦(にんぷ)が飲むと胎児(たいじ)に奇形(きけい)を起こす副作用(ふくさよう)がありましたが、これは左手型だけが起こします。当時は左右の違いが分からないまま販売され、深刻(しんこく)な被害(ひがい)をもたらしました。
Q どちらかだけを作れないの?
A 通常の方法で合成すると左右が同じ数だけできますが、野依良治(のよりりょうじ)博士らが片方だけ作る方法を開発しノーベル化学賞を受賞しました。一方、なぜ生物が左手型だけを使うのかは謎のままです。(くらし科学環境部)