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毎日新聞 2023/5/25 東京朝刊 有料記事 687文字
着陸船の状況を説明するispaceの氏家亮・最高技術責任者=東京都中央区で2023年4月26日、丸山博撮影
なるほドリ 日本の宇宙船が月に着陸(ちゃくりく)できなかったそうだね。
記者 東京の民間企業「ispace(アイスペース)」の月着陸船のことですね。昨年12月に米国のロケットで打ち上げられ、今年4月、成功すれば民間では世界初となる偉業(いぎょう)に挑みましたが、着陸直前で失敗してしまいました。
Q 何が起きたの?
A 月面に降り立つ予定地点の上空100キロ付近まで飛行した後、下降(かこう)を始めたのですが、その途中で通信が切れてしまいました。同社は「燃料(ねんりょう)が尽(つ)きて月面に衝突(しょうとつ)した可能性が高い」と説明しています。月には地球の6分の1とはいえ重力があり、機体の姿勢を正しく保ったまま減速(げんそく)して着陸するには、たくさんの燃料が必要になります。今回は着陸地点の高度の測定に誤(あやま)りがあり、まだ着陸していないのに燃料を使い切ってしまった可能性が考えられます。
Q 月着陸って難しいんだね。
A 地球のような大気がほとんどないため、減速用のパラシュートが使えない難しさもあります。また、月の表面は「レゴリス」という砂で覆(おお)われていて、着陸の衝撃(しょうげき)で舞い上がってエンジンなどを故障させる恐れもあります。
Q 昔、人間が月に降り立ったのはすごいことだったんだね。
A 米国の宇宙船「アポロ11号」で人類が初めて月に降り立ったのは1969年のことです。それも失敗と準備を重ねた末の成功でした。月を目指す動きは今再び世界で活発化(かっぱつか)していて、アイスペースも月着陸に再挑戦する計画を掲げています。(くらし科学環境部)