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毎日新聞 2023/7/12 東京朝刊 842文字
梅雨末期の7月に今年も大きな災害が起きた。被災者の救援に全力を挙げるとともに、豪雨の頻発を前提にした備えを進めることが欠かせない。
九州北部が記録的な大雨に見舞われ、土砂災害や河川の氾濫が相次いだ。逃げ遅れた住民が亡くなったほか、行方不明となった人もいる。
気象庁は9日、翌日夕までの24時間雨量を福岡、佐賀両県で200ミリ、大分県で150ミリと予想していた。実際は最大値で400ミリを超えた地域もあり、福岡、大分両県に大雨特別警報が出された。
予想を大きく上回る量の雨が降ったのは、線状降水帯が発生したためだ。積乱雲が次々と生じ、局地的に強い雨を降らせる。2018年の西日本豪雨、20年の九州豪雨でも主な要因となった。
気象庁は昨年から、半日前をめどに線状降水帯の発生を予測し、公表するよう努めている。だが、今回は予報を出せなかった。
現在の技術では、発生のエリアなどを絞り込んで予測するのは容易でないからだ。精度に限界があることを住民らに一層周知する必要がある。
深夜に集中豪雨が起きた場合の対応の難しさも、改めて浮き彫りになった。
暗い中での移動は危険だと判断し、朝を待って避難指示を出した自治体もあった。直後に土砂崩れが起き、逃げ遅れた人もいた。
屋外に出られなくても、自宅の2階以上や、崖から離れた部屋に移ることで命が助かる場合もある。そうした「屋内避難」も選択肢としてあることを住民に示した上で、早めに呼びかけるべきだ。
気象庁気象研究所によると、線状降水帯がもたらしたとみられる集中豪雨の発生頻度は45年間で2・2倍に増えた。地球温暖化の影響とみられる。
全国のどこで起きても、もはや不思議ではない。気象の激甚化を踏まえた取り組みが必須だ。
災害時に取るべき行動を時系列でまとめた「マイ・タイムライン」を作成するなど、一人一人が身を守る最善の手立てを講じたい。
国と自治体、企業などが連携を強化し、ハード、ソフト両面の対策を総動員して、減災につなげることが求められる。