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毎日新聞 2023/7/13 東京朝刊 有料記事 729文字
ステンレスの板の上でみこの舞を奉納する地元の小学生ら=山形県朝日町で2023年6月
なるほドリ 東北地方には、空気をまつるいっぷう変わった神社があるんだって?
記者 山形県朝日町の「空気神社」ですね。町は「空気に感謝する世界に一つだけの神社」とアピールしています。標高600メートル、冬は雪深いブナ林に囲まれた高台にある施設(しせつ)です。神社といっても鳥居は見当たらず、まず目に飛(と)び込(こ)んでくるのはピカピカに磨(みが)かれた5メートル四方の鏡のようなステンレスの板です。本殿(ほんでん)は深さ3メートルの地下にあり、普段(ふだん)は中に入れません。
Q 中はどうなっているの?
A 板の横にある入り口からはしごで下りると、四季を表す4本の支柱からなる鳥居に囲まれた空間があり、1年すなわち12カ月を示す素焼きの瓶(びん)が12個置かれています。中は空っぽで、ご神体の空気がまつられているというわけです。毎年6月に公開されると、訪れた人たちはその前で空気のありがたみを感じるのです。
Q そうなんだ。昔からあるのかな。
A 30年ほど前、住民グループが「自然の恵(めぐ)みを大切にしよう」と訴(うった)え、町おこしの一環(いっかん)として建てました。神社を名乗っていますが実際は宗教とは関係なく、環境(かんきょう)がテーマのモニュメントです。町には「世界環境デー」に当たる6月5日を「空気の日」とする条例があり、毎年この時期に「空気まつり」を催(もよお)します。
Q そうなんだ。何だか面白いね。
A 今年は新型コロナウイルス禍(か)で中止されていた小学生らによる「みこの舞(まい)」の奉納(ほうのう)が4年ぶりに復活しました。鈴木浩幸町長は「空気のありがたさを感じ、環境を守るという思いを共有したい」と話しています。(山形支局)