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EECPのためのカフを装着する患者=FLOW Therapy提供
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の後遺症、いわゆるLong COVIDの症状改善に、心疾患の治療法の一つが有効である可能性が、小規模な研究で分かった。「強化体外式カウンターパルセーション」(EECP)と呼ばれ、狭心症による胸痛などの治療に使われる方法が、疲労や息切れなどのLong COVIDの症状の軽減に有用であることが示されたという。なお「カウンター」は英語で「逆」、「パルセーション」は心臓の拍動を意味する。この研究は、米国心臓病学会の心血管サミット(2月17~19日、オンライン開催)で発表された。
COVID-19から回復した患者の50%が、Long COVIDの症状を経験すると見られている。しかし、Long COVIDは新たに出現した病態で、その症状に対して医師ができることは限られている。
今回の研究は、EECPの実施機関である米「Flow Therapy」社のチーフ・サイエンティフィック・オフィサー、Sachin A. Shah氏が主導した。 Shah氏によると、COVID-19から回復後もLong COVIDに苦しむ人と後遺症のない人がいる理由は十分に解明されていない。ただ、心臓の表面にある大血管の内皮の機能障害が、Long COVIDに関与しているとの見かたをする研究者もいる。
EECPは、患者のふくらはぎ、太もも、尻にカフを装着して行う治療だ。心臓が拡張期、つまり血液を心臓内部に取り込んで、次に全身に送り出す準備をしている時に、カフをふくらはぎから尻まで順番に膨らませる。こうすることで、酸素を豊富に含んだ血液を心臓に送って全身へと巡らせるとともに、狭くなってしまっている血管を迂回(うかい)するための、枝分かれした細い血管の形成を促す。Shah氏は「心臓への血流が増すと、心疾患に対する自然な防御反応として『側副血行路』と呼ばれる微細な血管の形成が促される。また、全身の血流改善は血管拡張の促進や炎症の抑制につながり、全身の心血管系の状態も向上する」と説明する。
Shah氏によると、1回のEECPの治療時間は1時間。最大限の効果を得るためには、7週間に最大で35回の治療が必要になる。Flow Therapy社でEECPを35回受ける場合の治療費は約9500ドル(1ドル115円換算で約109万円)だが、Long COVIDの治療を目的としたEECPは健康保険でカバーされない可能性がある。このため、Shah氏は現在、保険適用に向けて保険会社に働きかけているという。
全員で症状が改善
今回の研究は、Long COVIDの患者50人(平均年齢54±15歳)を対象に実施された。50人のうち20人は、以前に冠動脈疾患(CAD)にかかった経験があり、30人にはその経験がなかった。計15~35時間のEECP施行後、全ての患者で、倦怠(けんたい)感、息切れ、胸部不快感といった症状の改善が認められた。
Shah氏は「EECPの効果は、狭心症患者の場合は数年にわたって持続することもある。一方、Long COVIDの患者での持続期間については、今後、検討していく必要がある」としている。
一方、ACCサイエンス&クオリティー委員会の委員を務める米イェール大学心臓病学准教授のErica Spatz氏は、この研究報告について「興味深いコンセプトで、今後さらなる検討が必要だ」とコメント。また「われわれも、Long COVIDでは内皮機能障害の何らかの要素が、標準的な画像検査では検出できない胸痛や、運動に耐えられない状態をもたらしている可能性は高いと考えている」と話す。ただし「内皮機能障害を診断するには侵襲的な(つまり、患者の体に負担がかかる)検査が必要となる」と付け加えている。またSpatz氏は、EECPがLong COVIDの治療法として有望なことは示されたが、現時点でEECPは誰もが受けられる治療法ではない点も指摘している。
なお、学会発表された研究は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものとみなされる。(HealthDay News 2022年2月16日)Copyright © 2022 HealthDay. All rights reserved.