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毎日新聞 2023/7/14 17:30(最終更新 7/14 17:30) 776文字
イプシロンSの2段モーター燃焼試験中に起きた爆発=ネコビデオビジュアルソリューションズのユーチューブ動画より©http://nvs-live.com
14日午前9時ごろ、秋田県能代市の宇宙航空研究開発機構(JAXA)「能代ロケット実験場」で、開発中の小型固体燃料ロケット「イプシロンS」(全長27・2メートル)の2段モーターの地上燃焼試験中に爆発が起きた。試験棟の一部が焼け、約2時間後に消し止められた。職員らは数百メートル離れた場所に退避しており、けが人はなかった。
JAXAによると、この日の試験では2段モーター(全長3・2メートル、直径2・5メートル)を約2分間連続で燃焼させて、推進力や温度など約170項目を点検し、設計が妥当か判断する予定だった。ところが午前9時に点火した57秒後、モーターに燃焼異常が生じて爆発。モーターや試験棟の一部が吹き飛んだ。JAXAは「原因は不明」としている。
イプシロンは主に小型衛星を打ち上げるJAXAの主力ロケット。イプシロンSは現行機の改良型で、2段モーターなどを大型化することで性能の増強を目指している。3段モーターの燃焼試験は6月に同実験場で行われ、目立った不具合は確認されなかったという。
JAXAのロケットは失敗が相次いでいる。昨年10月、イプシロン6号機が発射後に異常を生じ、指令破壊された。今年3月には、新型主力機H3ロケット初号機を打ち上げたが、2段目のエンジンが着火せず、やはり指令破壊された。今回は試験中の失敗だが、2024年度の初号機打ち上げを目指すイプシロンSの開発計画に影響しそうだ。
宇宙開発に詳しい沢岡昭・大同大名誉学長は「今回の試験では2段モーターの燃料を現行ロケットより増やしてはいるが構造的に大きな違いはなく、起きるはずのないトラブルが起きたというのが第一印象」と指摘。「調査などで打ち上げが1年程度遅れる可能性もある。改めてロケット開発は時間とコストがかかるものと覚悟を決め、着実に進めてほしい」と話している。【田中韻】