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男性よりも女性の方が冠動脈バイパス術(CABG)の生存率が低いことは以前から知られていたが、その理由は不明だった。こうした中、米ワイル・コーネル・メディスン心臓胸部外科分野教授のMario Gaudino氏らが、その説明となり得る研究結果を報告した。その研究によると、女性は男性よりも手術中に貧血に陥りやすく、それが死亡リスクの上昇につながっている可能性が示されたという。この研究結果の詳細は、「Journal of the American College of Cardiology」に3月5日掲載された。研究グループは、「この結果を受け、CABGを受ける女性患者の生存率を高める安全策に拍車がかかるはずだ」と述べている。
この研究は、米国胸部外科学会がまとめたデータベース(The Society of Thoracic Surgeons Adult Cardiac Surgery Database)から抽出した、2011年から2022年の間に初めてCABGを受けた成人患者143万4,225人(女性34万4,357人)を対象に、手術(CABG)中の貧血、死亡、および性別の関係を調べたもの。主要アウトカムとした手術死亡率に対する女性の性別の影響を寄与リスク(AR)として算出し、さらに、手術中の貧血がこの関係をどの程度媒介しているかも検討した。
体格の違いや白血球数の多寡が原因か
その結果、女性は男性よりも手術中の最低ヘマトクリット値(中央値)が低く(22.0%対27.0%)、手術死亡率が高いことが明らかになった(2.8%対1.7%、P<0.001、調整オッズ比1.36、95%信頼区間1.30〜1.41)。女性の性別のARは1.21(95%信頼区間1.17〜1.24)であったが、手術中の最低ヘマトクリット値で調整すると、1.12(同1.09〜1.16)まで43%低下した。媒介分析からは、手術中の貧血が、女性の性別と関連する手術死亡リスクの38.5%を媒介していることが示された。
こうした結果を受けて研究グループは、出血を最小限に抑えることが、「CABGを受ける女性の手術死亡率を改善し、性差を縮小するための実行可能な目標だ」と主張している。
研究グループによると、CABG中の患者の生命を維持する人工心肺装置では、血液を希釈して体外循環させるため、ある程度の貧血はつきものだと説明する。しかし、女性は概して男性よりも体格が小さく、また、CABG前の赤血球数も男性より少ない傾向があるため、手術中に貧血を起こしやすいのだという。
ただし、この研究は、手術中の貧血が女性の生存率を低下させる主因であることを決定的に証明するために実施されたものではない。それでも研究グループは、女性患者の生存率を向上させるためにもっと多くのことができるはずだと考えている。その例として、「例えば、回路の短い人工心肺装置を使用すれば、ポンプを作動させるのに必要な血液希釈液の量を制限することができる」と研究グループは話している。Gaudino氏は、このような介入の有効性を証明するための臨床試験が「喫緊に必要だ」と述べている。
(HealthDay News 2024年4月12日)
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