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毎日新聞 2023/8/29 東京朝刊 有料記事 797文字
上場企業に女性管理職比率などの情報開示が義務付けられた=東京都中央区の東京証券取引所で、宮武祐希撮影
なるほドリ 人的資本経営(じんてきしほんけいえい)って何?
記者 働く人の知識や経験、能力を「資本」と捉えて、企業の競争力強化につなげようとする経営のことです。欧米の投資家らを中心に、企業が持つ工場などの有形資産(ゆうけいしさん)だけではなく、働く人のスキルなどの無形(むけい)資産を重視して企業の価値を判断する傾向が強まっています。
Q 日本はどうなの?
A 政府の資料によると、欧米では国内総生産(こくないそうせいさん)(GDP)に占める人への投資は1~2%ですが、日本は0・1%程度。日本の企業は利益を従業員の育成などに回さずに、社内に蓄えているケースが多いとされています。このため、政府もテコ入れを始めました。企業が事業内容や業績を説明する「有価証券報告書(ゆうかしょうけんほうこくしょ)」で2023年3月期から、女性管理職比率や人材育成方針などの情報開示が義務化されました。上場企業など約4000社が対象です。従業員の状況を投資家にチェックしてもらうのが狙いです。
Q 企業は具体的に何をしているの?
A 市場のニーズに応じた新たな知識や技術を学ぶ「リスキリング」の環境整備や、従業員が活躍できる適切な配置や働き方などを進めています。ファッションビルを展開する丸井グループは、多様な人材が活躍できるよう「男性の育休取得率100%」という実績や「26年3月期までに女性リーダー比率40%」といった目標の進捗(しんちょく)状況を公開しています。情報開示は優秀な人材確保につながると考える企業も多いです。
Q 日本でも人的資本経営が進みそうだね。
A どう情報開示をすればいいか手探りの企業もあります。人的資本経営に詳しいリクルートの津田郁(つだかおる)氏は「単なる情報開示に終始すると意味がない。企業は投資と実践を一貫して考え、従業員も主体的に学ぶ意識が必要だ」としています。(経済部)