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毎日新聞 2023/9/22 東京朝刊 有料記事 816文字
関西電力高浜原発=福井県高浜町で、本社ヘリから北村隆夫撮影
なるほドリ 国内で一番古い原発が再稼働(かどう)したんだって?
記者 関西電力の高浜(たかはま)原発1号機(福井県高浜町)ですね。1974年11月に運転を始め、間もなく49年を迎えます。2011年から定期検査で停止していましたが、今年7月に再稼働しました。1号機より1年遅く運転を始めた2号機も9月15日に再稼働したところです。
Q そんな古い原発を使っていいの?
A 東京電力福島第1原発事故まで明確な上限はありませんでしたが、12年に原子炉(ろ)等規制(きせい)法が改正され、運転期間は原則40年、最長60年となりました。ただ、今年5月には脱炭素(だつたんそ)社会を目指す法改正の一環(いっかん)で、安全審査(しんさ)などで停止している間を運転期間から除くことで、60年超の運転も可能になりました。
Q 世界ではどうなっているの?
A 米国でも運転期間は40年ですが、20年の延長更新(こうしん)が何度でもでき、80年の運転を認可された原発もあります。英国やフランスでは運転期間に制限はなく、10年ごとの安全審査が義務付けられています。
Q 老朽化(ろうきゅうか)しないのかな?
A 経年劣化(けいねんれっか)のリスクは当然あります。核分裂(かくぶんれつ)の熱で作った水蒸気で発電する構造上、配管(はいかん)が高温高圧(こうおんこうあつ)ですり減(へ)ります。また核燃料(ねんりょう)から放出される中性子(ちゅうせいし)を長時間浴び続けることで、原子炉自体ももろくなってしまいます。
Q いつまでも使えないんだね。
A 世界最長の運転期間はインド・タラプール原発の53年で、原子力規制委員会は60年超えを「未知の領域(りょういき)」と評しています。60年超の原発には追加の点検が義務付けられましたが、原発は巨大かつ複雑で、炉の交換もできません。安全を最優先に審査できるのか。政府と電力会社の姿勢が問われます。(大阪科学環境部)