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毎日新聞 2023/9/24 東京朝刊 614文字
世界遺産・厳島神社で知られる宮島(広島県廿日市(はつかいち)市)は、人の立ち入りや居住がもともと厳しく制限されていたとされる。「時代が降るとともに神職らが常住するようになり、後に一般の人々も移住」したと伝えられる(厳島信仰事典)▲いまや、多い年で年間450万を超す人が来島する宮島である。その島を観光客が訪れるたびに市に税金を納める「宮島訪問税」が、来月からスタートする。島の住民や通勤客らを除き、島に渡る人の往路のフェリー代に100円を上乗せする、いわば「入島税」だ▲自治体の独自課税は、国の施策に反しないことや、他税との二重課税や過重でないことなどを条件に、国が同意すれば導入できる。入島税は沖縄の一部離島でも実施したが、観光客をターゲットとしたものは初めてという▲宮島観光には船舶が不可欠という地の利に着目した課税だ。年間で約3億円の税収を市は見込む。島の公衆トイレ維持管理や環境整備など、観光客増加に伴う「オーバーツーリズム」対策にあてる予定という▲観光に関する独自課税を巡っては、東京都が創設したホテルや旅館での「宿泊税」も近年増えており、9自治体に広がっている。全国の観光地ににぎわいが戻ってきた昨今だ。観光需要の増加に伴うコストの分担を観光客にも求める自治体は、今後も増えるかもしれない▲いたずらに新税ラッシュに陥らず、観光客も納得できるような使い道を示すことができるか。工夫と透明性が試される地方の独自課税だ。