해협을 건너서 4

[goldwell]

(４）親善歌手・梨花 
        친선가수 이화

騒然の世情やわらげた「懸け橋」
소란한 세태를 완화시킨 “가교”

　「ソウルの夜　韓国ゴールデン・ヒット・メドレー」というＬＰレコードがある。昭和４２（１９６７）年１１月、コロムビアレコード（現・コロムビアミュージックエンタテインメント）から発売された。「日韓親善歌手」と謳（うた）われた梨花のデビューアルバムだ。

“서울의 밤 한국골든히트 메들리”라는 LP레코드가 있다. 1967년11월 컬럼비아레 코드(현 컬럼비아뮤직엔터테인먼트)에서 판매되었다 “일한친선가수”라고 불리던 이화의 데뷔 앨범이다.

　本名は池谷（現在は野元）波津子（はつこ）。日本人である。

본명은 이케다니(현재는 노모토) 하쓰코. 일본인이다.

　その２年前、日韓基本条約が結ばれ、両国の国交は正常化していた。しかし、条約の是非をめぐって韓国内の不満はもとより、国会でも与野党が激しく対立し、衆院議長の船田中らが引責辞任した。

그 2년 전, 한일기본조약이 체결되고 양국의 국교가 정상화되었다. 그러나 조약의 시비를 둘러싸고 한국 내의 불만은 물론, 의회에서도 여야당이 격심하게 대립하여 중의원 의장인 후나다 나카 등이 인책 사임했다. 

　その船田が騒然となった世情を歌で和らげようとコロムビアに持ちかけたのが、「日韓親善歌手」のアイデアだった。戦前・戦中は韓国大衆歌謡の編曲も手がけた作曲家・万城目正の内弟子で、当時、デビューを待っていた梨花に白羽の矢が立った。

그 후나다가 어수선하던 세태를 노래로 화합해보려고 컬럼비아에 제의한 것이 “일한친선가수”라는 아이디어였다. 전전, 전후에 한국대중가요의 편곡에도 손을 댔던 만죠메 다다시가 데리고 있는 제자로, 당시 데뷔를 기다리고 있던 이화를 지목했다.

　「会社からいきなり言われましたね、船田先生からの依頼だと。政治的なことはまったくわからなかったけれど、とにかくこれでレコードを出せるんだとほっとしました」

“회사에서 갑자기 말이 나왔어요. 후나다 선생의 의뢰라고 말이죠. 정치적인 것은 전혀 모르지만 어찌되든 이걸로 레코드를 낼 수 있겠다고 생각되어 한 시름덜었지요.” 

　ソウルの女子大の名にちなみ、梨花と名づけられた。

서울에 있는 여자대학교의 이름을 따서 이화라는 이름이 정해졌다.

　梨花のもとへ、すぐさま膨大な枚数のレコードが届けられた。アルバムに盛り込む曲を選ばせるためレコード会社が韓国から取り寄せたのだ。

이화 앞으로 바로 방대한 숫자의 레코드가 보내졌다. 앨범에 삽입할 곡을 선정하도록 레코드회사가 한국에서 가져온 것이다.

　戦前・戦中に朝鮮半島で流行した歌や、当時の韓国のヒット曲なども含まれていた。「アリラン」「木浦の涙」「断腸のミアリ峠」「雨の湖南線」…。

전전과 전시에 한반도에서 유행했던 노래와 당시 한국에서 히트한 곡들도 포함되어있다. “아리랑” “목포의 눈물” “단장의 미아리고개” “비 내리는 호남선” 등등.

   それまで韓国歌謡を聴いたこともなかった梨花だが、「言葉はわからないけれど韓国の歌手は歌声に独特の哀愁がありましたね」と語る。

그 때까지 한국가요를 들은 적이 없는 이화였지만 “말은 알 수 없지만 한국 가수의 노래소리에 독특한 애수가 있었어요” 라고 말했다.

　最も印象深かったのは「黄色いシャツの男」（作詞・作曲、孫夕友）だったという。陽気なウエスタン調の明るいメロディーが多くの韓国人に受け入れられていた。「哀愁漂う曲が圧倒的な中で異色でした。旋律もすばらしい。ピーンときました。どうしても歌いたいと会社にせがんだほどです」

가장 인상 깊었던 것이 “노란셔츠 입은 사나이”(작사, 작곡 손석우)였다고 한다. 쾌활한 웨스턴조의 밝은 멜로디가 많은 한국인에게 받아들여지고 있었다. “애수에 찬 곡이 압도적인 가운데 이색적이었고 선율도 멋있었고 마음에 쑥 들었지요. 어떻게 하든 부르고 싶다고 졸랐을 정도였으니까요”. 

　孫夕友とはよほど縁があるのだろう。日韓親善歌手として、韓国の歌番組にゲスト出演した際、審査員で居合わせたのも孫夕友だった。日本語が禁じられていた時代。梨花はチマ・チョゴリ姿で「黄色いシャツの男」を韓国の言葉で歌った。

손석우와는 꽤 인연이 있었던 같다. 일한친선가수로서 한국의 노래프로에 게스트 출연했을 때 심사원으로서 마침 그 자리에 손석우도 있었다. 일본어가 금지되던 시대로 이화는 치마저고리 차림으로 “노란셔츠 입은 사나이”를 한국어로 불렀다.

　数年後、日本滞在中の孫夕友と再会、あの歌番組の話題で盛り上がったという。

수년 후 일본　체재 중의 손석우와 재회하고 그 때 노래프로를 화제로 뜨거웠다고 한다.  

　「未発表ですが、私の詞に先生がメロディーをつけてくれた曲もあるんですよ」

“미발표지만 내 가사에 선생이 멜로디를 붙여준 곡도 있어요”

　幸せな関係は以後も続く。

좋은 관계는 이후에도 계속되었다. 

　デビューアルバムのレコーディングに備え、梨花は在日韓国人たちを前に歌ってみた。歌詞を丸覚えして。だが…。

데뷔 앨범의 레코딩에 대비해서 이화는 재일한국인 앞에서 노래를 불러보았다.

　「まったく通じなかった」

“전혀 먹혀 들지 않았어”

　ハングルが読めないと正確な発音はできないと痛感した。そこで猛特訓を受け、短期間で身につけたという。

한글을 읽을 수 없으면 정확한 발음을 낼 수 없다고 통감했다. 그래서 맹훈련을 받고 단기간에 습득했다고 한다.

　「販売ターゲットは在日の人たちでした。日本にいて韓国の歌に親しむ機会に恵まれない彼らのために歌う。伝わらなきゃ意味がない」

“판매 목적이 재일 한국인들이었지요. 일본에 있으면서 한국노래를 즐기는 기회가 흔치 않았던 그들을 위해 노래를 하는데 통하지 않으면 의미가 없잖아요”

   努力のかいあって、「木浦の涙」や「黄色いシャツの男」など韓国人になじみの深い１２曲を吹き込んだこのアルバムは、限定２万枚をすぐに完売した。

노력한 보람이 있어 “목포의 눈물”이나 “노란셔츠 입은 사나이” 등, 한국인에 친숙한 12곡을 취입한 이 앨범은 한정판 2만장이 바로 매진되었다.

　日韓親善歌手は多忙だった。在日の人たちなどが主催するステージや結婚式などに招かれては韓国歌謡を歌う日々。

일한친선가수는 매우 바빴다. 재일한국인들이 주최하는 스테이지나 결혼식 등에 초청되어 한국가요를 노래하는 바쁜 나날이었다.

　「懐かしんでくれてね。年配の人たちはよく泣いてました」

“그리워하셨지요. 나이 든 사람들은 잘 울기도 했어요”

　ハプニングもあった。新潟のクラブで歌っていたとき、客席で乱闘騒ぎが起こったのだ。北朝鮮に帰国する在日朝鮮人たちのグループだった。「日韓親善だとぉ、日朝だろうが！」

해프닝도 있었다. 니이가타에 있는 클럽에서 노래하고 있을 때 객석에서 난투가 벌어졌다. 북조선에 귀국하는 재일조선인들 그룹이었다. “일한친선이라니, 일조가 아니냐!”

　越えがたい壁を感じた。

높은 장벽을 느꼈다.

　「梨花」は結婚を機に引退し、約１０年の橋渡しの役目を終えた。

 이화는 결혼을 계기로 은퇴하여 약10년간의 가교역할을 끝냈다.


(５）キム・ヨンジャの決意 
      김연자의 결의

    両国のきずな　歌でつなぐ
     양국의 유대를 노래로 잇다

　今年１月２７日、キム・ヨンジャ（金蓮子）は大阪・新歌舞伎座のステージに立っていた。タイトルは「ひばりを唄う」。「真赤な太陽」や「悲しい酒」「川の流れのように」…。美空ひばりの往年のヒット曲を歌い上げた。

금년1월27일 김연자는 오사카 신가부키자의 스테이지에 섰다. 타이틀은 “히바리를 노래하다”. “맛가나 타이요” “까나시이 사케” “카와노 나가레노 요니” 등등. 미소라 히바리의 왕년의 히트곡을 노래했다.

　さらに「朱蒙」「宮廷女官チャングムの誓い」など韓国ドラマの主題歌をチマ・チョゴリ姿で。韓流ブームの影響もあって、ファンからのリクエストが多いのだという。本場の歌手に歌ってほしい、そんな思いに応えた。

그리고 또 “주몽” “궁정 여관 장금의 맹서” 등 한국드라마의 주제가를 치마저고리 차림으로 불렀다. 한류 붐의 영향도 있고, 팬으로부터 리퀘스트도 많았었다고 한다. 본고장의 가수가 부르는 노래를 듣고 싶어하는 그런 생각을 의식해서 노래를 불렀다.  

                         <역자 주: 대장금의 노래에는 제목이 없다. “오나라”라 하기도 함>

　「昔の韓国の曲も歌いたいのですが旬なので。２０年前に比べると韓国の歌が受け入れられているなあと実感しますね」

“옛날 한국의 곡도 불러보고 싶었지만 그런 시기가 아니었지요. 20년 전에 비하면 한국노래가 받아들여지고 있구나 하고 실감했어요”

　このステージの２日前が５０歳の誕生日だった。１５歳のとき、韓国ＴＢＣテレビの「全国歌謡新人スターショー」で優勝してデビューし、日本に活動の拠点を移して２０年余り。ＮＨＫ紅白歌合戦にも３度出場した。

이 스테이지 이틀 전이 50세의 생일이었다. 15세 때에 한국TBCTV의 “전국가요신인스타쇼”에서 우승하고 데뷔했다. 일본에 활동의 거점을 옮긴 지 20년 여, NHK홍백가합전에도 세 번 나갔다.

　「最近の日本のファンは韓国についてたくさん情報を持っていますよ。もう私以上に」

“최근 일본 팬은 한국에 대해서 많은 정보를 가지고 있어요. 나보다 많아요”

　明るく笑うキム・ヨンジャもまた、韓国から来た“日韓親善歌手”である。

밝게 웃는 김연자 또한 한국에서 온 “한일친선가수”인 것이다.

　幼いころから歌うことが大好きだった。あの時代、日本の歌が公の場で歌われる機会はほとんどない。にもかかわらず父親は、美空ひばりの歌をよく聴いていたという。「ひばりさんは私のあこがれでした」

어릴 때부터 노래하기를 좋아했다. 그 시대에는 일본노래를 공공장소에서 들을 기회가 거의 없었다. 그럼에도 불구하고 부친은 미소라 히바리의 노래를 자주 듣고 있었다고 한다. “히바리상은 내 동경의 대상이었다”  

   一方、母親は日本の統治下で流行した「木浦の涙」をよく歌っていた。「故郷の光州にご当地ソングがなかったんです。だから（近隣の）木浦にちなんだ『木浦の涙』をみんな歌ってましたね。おかげでいまでは私の十八番です」

한편 모친은 일본 제국시대에 유행한 “목포의 눈물”을 잘 불렀었다. “고향인 광주에는 고장의 노래가 없었지요. 그래서 가까이에 있는 목포를 테마로 한 “목포의 눈물”을 모두가 불렀지요. 덕택으로 지금은 내 18번이 되었지요”

　父のお気に入りと母の歌声が歌手になる夢をはぐくんだ。

부친이 좋아하던 노래와 모친의 노랫소리가 가수로의 꿈을 키웠다. 

　しかし、思いがかなってデビューしたものの、しばらくはヒット曲に恵まれなかった。

그러나 소망하던 데뷔는 이루었지만 한 동안은 히트곡에 인연이 없었다. 

　転機は１９８１（昭和５６）年に訪れる。その年発表したアルバム「歌の花束」だった。１９３０年代から７０年代まで韓国でヒットした大衆歌謡など数十曲を軽快なリズムにアレンジし、それぞれワンコーラスをメドレーで歌ったのだ。

기회는 1981년에 왔다. 그 해 발표한 앨범 “노래의 꽃다발”이었다. 1930년대부터 70년대까지 한국에서 히트한 대중가요 수십 곡을 경쾌한 리듬으로 편곡해서 각각 원 코러스를 메들리로 노래한 것이다. 

　「木浦の涙」「泣くな紅桃（ホンド）」「断腸のミアリ峠」…。これが韓国のレコード史上空前の３６０万枚を売り上げた。

“목포의 눈물” “홍도야 울지마” “단장의 미아리고개” 등. 이것이 한국의 레코드사상 공전의 360만장 매상을 기록했다.


　キム・ヨンジャの夫でバンドマスターの岡宏は「昔の作曲家や作詞家、歌手が残した財産、半ば埋もれていた名曲を生き返らせたと思っています」と語る。多くの韓国人が、忘れかけていた記憶を取り戻した。

김연자의 남편인 밴드마스터 오까 히로시는 “옛날의 작곡가, 작사가, 가수들이 남긴 재산인 명곡이 반쯤 매장되었던 것을 되살렸다고 생각합니다”라고 말하고 있다. 많은 한국인이 잊어가고 있던 기억을 되찾은 것이다.  

　キム・ヨンジャは歌いながら確かに感じるものがあった。

김연자는 노래하면서 확실히 느끼는 무언가 있었다.

　「あのころの歌は哀（かな）しい時代の庶民の感情を遠まわしに表現していたのだと思う。だから時代を超えて感動を与えてくれます。決して古びない」

“그 당시의 노래는 슬픈 시대의 서민감정을 에둘러 표현하고 있었다고 생각해요. 그러니까 시대를 초월해서 감동을 주게 됩니다. 결코 녹슬지 않지요”

　韓国のスター歌手、キム・ヨンジャは１９８８年、ソウル五輪のテーマソング「朝の国から」を引っさげて日本での活動を本格化させた。翌年、この曲で紅白歌合戦初出場を果たす。

한국의 스타가수 김연자는 1988년 서울올림픽의 테마송 “아침의 나라에서”를 들고 일본에서의 활동을 본격화했다. 이듬해 이 곡으로 홍백가합전 출연을 이룬다.

　なぜ日本だったのか。

왜 일본이었을까?

　韓国の歌謡界では、日本の演歌にあたる「トロット」のイメージが固定すると違うジャンルの歌にめぐり会えるチャンスが少ないという。

한국 가요계에서는 일본의 엔카에 해당하는 “트로트”로 이미지가 고정되면 다른 장르의 노래에 접하는 기회가 적다고 한다. 

　韓国日報で音楽事情に詳しい元記者、佐野良一は「日本は韓国より市場がずっと大きく、いろいろな歌にも挑戦できる。おそらく歌手としての可能性に賭けたのでしょう」と話す。

한국일보에서 음악사정에 소상한 전 기자 사노 료이치는 “일본은 한국보다 시장이 훨씬 크고 여러 가지 노래에도 도전할 수 있다. 아마도 가수로서의 가능성에 크게 기대했던 거겠지요” 

　美空ひばりがジャズなどを歌う姿を見て勇気をもらったかもしれない。日本は大きくはばたける国だった。

미소라 히바리가 재즈를 부르는 모습을 보고 용기를 갖게 되었는지도 모른다. 일본은 크게 활개를 칠 수 있는 나라였다.

　当のキム・ヨンジャはもっと大切なことがあると強調する。「私の役割は“日韓歌謡大使”」と語った。

김연자 본인은 더 소중한 것이 있다고 강조한다. “내 역할은 한일가요대사” 라고 했다. 

　「歌を通じて韓国を、その文化を日本の皆さんに伝えること。両国にある壁を少しでも低くしたい」

“노래를 통해서 한국을, 또 문화를 일본의 여러분에게 전하는 것. 양국에 있는 벽을 조금이라도 낮추고 싶어요”

　それぞれの思いが築く壁。ならば、ゆっくりと時間をかけてお互いの理解を深めよう。その一端を担いたい、と。

여러 가지 생각들이 쌓은 벽. 그렇다면 천천히 시간을 두고 서로의 이해를 깊게 해 나가자. 그 일익을 짊어지고 싶다고. 

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