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米国の20歳以上の成人の10人中9人が、心血管・腎・代謝症候群(cardiovascular-kidney-metabolic syndrome;CKM症候群)の初期から後期の段階にあり、10%近くはすでに心血管疾患(CVD)を発症しているとする研究結果が報告された。米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院とハーバード医学大学院のMuthiah Vaduganathan氏らによるこの研究は、「Journal of the American Medical Association(JAMA)」に5月8日掲載された。
CKM症候群は、米国心臓協会(AHA)により新たに提唱された疾患概念で、肥満や糖尿病などの代謝リスク因子、慢性腎臓病(CKD)、および心不全・心房細動・冠動脈疾患・脳卒中・末梢動脈疾患などのCVDの関連に起因する健康障害と定義される。CKM症候群は、次の4つのステージに分けられる。・ステージ1:体内に健康不良のリスク因子である脂肪が過剰に蓄積する。・ステージ2:高血圧、高コレステロール、糖尿病などの代謝リスク因子が顕在化するとともに、CKDリスクが中等度から高度になる。・ステージ3:高度の腎臓病リスク、および/または、今後10年以内にCVDの診断を受けるリスクが高まる。・ステージ4:腎臓病の有無にかかわらずCVDの診断を受ける。
研究グループは今回の研究で、2011年から2020年までの米国全国健康栄養調査(NHANES)のデータを分析し、上記の4つのステージに該当する20歳以上の米国成人の数を概算した。対象者は1万762人(平均年齢47.3±17.0歳、女性51.8%)であった。
重症度 年齢とともに上昇
その結果、研究対象期間中にCKM症候群に該当しなかった(ステージ0)対象者の割合はわずか10.6%であり、25.9%がステージ1、49.0%がステージ2、5.4%がステージ3、9.2%がステージ4に該当することが明らかになった。これらの数値は、9年間の研究期間を通じてほぼ横ばいであったという。
また、想像される結果ではあるが、CKM症候群の重症度は年齢とともに上昇する傾向があることも示された。ステージ3とステージ4を合わせた「進行したCKM症候群」に該当する対象者の割合は、65歳以上では55.3%であったのに対し、45〜64歳では10.7%、20〜44歳では2.1%であった。ただし、20〜44歳の人でもリスクは高く、ほとんど(81.8%)が、すでにこれらの心臓と腎臓のリスク因子の影響を受けていることを意味するステージ1〜4に分類された(ステージ1:36.6%、ステージ2:43.2%、ステージ3:0.1%、ステージ4:1.9%)。さらに人種も重要な因子であり、黒人は白人に比べて進行したCKM症候群であるリスクが38%高かった。
研究グループは、黒人の間でCKM症候群が広がっていることを指摘し、「心血管、腎臓、代謝の健康を優先させる公平なヘルスケアアプローチが喫緊に必要とされている」と結論付けている。
(HealthDay News 2024年5月8日)
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