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食材の栄養は気にするのに、調味料はあまり気にしない人、結構いませんか。つい、トマトケチャップをたっぷりご飯と混ぜ合わせてオムライスを作ったり、サラダやご飯にマヨネーズをたっぷりかけたり……。しかし、調味料も決してカロリーゼロではありません。脂質も塩分もそれなりに含んでいます。取り過ぎて血糖値が上がり、びっくりされる糖尿病の患者さんもいます。今回は、意外と頭から抜け落ちている調味料のこわさについて、お伝えしたいと思います。
種類豊富な調味料
先日、お役人だった方からこんな質問を受けました。
「ファミリーレストランに行った際、若い両親と小学生くらいの子どもが食事していたのですが、フライドポテトが見えなくなるくらい、真っ赤なケチャップをかけ、さらに上からたっぷり塩を振りかけ、みんなでおいしそうに食べていました。先生、どう思われますか!?」
ケチャップは、誰もが好きな調味料の一つだと思います。私も大好きです。
日本で使われる調味料は、料理の基本「さしすせそ」で知られる、砂糖、塩、酢、しょうゆ、みそをはじめ、酒、トマトケチャップ、マヨネーズ、ソース、ドレッシング――などたくさんあります。
塩と砂糖そのものについてはどなたも分量に気を付けていると思いますが、溶け込んで見えない調味料については、あまり気にしていない人が少なくないのではないでしょうか。
最近も、40代の女性患者が朝食から1時間後に受けた血液検査の血糖値をみて、「正常値(食後140mg/dL)より120mg/dLも高い! コンビニで買った野菜サンドイッチしか食べていないのに」と驚いていました。他にも、入院中の50代の女性患者が「野菜のサラダ巻き一つしか食べていないのに、正常値より160mg/dLも血糖値が高いのはどうしてなの?」と困惑していました。いずれも野菜やお米は問題になりません。おそらくマヨネーズか、すし酢に含まれた砂糖が関係していると思われます。
たっぷりのケチャップ、栄養成分は?
トマトケチャップは、野菜であるトマトが材料ということもあって、少しくらい多めに使っても健康的じゃないかと、つい思ってしまいがちです。実は私も、卵や油脂を材料として使うマヨネーズは慎重に使っていますが、ケチャップはつい甘くなっています。
オムライスなんか作る時は、トマトの味がしっかりご飯に浸透するようケチャップをたっぷりかけ、ご飯が真っ赤になるまで混ぜて炒めます。半熟の卵でくるんだ後、仕上げに上からケチャップをたっぷりかけています。また、最後にケチャップで名前を書いている人もいることでしょう。
では、トマトケチャップの栄養成分はどうなっているのでしょうか。とあるメーカーのホームページをみると、ケチャップは100gあたり、
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エネルギー 118kcal
たんぱく質 1.6g
脂質 0g
炭水化物 27.9g
食塩相当量 3.3g
カリウム 430mg
リコピン 18mg
とありました。大さじ1杯(15g)に換算すると、
エネルギー 17.7kcal
たんぱく質 0.2g
脂質 0g
炭水化物 4.2g
食塩相当量 0.5g
カリウム 64.5mg
リコピン 2.7mg
です。オムライス(1人分)はだいたい、ソースの分を含めケチャップを大さじ4杯(60g)使うのが一般的です。私のように、これじゃあ物足りないと、ちょっと多めに5杯(75g)ほど使う人も結構いるのではないかと思います。その場合、
エネルギー 88.5kcal
たんぱく質 1.0g
脂質 0g
炭水化物 21g
食塩相当量 2.5g
カリウム 322.5mg
リコピン 13.5mg
となります。これだけみても、スティックシュガー(1本あたり炭水化物3g)7本分に近い炭水化物が含まれています。食塩も、オムライスのケチャップだけで女性の1日の摂取目標量(6.5g未満)の3分の1、すなわち1食分を超えてしまいます。高血圧や腎臓が悪く、2g近い食塩を含むお漬物を控えていても、ケチャップだけで同じくらいの量を摂取してしまう計算です。
自分で計算をしてみて、あまりに炭水化物や食塩が含まれているのに気づき、驚いてしまいました。オムライスを作る時は市販のケチャップの代わりに、トマトピューレか、生トマトを使って自分でピューレをつくり、半分くらい市販のケチャップと混ぜて使うようにしています。もちろん、外食でオムライスを選ぶときにも注意が必要です。
脂質の多いマヨネーズは要注意
トマトケチャップと同じくらい、みなさんに親しまれている調味料の一つにマヨネーズがあります。これは卵と油脂から作られるため、使用量が多くならないように気を配っている人も多いかと思います。とくに、糖尿病の患者さんに食事療法を勧める際、ポテトサラダは栄養的にはサラダのグループには入らないとともに、マヨネーズを使いすぎてしまわないように注意を促しています。
栄養成分は、大さじ1杯(15g)あたり、
エネルギー 100kcal
たんぱく質 0.4g
脂質 11.2g
炭水化物 0.1g
食塩相当量 0.3g
です。トマトケチャップと違い、脂質をたっぷり含んでいます。
この栄養成分をみて驚くのは、味からしててっきり塩分はケチャップよりマヨネーズの方が多いと思っていましたが、実はケチャップの方が多いのです。
また、使用する量も、ケチャップの方がマヨネーズより多くなりがちであることを考えると、商品のパッケージの裏や側面にある栄養成分表示を確認し、体に入る量をそのつど確かめることを習慣化しておくことは大切かと思います。もちろん、常に見る必要はありませんが、一度確認して、何がどれぐらい入っているかイメージを持っておくといいでしょう。
患者さんからよく、「お酢は使ってもよいのですか?」と質問されます。マヨネーズの使う量を減らすために使うのでしょうか。最近は、病的な代謝異常関連脂肪性肝疾患(MAFLD)を改善し、肝炎や肝がんの発生や、糖尿病や高血圧などをはじめとする生活習慣病の抑制によいという報告があります。
一方、濃いお酢が頻繁に歯に触れると、歯の硬いエナメル質が浸食される「酸蝕歯(さんしょくし)」の原因になるとの報告があります。人の体はpH7.4の弱アルカリ性です。ところが、虫歯菌が作り出す酸や、酢など飲食物に含まれる酸によってpH5.5以下の状態が続くと、エナメル質が溶けだします。ちなみに、一般的な食酢製品のpHは1.8~3.8程度、加工酢である「すし酢」もpH2.3~2.9程度につくられています。
カレーは揚げものと同じくらい?
カレーを簡単につくるのに欠かせないのが調味料の一種、カレールー。香辛料を使って一から作る場合は何が中に入っているのか分かりますが、ルーのような一つの塊になっていると、ただちに把握しづらいです。
カレールーを使う場合、つい余らせるのはもったいないと思い、1箱全部使い切ってカレーをまとめて作るご家庭は多いのではないでしょうか。2日も、3日も、3食続けてカレーということもあるのでは……。
実は、カレーは揚げものと同じくらい血糖値や中性脂肪の値が上がります。検査後、跳ね上がった血糖値を見て、カレーが続いたことを後悔し、落ち込む患者さんも結構います。そんな時、私は患者さんに「カレーもたまにはいいですよ。おいしいですからね。次は、少しずつルーを使って、カレーが続かないようにしましょうね」とアドバイスするようにしています。
まずは、カレールーの栄養成分を確認しましょう。たいてい、商品の裏側や側面に書かれています。
文部科学省策定の「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」によると、カレー1人分で、
カロリー 95kcalのカロリー(市販のカレールーひとかけら20g )
炭水化物 8.94g(このうち糖質が7.66g)
脂質 6.82g
たんぱく質 1.3g
とあります。これをみてわかるように、脂質は栄養成分の実に40%近くの重さを占めます。厚生労働省が策定する「日本人の食事摂取基準(20年)」では、脂質の摂取基準の目標は、食事の総エネルギー摂取量に対して20〜30%とされているので、調味料だけでも高脂質で、高カロリーな食べ物です。インターネットには、脂質を抑えつつも、おいしいカレーを作る方法も紹介されています。ぜひご覧になってください。
超加工食品にも気をつけたい
最近では利便性を求め、手軽に調理できる商品がたくさん発売されています。たまになら問題ないと思いますが、冷凍食品といった「超加工食品」にも調味料がたくさん使われているため、毎日使い続けることを問題視する報告も出ています。
私の患者さんにも、1年中、冷凍食品だけ食べ続けた方がいました。株をやっていて、その動きを見るために、食事の時間すらおしかったそうです。その後、重度の高血糖となって入院しましたが、血糖値はなかなか下がりませんでした。
旬のたべものを、自然のままに食べることがもっとも健康です。調味料には人工甘味料など舌の味覚には感じないものもあります。繊細な味覚を失ってしまい、味に鈍感となってしまうことで、調味料をさらに多く使うという悪循環を導きます。
調味料も体の中に入り、体を作る食べ物です。口に入れる前に、少しだけ立ち止まって考えてみることをお勧めします。
写真はゲッティ
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金子至寿佳
日本赤十字社 和歌山医療センター 糖尿病・内分泌内科部長
かねこ・しずか 三重県出身。医学博士。糖尿病医療に長く携わる。日本糖尿病学会がまとめた「第4次 対糖尿病5カ年計画」の作成委員も務めた。日本内科学会認定医及び内科専門医・指導医、日本糖尿病学会認定糖尿病専門医・指導医、日本内分泌学会認定内分泌代謝科専門医・指導医、日本老年病学会認定老年病専門医・指導医。インスリンやインクレチン治療薬研究に関する論文を多数執筆。2010年ごろから、糖尿病診療のかたわら子どもへの健康教育の充実を目指す活動を始め、2015年からは小中学校で出前授業や大人向けの健康講座を展開している。