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毎日新聞 2023/12/26 東京朝刊 613文字
チャットGPTの画面=東京都千代田区で2023年11月27日、渡部直樹撮影
年を代表する言葉を選ぶ国は多い。日本の今年の漢字は「税」だったが、卵や水の不足が指摘された台湾は「欠」、マレーシアは高価の意味の「貴」。どこも日々の生活に手いっぱいの庶民の姿が浮かぶ▲英語圏ではSNS上で流行した言葉やチャットGPTなど人工知能(AI)に関連する単語が選ばれている。英ケンブリッジ辞書の今年の単語は「ハルシネイト(hallucinate)」だ。辞書には「幻覚を起こす」とある▲薬の過剰摂取や合成麻薬が社会問題化している。その類いの言葉かと思ったが違った。対話型生成AIがもっともらしいウソをつくことを指すそうだ。名詞は「ハルシネーション」。日本でもカタカナ英語になりつつあるという▲科学論文作成も可能という触れ込みの生成AIが誤った主張を繰り返して数日で公開中止に追い込まれたこともある。膨大なデータを学習させても正しい回答が得られるとは限らない。対策をしても完全になくすことは困難という▲人の指示を実現させようと意図的にウソをついた例もあるらしい。幼児がウソをつくようになるのは2~3歳という。人格を持ち始めているのかと疑いたくなるが考えすぎだろう。「幻覚」を使うことにはAIの擬人化を促すと批判的な声もある▲手塚治虫さんが作り出した鉄腕アトムは病人を思いやってウソをつき「いいうそならついていいでしょう?」と弁解したことがある。そこまでいけば完璧だが、まだまだ不完全で取り扱いには注意が必要ということか。