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毎日新聞 2022/10/25 20:05(最終更新 10/25 20:13) 698文字
アミメアリ(奥)と害虫のカンザワハダニ=矢野修一・京都大助教提供
野菜や果樹などの農作物を食い荒らす害虫のハダニが、天敵のアリの足跡を避けることを突き止めた、と京都大などの研究チームが発表した。アリの足跡に含まれる化学物質を感知して回避しているという。この物質は農薬として使える可能性があり、チームは特許を出願した。
アリはフェロモンなどの化学物質を使い、仲間同士で「道しるべ」「警告」「仲間」「縄張り」といった情報を交換することが知られている。研究チームは、これらの物質が昆虫やハダニなど他の動物に影響を及ぼしている可能性に着目した。
実験では、ハダニを食べるアリと食べないアリそれぞれの足跡をつけた葉とつけていない葉を並べ、代表的なハダニ類であるナミハダニとカンザワハダニの2種類が避けるかどうかを調べた。その結果、2種類ともアリの足跡を避けた。枝でも同様の実験を行うと、やはりアリの足跡を避けた。このことから、ハダニは自分を捕食しないアリについても、念のために回避することが示されたという。
次に、アリの足跡から取り出した成分を二股に分かれたろ紙の通路の片方だけに塗ったところ、ハダニは足跡物質を塗った通路を避けて歩いた。
ハダニ類は農薬への抵抗性を取得しやすく、同じ農薬が数年で効かなくなる。このため、農業においてハダニ類の駆除は最重要課題の一つとなっている。矢野修一・京大助教(実験生態学)は「アリの足跡物質は、人体と環境に無害なハダニ駆除剤となり得る。足跡物質を恐れないハダニはアリに捕食されるので、(足跡物質を生かした農薬が開発されても)耐性を心配する必要がなくなる」と説明する。
研究成果はダニ学の国際学術誌オンライン版に掲載された。【菅沼舞】