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毎日新聞 2023/1/27 東京朝刊 有料記事 571文字
日本科学未来館から「AIスーツケース」を頼りに最寄り駅付近に向かう浅川智恵子館長。道路交通法の規定上、白杖も携行した=東京都江東区青海2で26日
盲導犬のように視覚障害者を誘導する自動ロボット「AIスーツケース」を開発している全盲の研究者で、日本科学未来館(東京都江東区)館長の浅川智恵子さんが26日、屋外での初の実演に挑戦した。浅川さんは「普段はまっすぐ歩くことにも気を付けている。こんなに気軽に駅に行けるのかと感動した」と喜んだ。
AIスーツケースは浅川さんが発案し、企業の協力を得て2017年に開発が始まった。目的地をセットすると、カメラやレーザー光によるセンサーで障害物を自動的に回避しながら進む。ヘッドホンからはナビ音声も流れる。
屋内ではすでに実証実験をしているが、今回は屋外での走行にあたり、段差を乗り越えられるよう車輪を大きくした。高精度の衛星測位システムも導入し、自らの位置を誤差10センチ以内で推定できるようにした。
この日は未来館から最寄り駅付近に向かう公道を歩いた。周囲を人に囲まれ、機械が位置を見失ってしまう場面もあったが、浅川さんは最大時速4キロですたすたと歩いた。
28日から2月6日まで、希望する視覚障害者らが未来館前で実証実験に参加する(募集はすでに締め切り)。浅川さんは「白杖(はくじょう)、盲導犬に続く第3のモビリティーエイド(移動補助手段)に位置づけていくのが目標だ。視覚障害者がもっと楽しく街を歩けるようになれば」と語った。【池田知広】