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厳しさ増すアニメ制作現場
@下請け
続いては日本のアニメの話題です。公開中の映画『エヴァンゲリオン』、週末の興行成績でトップとなりました。(すごくおもしろかったです。/感動しました)一方去年日本映画の売上一位となった『崖の上のポニョ』先週DVDが発売され、売れ行きが好調です。日本を代表する文化の一つとして海外で高く評価されている日本のアニメ、しかしその基盤が大きく揺らいでいます。こちらをご覧ください。これはアニメを動かしてみせるための元となる動画と呼ばれるものです。一枚一枚丁寧に描いて滑らかな動きを生み出すことで日本のアニメの魅力を支えています。動いてるように見えますね。しかしこの動画を担う若い人たちの環境が年々悪化していて、それが日本のアニメの将来を脅かしています。その現場を取材しました。
東京都内のアニメ製作会社です。動画を担当する三谷暢之さん(27)、宮崎駿監督に憧れ、6年前にアニメ業界に入りました。1日10時間以上机に向かう地道な作業、休みは月に4日ほどしか取れません。
(三谷暢之さん)ずっと仕事をしていると肩が痛くなったりするんで、それだけきつかったりしますね。
しかし収入は一月10万円程度にとどまっています。仕事は出来高制で動画を一枚描くと200円、どんなに努力してもつき500枚ほどが限界だといいます。三谷さんは家賃17,000円の4畳半のアパートに暮しています。食事はインスタント食品で済ませることがしばしばです。
(三谷暢之さん)近くにパンの耳とかが、安く売っているところがあって、それとかもたまに使ったりして…。
人を感動させるアニメを作りたい。夢を抱いてこの世界に入りましたが、収入の低さにくじけそうな時もあります。
(三谷暢之さん)たまに将来的なこととかを考えたときに、やっぱりどう考えてもこのままじゃ、難しいだろういうのはやっぱり考えたりしますね。
こうした労働環境は今、一層厳しさを増しています。今年5月アニメ製作者の団体によるシンポジウムで発表された調査結果です。20代の年収は平均110(110.4)万円、30代でも214(213.9)万円でした。(40代-401.2万円、50代-413.7万円、60代-491.5万円、70代-30万円)これでは生活できないと辞めていく若者も増えているといいます。(新人からあと数年の人たちにとってアニメーターという仕事が、すでに職業としてもうなりたっていないんですよ)なぜ収入が減っているのか?制作者団体の側では作業のデジタル化が進んだことで1人あたりの製作枚数が大幅に減ってることが背景にあると指摘しています。(今はこういうふうにコンピューターを使って色を塗ってるんですね)コンピューターは動画の線がしっかりつながっていないと塗る場所が判断できないため、細かい部分を寄り丁寧に手を使って描く必要があります。このため動画一枚にかかる時間がかえって増えました。一方簡単な作業はコンピューターが行うようになりました。夜走る車の動画です。光るライトの部分はこれまで制作者が手軽に描いて枚数をかせいでいましたが、今ではコンピューターにとってかわられています。(デジタル化して簡単な仕事が全部なくなってしまって、ちゃんと描かないといけない手間のかかる絵だけが全部残ってしまって、単価設定で仕事をしている動画の人っていうのは枚数が出来なくなって、それに合わせて収入が減っているというのが現状です)日本のアニメ特有のなめらかな動きは数多くの動画をかく人の手で支えられてきました。人材不足が続けば続けば高い質を維持することができないという危惧が製作現場に広がっています。アニメ監督の今敏さんです。2006年に制作した映画パプリカがアマチュア国際映画祭に正式出品されるなど国内外で高い評価を受けています。
(アニメ監督 今敏さん)質の低下は現在でもすでに起こっていることですけど、この状態が続けばアニメーションの画面というのはもっと貧相なものになるしうまい人が出てくるだけの土壌をきちんと作ってあげないと、ただ勝手にうまくなれってわけにはもういかないと思いますね。
こうした状況を変え、人材を育てていこうという動きが始まっています。東京の練馬区です。ここは日本初のカラー長編アニメ『白蛇伝』(1958)が制作され、日本アニメ発祥の地とも言われています。現在練馬区内にはアニメ関連の会社が90社以上集まっています。大切な地場産業を守ろうと区ではアニメ専門の部署を設置、制作会社と一緒に人材育成の方策を検討しています。
(アニメ会社代表)外のうまい人を招いて勉強会みたいなものを開きたいと思ったときに、ただその場を提供してもらえることとかっていうのが可能なのか?っていうのをちょっと考えたいな。