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毎日新聞2024/3/16 東京朝刊有料記事1011文字
参院政治倫理審査会を終え、記者団の取材に応じる自民党の世耕弘成前参院幹事長=国会内で2024年3月14日午前11時54分、竹内幹撮影
<do-ki>
テレビで参院政治倫理審査会を視聴し、どっと疲れた。中身のない割にやたら雄弁なしらを切る口上を延々聞かされたからだろう。見せ物にもなってやしない。全部見た人がどれほどいたか。
社説なら「疑問はますます深まった」と怒るのが正しい反応だが、コラムの勝手で言わせてもらえば、もううんざり。自民党幹部に聞くと、週明けの衆院政倫審も「驚く話は出ないよ」。
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政治資金パーティー裏金事件のうんざり感は、追及の仕方と別にある気がする。この泥沼をいくらさらっても、ろくなモノは出てこない。多くの人がうすうすそう感じているのではないか。
政治家による長年の組織的違法行為は許しがたい。1人で裏金数千万円というのも常識外れ。森喜朗元首相はいろいろ語れるはずだ。でも、始まりや仕組みや続けた理由を知っても、巨悪とかけ離れたあまりのみみっちさに、きっと拍子抜けするに違いない。
「裏金議員」の見本といえば、薗浦健太郎元衆院議員。麻生太郎副総裁の側近で、安倍晋三氏の首相補佐官(国家安全保障担当)だった。派閥を介さず権力者の威光を背に個人で集めたパーティー収入を、2018~20年に約4900万円も政治資金収支報告書に記載せず、政治資金規正法違反の罪で罰金100万円、公民権停止3年の略式命令を受けた。
裏金はどうしたか。東京・銀座で遊興費に使っていたとの週刊誌報道もあったが、1月21日付読売新聞に興味深い記事が載った。
パーティー収入ではないが、政治とカネの問題でいつも論点になる「調査研究広報滞在費」(旧文書通信交通滞在費)のことだ。国会議員は歳費(給与)と別に毎月100万円支給され、使途を明らかにする必要がない。
刑事事件の訴訟終結後に閲覧できる刑事確定記録によると、薗浦氏の元政策秘書(有罪確定)は東京地検特捜部の事情聴取に、「旧文通費」から、薗浦氏が自宅とは別に家族と過ごすマンションの家賃、国民健康保険料や国民年金保険料、住民税などの公租公課を支払っていたと供述したそうだ。要は生活費である。
薗浦氏は読売新聞の取材に「私的な支出を立て替えた場合には、歳費から差し引いていたと認識している」と答えたらしい。
ロッキード事件の特捜検事だった堀田力氏は、平成の終わりに「政治家の事件が規模も内容も昭和に比べて小さくなった。これは進歩なのかな」と述懐していた。怒るべき事件への怒りも萎える。政治が縮んでいる。(専門編集委員)