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更年期女性を悩ませる指の腫れ ヘバーデン結節とブシャール結節はそのままでもよい?
福島安紀・医療ライター
2024年12月31日
飲食店で働く54歳の冬美さん(仮名)は、2週間くらい前から、朝起きたときに右手の人さし指、中指の爪の下の第1関節が腫れてこわばり、強い痛みを感じるようになった。痛い部分をさすってしばらくマッサージすれば少しは改善するが、朝は痛くて包丁を持ったり字を書いたりできない。「関節リウマチかもしれない」と考え、整形外科を受診したところ、「ヘバーデン結節」と診断された。
第1関節の痛みや腫れはヘバーデン結節
「ヘバーデン結節は、指の第1関節が変形し、骨棘(こつきょく)と呼ばれる突起のようなものができて関節部分がごつごつして、腫れや痛みを生じることがある病気です。男性にも生じますが、40代以降の女性に多いのが特徴です。関節リウマチの場合は指の真ん中にある第2関節にこわばりが生じるので、第1関節に痛みや腫れが生じた場合にはヘバーデン結節である可能性が高いと言えます」
そう解説するのは、手の関節の病気が専門の慶応大学病院整形外科准教授の岩本卓士さんだ。ヘバーデン結節という病名は、この病気を初めて報告した英国人医師、ウィリアム・ヘバーデン博士にちなんでつけられた。手の指の第1関節の背側が赤く腫れ変形して曲がり、関節を挟んで左右に結節と呼ばれるコブができるのが特徴だ。利き手の人さし指に生じることが多いが、親指から小指まで5本の指が変形する人もいる。
「一方、関節リウマチは、免疫の異常により、手足の指、手首、肘、肩、膝などの関節に痛みや腫れが生じる病気です。関節リウマチなのかどうかは、痛みや腫れがある関節の数、血液検査で調べるリウマトイド因子(RF)や抗CCP(環状シトルリン化ペプチド)抗体の有無、炎症反応があるかどうかをみるCRPの数値、関節のレントゲン(X線)検査などの画像検査の結果から総合的に判断します」と岩本さんは話す。
なお、関節リウマチではないけれども、人さし指や中指などの第2関節が腫れて変形し、痛みが生じることがある。ヘバーデン結節とほぼ同じ症状だが、第2関節の場合の病名は、この病態を初めて報告したフランスのチャールズ・ジャック・ブシャール博士の名前にちなんで「ブシャール結節」と呼ばれる。ヘバーデン結節とブシャール結節を併発する人もいる。ヘバーデン結節が報告されたのは19世紀の初頭、ブシャール結節は19世紀末なので、100~200年以上前から、冬美さんと同じような症状に悩んでいた人がいたということだ。
症状のある関節を固定する保存療法が中心
ヘバーデン結節とブシャール結節の治療は、痛みがある場合には非ステロイド抗炎症薬などを服用し、腫れのある関節部分にテーピングを固定する保存療法が中心だ。「スプリント」と呼ばれる装具で固定する場合もある。ヘバーデン結節とブシャール結節用の指テーピングや指サポーターなどは、薬局やドラッグストアで市販されている。
「結節で変形してしまった指をまっすぐにすることはできませんが、ヘバーデン結節やブシャール結節は放っておいても、次第に痛みがなくなることが多いです。ただし、強い痛みが取れなかったり変形がひどくなったりして日常生活に支障が出る場合には、関節固定術などの手術をすることもあります。手術の一種の関節固定術は、骨棘とすり減った軟骨を取り除いた第1関節にスクリューというネジのような器具を入れて固定する方法です。最終手段である手術を受けるかどうかは、手の病気の治療を専門としている手外科専門医とよく相談することが重要です」と岩本さん。
手の病気が専門の整形外科医は、日本手外科学会のホームページの「手外科学会専門医名簿」で調べられる。
エクオールのサプリメントで症状が改善する可能性も
岩本卓士・慶応大准教授
冬美さんの場合、右手の人さし指と中指をテーピングで固定したところ、痛みが軽減し、炊事ができるようになった。寒い日の朝は手のこわばりがひどいので、手袋をして寝るようにしているという。また、手のこわばりは、年齢的に更年期症状の一種ではないかということで、医師に勧められたエクオールのサプリメントを飲み始めた。
エクオールは、大豆に含まれるイソフラボンが腸内細菌によって代謝されて産生される成分で、女性ホルモンのエストロゲンと似たような働きをする。しかし、エクオールが産生できる人とできない人がおり、日本人女性の約2人に1人は大豆や大豆製品をとっても腸内でエクオールを産生できないことが分かっている。エクオールのサプリメントはエストロゲンの急激な減少によって生じる更年期症状の緩和への効果を期待して開発された。更年期の女性が12週間、エクオールサプリメントを服用したところ、顔のほてりやのぼせなどホットフラッシュや、肩や首のこりといった関節症状が改善したとの報告がある。
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また、40~70歳でヘバーデン結節やブシャール結節などの手指の変形性関節症のある日本人女性を対象にした研究では、エクオール産生能力が低い人は、変形性関節症を発症しやすい傾向がみられた。
「閉経前後の更年期女性のヘバーデン結節やブシャール結節は、女性ホルモンの急激な低下によって起こる可能性があります。科学的根拠がまだ十分とは言えませんが、更年期症状を改善するとされるエクオールのサプリメントを試してみてもよいでしょう。日本手外科学会では2023年に、更年期の女性に特徴的な手指の関節の痛みやしびれ、むくみ、腫れ、こわばりなどの症状をまとめて『メノポハンド(更年期手)』と呼ぶことにし、更年期症状の一つと位置づけました。ヘバーデン結節やブシャール結節も更年期の女性の場合は、メノポハンドの一種です。エクオールで改善しないときには、漢方薬を使う人もいるようです」と岩本さんは語る。
ガングリオンは放置しても大丈夫
ヘバーデン結節では、骨棘とは別に、第1関節の近くに「粘液のう腫」と呼ばれる水ぶくれのようなゼリー状のふくらみができることがある。これは放っておいても大丈夫なのだろうか。
ガングリオンは腫瘤から内容物を採取し、確定診断する
「粘液のう腫は、ガングリオンと呼ばれる良性の腫瘤(しゅりゅう)の一種で、放置しても問題ありません。指のつけ根や手首などの関節の周囲に米粒大からピンポン玉くらいの大きさのガングリオンが生じることもありますが、その場合も基本的にはそのままにして大丈夫です。腫瘤に注射針を刺して内容物の一部を採取し、内容物がゼリー状ならガングリオンです」と岩本さんは説明する。
痛みがあったり大きくなって生活に支障が出たりした場合には、注射器で内容物を吸引して小さくしたり、押しつぶしたりして治療する。気になる場合には、手外科専門医のいる医療機関を受診してみよう。
特記のない写真はゲッティ
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ふくしま・あき 1967年生まれ。90年立教大学法学部卒。医療系出版社、サンデー毎日専属記者を経てフリーランスに。医療・介護問題を中心に取材・執筆活動を行う。社会福祉士。著書に「がん、脳卒中、心臓病 三大病死亡 衝撃の地域格差」(中央公論新社、共著)、「病院がまるごとやさしくわかる本」(秀和システム)など。興味のあるテーマは、がん医療、当事者活動、医療費、認知症、心臓病、脳疾患。